トイ・ストーリー3
Toy Story 3

採点:★★★★★★★★☆☆
2010年8月8日(映画館)
主演:トム・ハンクス、ティム・アレン
監督:リー・アンクリッチ

傑作率100%のピクサーの最新作にて、最高傑作と呼び声高いシリーズ完結編ということで見てきました。

第1作目から10年後。アンディは17歳になり大学進学を控え、おもちゃと遊ぶこともなくなっていた。彼は大学進学に向けた引越しに際して、お気に入りだったカウボーイ人形のウッディだけを持っていき、バズを含む他のおもちゃたちは屋根裏にしまうことにするのだが、手違いでゴミに出されてしまう。危機一髪のところで袋から逃げ出したおもちゃたちは、アンディに捨てられたと思い込み、保育所へ寄付される道を選ぶ。
保育所「サニーサイド」のおもちゃたちに歓迎を受けたバズたちは留まることを決意し、アンディの元に帰ろうと説得しようとしたウッディは諦めて保育所から去ってゆく。
しかしバズたちは、おもちゃを乱暴に扱う子供たちが集う部屋に入れられてしまう。そして保育所が、強い人間不信を抱えるぬいぐるみのロッツォが牛耳り、おもちゃの牢獄と化していることを知ったウッディは、仲間を救うために再び保育所へと乗り込んでいく―――。

さすが、ピクサー!である。
誰もが子供の頃に遊んだおもちゃ。しかし成長するにつれて、いつしか遊ぶ対象が変わっていき、遂には記憶の片隅に追いやられてしまう。いや、記憶の片隅から消されてしまうことすらある。
そんな誰もが持っている懐かしくて、優しい記憶の琴線に触れる作品。一言でいうなら、そんな感じだ。見終わった後、ほぼ100%の"大人"が自分が子供の時に遊んだおもちゃって、いつ、どこのタイミングでどうなったんだっけ?と考えるだろう。
自分の場合は、ガンプラとかミニ四駆とか、ビックリマン・シールとか・・・。本当にいつ、自分の家からなくなったんだろう?

さてさて映画に話を戻そう。
まずオープニングは西部劇から始まり、一気におもちゃの作品の世界に引き込まれる。そして主人公達の危機を、あくまでもこれは人間世界をおもちゃの目線で描いた話だという、もう1つの世界へと引きずり戻すという二重のトラップによって、観客全てを逃すことなく世界観に没頭させる。
この構成力、さすがピクサー、他に並ぶものがいないほど練りに練られている。

そして作品の舞台が、人間からすれば普通の生活空間での出来事なのだが、おもちゃ目線で見ると状況が一変するのも面白い。
人間にとってはただの保育所の棚が、おもちゃにとっては牢獄となったり、自動販売機が賭け事の場になったり、ゴミ捨て場がこの世の終わりになったり・・・。そういった人間から見れば何気ない日常の一部をおもちゃ目線で描くことにより、物語にスケール間を与えると同時に親近感も与えている。このあたりもさすがピクサーである。

上述したような舞台設定だけではなく、一人一人のキャラクター設定も非常に上手いという点も忘れられない。クマや赤ちゃんの人形という普通なら可愛く描かれるようなキャラが悪者キャラという設定がいかにもピクサーらしく上手い。さすが、「WALL. E/ウォーリー」で、通常嫌われ者として描かれるゴキブリを主人公の唯一の友人として可愛く描いただけのことはある。
その一方でパート2で登場したバービー人形の恋人役となるケンを登場させ、笑いを取るだけでなく、スペイン語モードのバズで更なる笑いを取りに行くというのも上手い。
そして保育所からの逃走劇で見せたおもちゃ同士の一体感、ごみ焼却所での絶対絶命のピンチにおもちゃ同士で手をつなぎ、覚悟を見せる一体感。おもちゃのはずなのに、人間と変わらない仲間を思う気持ちに心打たれる。

そしてこの作品の核とも言えるおもちゃの行く末。「いらないものは捨てなさい」という母親の意見を受けて、アンディの出すべき結論。おもちゃを大学に一緒に持っていくのか、保育所に預けるのか、ゴミとして捨ててしまうのか?
おもちゃの視点としては、遊んでもらう機会がなくてもアンディについていくのか?特定の主人はいなくても毎日遊び続けてもらうのか?
作品を通して最初から最後まで描かれていたこの葛藤。人間としての視点、おもちゃとしての視点、その両方から描くことで両者の思いのすれ違いが心の深い部分をつつく。
そして最終的にアンディが下した結論、ウッディを手放すシーン。
一度躊躇するアンディ。この一瞬の躊躇がもの凄く共感できる。長年遊んでいなかったおもちゃでも、自分が大人になったとしても、昔ずっと一緒に遊んだ想い出の詰まったおもちゃ。それがおもちゃでなくても、誰もが同じような経験をしているはずだ。長年使っていなかった何かを捨てる時に、懐かしさのあまり捨てるのを躊躇してしまう経験。
しかしアンディは次の瞬間、きちんと決断を下し、大人への階段を一歩上がる。
そんなアンディの去っていく姿を見ながら、ウッディが言う最後の台詞。
"So long, Partner."(またな、相棒)
Bye ByeやGood byeではなく、So longというのが良い。どれも「さよなら」という意味だが、また会おう、という意味合いも含むSo longというのがこの最後の台詞としてはピッタリだ。

しかし、このピクサーというスタジオはいつになったら外れの作品を送り出すのだろうか?違った意味で次回作が気になってしまう。

一口コメント:
誰もが持っている懐かしくて、優しい記憶の琴線に触れる作品です。

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