Mr.インクレディブル |
前作「ファインディング・ニモ」の時に見た予告編では何だこの映画?と思っていたが、全米で二週連続一位を獲得し、周りの評判も上々だったので見に行った作品。
かつてスーパー・ヒーロー達は数々のピンチを救ってきたが、その活躍に伴うスーパー・パワーによってが一般市民の被害がかえって拡大しているとして、訴えられ敗訴。スーパー・ヒーロー達も一般市民と同じように働き、生活することになった。
かつてスーパー・ヒーローの中でも第一線で活躍していたインクレディブルは現在はネクタイをまとい、普通に働いていた。彼の家族は全員がスーパー・パワーの持ち主で、元スーパー・ヒロインだった奥さんは体の伸縮を自由自在に操れる。長男ダッシュはハイパー・ダッシュ、長女ヴァイオレットは透明人間になれ、かつバリアを張ることができる。まだ赤ん坊の末っ子ジャックはまだ能力がわからない。長男のダッシュは自分の能力を使うことをを母親に禁止させれているのが不満で、逆に長女のヴァイオレットは普通の女の子として恋愛をしたいと思っている。
ある日インクレディブルの元に謎の手紙が舞い込み、彼は現役復帰を果たす。が、お腹についた脂肪は明らかだった―――。
ディズニー映画というよりも、むしろPIXAR映画という地位を完全に確立してしまった感のあるPIXAR(ディズニーはあくまでも配給のみといった感じ・・・)だが、今回は今までにない試みをしている。それは人間をメインにしていること。今までのPIXAR映画は魚やモンスターやオモチャ、昆虫といった非人間的なキャラクターをメインにしていたが、今回はCGでの描写が難しい人間をメインに据えた(ちなみに次回作は車がメイン・キャラクター・・・)。とはいうものの、リアリティーにはこだわらないのがPIXAR。というわけで、今回もあくまでもアニメというジャンルの中のCGということで、アニメ的なキャラクターに人間的なリアリティを追加した感じのキャラクターになっている。例えば、スーパーヒーロー達の筋肉などはピッタリとした服の上から見る分には非常にリアリティあふれるキャラクターに仕上がっている。
キャラクターといえば、スーパー・ヒーローの家族が全員スーパー・ヒーローになれる素質を持っているという設定も面白い。主人公の能力は人並みはずれたパワーを持っているというありきたりのスーパー・ヒーロー像なのだが、奥さんの能力"ゴム人間"は普通に考えれば、スーパー・ヒーローとしてはピンと来ないが、この映画を見ればそれもピンと来る(アニメ「ワン・ピース」世代ならピンと来るのだろうが・・・)。自分の体を風船のように膨らまして、墜落する飛行機から無事に落下したり、長男と組んで簡易ジェット・ボートを作ったり(体を変形してボートになり、長男の脚力をエンジン代わりにした)、あるいは子供同士のケンカを仲裁するのに両手を伸ばしたり・・・。
個人的には、主人公の能力よりも奥さんや子供達の能力のほうが、欲しいと思わずにはいられない。要するに主人公以外のキャラクター設定が非常に魅力的なのだ。それにも関わらず、ありきたりの能力しか持たない主人公だが、やはり作品を通して主人公として映える。このあたりの設定、描写が非常にうまい作品であり、おそらく誰が見ても飽きることのない作品と言えるだろう。
ストーリー的には、前半はスーパー・ヒーローもただの人間だということを描写すると共に、困っている人を助けずにはいられないという性善説にも似た内なる性格と、家族のためにそれを我慢して外見的には、一般人を演じる主人公の心の葛藤を軸に進んでいく。アニメにおけるヒーローものというのは世界共通のテーマを持っているらしい。この作品もその例にもれず、後半は「正義と悪の非常にわかりやすい対立」を描いている。前半の描写でヒーローに戻りたいけど、戻れない主人公の葛藤を描いていたことで、後半のヒーローに戻った後の主人公のイキイキ感がより鮮明になる(お腹を気にしてダイエット兼トレーニングをしているシーンはその典型例と言える)。
そしてもう一つ世界共通といえるのが、悪のキャラクターがちょっとしたお間抜けな設定になっているという点。この作品では、昔インクレディブルに心酔していたが、弟子入りを志願したが、冷たくあしらわれたという理由で復讐心に燃える。自分自身が作った機械を自分自身が倒して、スーパー・ヒーローにるという目論見と共に・・・。そしてそれをほぼ達成するのだが、最後の最後の決め手となるはずの最終兵器自身が彼の地位を滅ぼすことになってしまう(ここはクライマックスなので、詳しく書けず抽象的な記述になってしまいました・・・)。そのミスがあまりにもお粗末で、アニメにおける悪のキャラクターはやはりお間抜けなんだなぁと思わされてしまった。
昔科学戦隊ものなどのヒーローものを見て、自分もヒーローになれたらなぁ・・・と憧れたことがある男性諸君なら見終わった後に、心がスカッとすること間違いない作品です。そして、歴代PIXAR作品の中では「モンスターズ・インク」と並び、個人的にはかなり気に入った作品です。そしてPIXAR作品は今度も注目していきたいと決定的にさせた作品でもあります。