ターミナル
採点:★★★★★★☆☆☆☆
2005年1月15日(映画館)
主演:トム・ハンクス、キャサリン・ゼタ・ジョーンズ
監督:スティーブン・スピルバーグ

スティーブン・スピルバーグとトム・ハンクスという映画界を代表する監督と俳優による、「プライベート・ライアン」、「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」に続く三度目のコンビ作品。

東欧の国クラコージアからニューヨークに来たビクターは、渡航中に祖国でクーデターが起こり、パスポートが無効になってしまう。それ故にアメリカに入国もできず、国情が安定するまでは帰国することもできない。こうしてビクターは、空港で生活するようになる。空港での生活を始めたが、ビクターのことを快く思わない人間もいた。次期空港の責任者の椅子を目指す男ディクソン。問題が起きては自分の地位が危うくなるので、何とかビクターをクラコージアに追い返そうとする。そんな嫌がらせをよそにお金を稼ぐ方法を見つけたり、他人の恋のキューピットになったり、スッチーに恋をしたり、いろいろな経験を積んでいく。そしてビクターがニューヨークに来た目的はピーナツ・バターの缶の中にある約束を果たすためだということがわかる・・・。

相変わらずの演技力を見せるトム・ハンクス。最初、空港の入国審査のゲートから別室に呼ばれるまでの一連の流れは、本当にクラコージアという国の人間かと思わされてしまう。そして祖国消滅のニュースを見て涙するシーン、25セントを稼ぐためにカートを集めるシーン、その25セントコインで買ったバーガー・キングのハンバーガーをほうばるシーン、ヒューゴ・ボスのディスプレイに映る自分の顔をスーツに合わせるシーン、などトム・ハンクスの演技は冴えまくっている。なんというのだろうか?素朴な演技力とでも言うべき演技がこの作品のいたるところに散りばめられている。
素朴と言えば、この映画自体が素朴である。これといった大きな出来事はなく(ビクターにとっては大きなできごとだが・・・)、細かいストーリがいくつも詰まったオムニバス的な映画になっている。中でも、インド人のグプタは面白い。真剣な顔でビクターのことをCIAだと力説してる場面、ディナーのときに、ジャグリングや皿回しをしている場面、そしてモップで飛行機を止めてしまう場面など、かなり笑える、かつ、"ほんわり"する。
ほんわりするといえば、病気の父親のための薬を持ったロシア人を助けたことから、空港で働く人々に受け入れられるシーンや、その空港の人々がビクターを助けるシーン(アメリアとのディナー・シーンや最後空港からニューヨーク市内へと向かうシーン)などもほんわりする。"感動"というよりは、あくまでも"ほんわり"なのだ。

約束のために来たニューヨーク。その理由が明かされるシーンは、ちょっと物足りない。最後の1人のジャズマンがサインを送らなかった理由が明かされることもなく、あっさり終わってしまい、拍子抜けしてしまった。

それ以外に特筆すべきことといえば、どこの空港で撮影したのだろうと思っていたら、すべてセットだったということ。最初のほうで、トム・ハンクスが一人呆然と立ち尽くし、空港内を横断するかのように、カメラが引いていくシーンなどはセットだからこそ撮れた絵だろう。
それとキャサリン・ゼタ・ジョーンズ。役どころとしては「オーシャンズ12」で演じた知的で上品な女性に似ている。ナポレオンの本を読んでいるくだりがそれを象徴している。途中、トム・ハンクスが彼女のことを好きになってしまうが、その理由付けが薄い上に、最後二人が結ばれないのなら、いっそのこと、彼女のシーン(恋愛対象としての)はなくてもよかったのではないか?とすら思えてしまう。特に噴水のシーン。せっかく作ったのに、最後まで噴水が流れるシーンがないまま終わってしまうのは、自分としてはちょっと悲しい。そこがまた、この作品の作風ともいうべき、素朴感を漂わせてはいるのだが・・・。

全体的には、途中までの展開は素晴らしいのだが、最後の終わり方というか、物語の一番の核である約束の中身が、それで何?という内容で、結末までもが素朴で"ほんわり"だったため、そこがもう少し"感動"的なものであれば、作品全体としての質も上がっていただろう。

一口コメント:
"感動"作というよりは"ほんわり"作です。

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