007 カジノ・ロワイヤル |
シリーズ初の"金髪・碧眼のボンド"、そしていかにしてボンドが誕生したのかを描いた"ボンドの原点"ということでも注目を集めている作品。
イギリス諜報機関において、"殺しのライセンス"を意味する「00」ナンバーを手に入れたジェームス・ボンド。最初の任務は国家予算1500万ドルを賭けたカジノで勝つこと。相手は世界中のテロリストに資金を提供している武器密売人のルシフル。一度は破産したものの、CIA局員や、フランスの女工作員ヴェスパらの協力を得て、最終的に勝利を収めるが、その直後にヴェスパがルシフルに拉致され、さらには救出に向かったボンドも捕獲されてしまう―――。
"00"を手にするための試練として、逃げる相手を捕まえる課題を与えられたボンドは、ところかまわず逃げまくる相手を追いかけるというチェイス・シーンで映画は幕を開ける。このチェイス・シーンがなかなかすごい。
工事現場の鉄骨を階段やはしごなど一切使わずに、体だけで上っていったり、壁から壁へと滑らかに飛び移ったり、地上数10mの足場の悪い場所での格闘を行ったり、さながらジャッキー映画を見ている感覚だ。
しかも前日に、ジャッキー・チェンの「サンダーアーム/龍兄虎弟」を見ていたこともあり、自分の中では、オープニング・シーンだけでかなりボルテージが上がりまくっていた。
もっと言えば、「ボーン」シリーズに近い。いや、近いというか、そのままだ。特にオープニングのチェース・シーンなんて、本当にボーンです。
それに続く、オープニング・タイトルは「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」のそれを思わせるアニメーション仕立て。人をシルエットで描き、そこにカジノを象徴するダイヤ、ハート、スペード、クローバーの4つのシルエットで銃を象ったり、とセンスを感じさせる仕上がりになっている。
だが、面白いのはここまでだ。えっ?と思う人がいるかもしれないが、この後は尻下がりに面白みが減っていくだけなのだ。
カジノでのギャンブルはポーカーのルールを知らない人にとっては、何がなんだかわからないし、ポーカーを知っている人でも、日本人の知っている手持ちカード5枚で絵札や数字をそろえるそれとは、やり方が異なるため、最初は戸惑うだろう。
そしてギャンブルをやっているわけだから、派手なアクションもないし、ギャンブルの醍醐味とも言うべき、駆け引き的な要素も今までに見てきたカジノ映画と比べて新鮮さはまったくない。
そしてギャンブルが終わった後に拉致された女性を救出に行くシーンもはっきり言って、ボンドは弱い。ジェームス・ボンドなのに弱いのだ。挙句の果てに自分も捕まってしまい、最後は他人に助けられてしまう始末。いくら若き日のボンド、そしてボンドの原点だからと言っても、弱すぎるのだ。
そしてこの作品の中で唯一ボンド・カーの見せ場だと思われたシーンもあっけなく終わってしまう。それもボンド・カーである必要性"0"の終わり方だ。
さらにスパイ道具らしい、道具もこれといって登場しない。唯一登場する道具もスパイ道具というより、医療道具だし・・・。
何とか2人とも助かった後は、シリーズの見せ場の1つでもあるボンド・ガールとのラブ・シーンなのだが、なんともテンポが悪い。ダラダラと2人の愛を語り合うシーンが続き、次の事件が起こるか、このまま終わるか、どっちかにしろ!とさえ思えるほど、まったりとした描写が続く。しかもおなじみのサービス・ショットさえもない。
一緒に見た4人が4人とも、このシーンは長い!と声をそろえた。
そしてクライマックスとも言うべきベネチアでの建物崩壊シーンもいまいち盛り上がらない。一応、それなりにスリル感はあるにはあるのだが、オープニングのチェイスと比べるとかなり見劣りしてしまうし、建物の崩壊そのものも地味でこじんまりした感がぬぐえない。
原作シリーズの第1作目ということで、ボンドが意外に女性に冷たかったり、キャラクターとしてまだ固まっていない部分もあるので仕方ないと言えば仕方ないのかもしれないが、2時間半もダラダラとした映画を見せられるよりは1時間50分くらいでもっとシャキッとした映画にすれば、もっと楽しめたかもしれない。
そしてテンポの順番というか、盛り上がりの順番も間違っている。上述したように、最初が一番面白く、順を追うごとに面白みが減っていってしまい、何の逆転もないまま、そのまま終了と言うアクション映画としては一番やってはいけないことをやってしまっている。
6代目ボンドとなったダニエル・クレイグ自体は、今までまったく知らなかったが、個人的には意外と良い俳優だと思った。ジェームス・ボンドに適役かどうかは別として・・・。