007 Quantum of Solace 慰めの報酬 |
前作「カジノ・ロワイヤル」でシリーズ初の"金髪・碧眼のボンド"という新しいジェームス・ボンドを作り上げたダニエル・クレイグ主演の第2作。アメリカ公開前にイギリスで新記録続出ということで鳴物入りで米国公開が始まった!
愛する人を失ったジェームズ・ボンドは、彼女を操っていた人物を探すうちに、MI6の裏切り者とハイチの銀行口座の関連が判明。さらに別の組織の存在を知ることになる。その組織のグリーンという男は南米の某国の天然資源を手にして、世界を支配しようとしていた。
復讐を誓うボンドに「ミッション遂行は絶対。どんな場合も決して感情に流されてはならない!」と言うM。任務と復讐の間で揺れる彼だったが、ひょんなことからグリーンの愛人で、同じように復讐心を秘めた女性カミーユと出会う―――。
前作にも増して「ボーン」シリーズに近づいています。ダイエル・クレイグの代わりにマット・デイモンがボンド役を演じていたら、この作品は「007」ではなく「ボーン」シリーズ第4弾です。
というのもカメラの撮り方が、ボーンのそれにとても似ているし、相手と格闘する際にナイフを使って戦うシーンも「ボーン・アルティメイタム」で見たまんま。他にもありとあらゆるものを盗みまくる点もボーンを思い出させる。ある時はホテルのロビーに預けらたケース、ある時は他人の車、そしてまたある時は人が乗って走っているバイクを・・・、もうこれは盗むのレベルではないが・・・(苦笑)。
前作同様、スパイ道具も一切登場しない。しいて言えば、どこかの本部で使われていたデスクや壁の上で操作される犯罪者データの描写はそれっぽいが、ボンドの道具ではなく、組織のもの。
さらに今回は前回はかろうじてあった「I'm Bond. James Bond!」の台詞すらありません。こうなるともういよいよ、007シリーズの新作とは呼べないのではないだろうか?
ただ007シリーズの新作として見ないのであれば、楽しめる作品であることは間違いないです。オープニングのカー・チェイス、建築現場での肉弾チェイス、スピード・ボートによる水上チェイス、そして飛行機のチェイスと観客を楽しませてくれます。
ただし、前作同様、後半に行くに連れて、だんだんと盛り上がりのレベルが下がっていきます。
個人的に一番楽しかったのは建築現場だろうか?建築現場のラスト、ロープに足が絡まりながらも、敵に向けて銃を放ったシーンは劇場でも拍手喝さいだった。他にカー・チェイスも拍手があり、前作に比べて派手なシーンが多い上に上映時間も1時間45分と前作に比べて大幅に短くなっていることもあり、見終わった後の満足度はそこそこ高い。
かといってドラマの比重が軽いか?と言えば、愛する人を失い、復讐に燃えるボンドの心の葛藤が細かく描写されていて、その点でもますますボーンに近づいてきたと言える。唯一違う点といえば、ボーンは極力、人を殺さないが、ボンドははっきり言って、何も考えずに人を殺しているようにしか見えない。その場にいれば、一般人ですら、殺してしまうのでは?というすさまじい勢いで人を殺していく。
今回、ボンドガールは二人登場する。二人とも美人だが、今までのボンドガールを"セクシー"という言葉で表現するなら、何と言うか"セクシー"さに欠ける。しかしそれを補う何かを二人とも持っている。特にメインのボンドガールを演じたオルガ・キュリレンコは素晴らしい。目力を持ってますね、この人。お約束のボンドとの絡みはないし、肌を露出するようなシーンもない。それでもすごく魅かれる。スクリーン上で、すごく映えるんですね、この人。これぞ、TV女優ではない、映画女優だと思います。
さて、前作の公開前には、世界中からブーイングが起こり、1作だけの出演で終わってしまうのか?とすら噂されていたダニエル・クレイグでしたが、今作も引き続き、ボンドを演じ、アメリカのオープニングの週末興行成績では007シリーズの歴代最高記録すら打ち立てました。この点においては、新しいジェームズ・ボンド像を確立したと言っても過言ではないでしょう。(ただし、上述したようにジェイソン・ボーンの真似事であることは疑いの余地なしですが・・・)