Paranormal Activity パラノーマル・アクティビティ |
100万円強の予算で撮られた映画が100億円という興行収入を記録したということもあり、全米で社会現象を巻き起こした作品。さらにスピルバーグのお墨つきということもあり鑑賞した作品。
平凡な一軒家で幸せに暮らすカップル、ミカとケイティ。しかしある日、自分たちの家が何らかの悪霊にとりつかれているのではないかと疑うようになった2人は、自分達の寝ている間に何が起きているのかを確かめるためにビデオカメラでの撮影を始める。翌日ビデオを見た2人はそのビデオに映っていた映像に驚き、心霊現象の専門家を呼ぶが・・・。
100万円で作られたという前提があれば、それなりによくできているのだが、その前提を外した場合、ごく普通のホラー映画である、というのが正直な感想である。
もっと言えば、アメリカ人やヨーロッパ人にとってはおそらく新鮮で、とても刺激的なホラー映画となるのだろうが、日本人にとっては別になんてことない普通の怖い話である。夏の夜にみんなで集まって話す怪談話の中に、もっと怖い話がいくらでも転がっているはずだ。
要するにジェイソンだとかフレディといった目に見える西洋的恐怖映画には面識のある欧米人にとっては、呪いだとかお化けといった目に見えないものが襲ってくる東洋的恐怖映画が非常に新鮮に映ったため、今回の北米における社会現象につながったのではないか?というのが個人的見解だ。(無論過去にも類似作品はあったが、頻度的には少ない)
さらに100万円という超低予算映画であるという事実に、スピルバーグをして、リメイクをしてもこれ以上の恐怖を演出することができないと言わしめた・・・という要素も加わり、ここまでの爆発的ヒットになったのだろう。
上述したように、この作品は超低予算ということを、観客が鑑賞する前に頭に入れた状態で見る、ということが大前提である。
というのも、その前提があればこそ、手ぶれや画質の粗さも許されるわけで、さらに画質が粗いというのが、ホラー映画においては、大いにプラスになるから。これが普通のドラマだとしたら、おそらく冒頭10分で嫌になる。
そして作品が始まってから30分は本当に退屈である。なぜなら何も起こらないから。
普通にカップルが撮影したホームビデオを見ているだけで、これといった事件は何もない。そうやって退屈だなと思い始めたところでようやく事件が起こる。それが誰もいないはずなのにドアが少しだけ動くという現象。非常に地味だ。しかしそれがこの作品の上手いところでもある。
30分近く退屈な映像を見させられたおかげで、ほんのちょっとしたことがすごく大きなものに見えるのだ。
そうやって、ドアが少しだけ動くという地味な演出が観客にとってすごく大きな恐怖をもたらしてくれる。その後も何か足音が聞こえたり、シーツがめくれたりといった地味ではあるが少しずつ恐怖を増していく現象が起こっていく。ここでもまた超低予算という前提が活かされていく。
もしこの作品が大作映画であれば、絶対にやらない、絶対に起こらない現象を起こしても許されるのだから、"超低予算"万歳である。
もう1つ加えるなら予算がないから撮影場所を一軒家のみにしたというのも、恐怖を狭い空間にとどめるという意味で、プラスに働いている。やはりこうした目に見えない恐怖は狭い空間でないと面白くない。もしこれがニューヨーク市全体に起きている現象だとすると、ゾンビが登場するしかない。あるいはホラー映画ではなく、パニック映画になってしまう。
目に見えないものが襲ってくるという恐怖に慣れていない欧米人にとっては新鮮であるということ、そして超低予算という大前提があってこその大ヒットであり、日本人にとってはごく普通のホラー映画であり、アメリカほどの大ヒットにはならないと思います。
同じ低予算のドキュメンタリーチックなホラー映画というくくりであれば、和製ホラーの「ノロイ」の方が100倍怖いです。