アビエーター
採点:★★★★★★☆☆☆☆
2004年12月9日(試写会)
主演:レオナルド・ディカプリオ
監督:マーティン・スコセッシ

レオナルド・ディカプリオとマーティン・スコッセシという「ギャング・オブ・ニューヨーク」のコンビが放つ実話を元にした作品で、予告編を見たときに面白そうだなと思っていたら、LACCの先生が試写会のチケットをくれて、それで見に行った作品。

パイロットのハワード・ヒューズは、世界一周を成し遂げ、パイロットとしても、さらに青年実業家としても順調に道を進んでいた。ケートという女性と出会い、映画制作にも事業を拡大し、さらに航空会社の経営へと手を広げていった。
女性関係は派手で、ケートという女性と親密になりながらも、ハリウッド女優達とのツー・ショットを撮影され、それがきっかけで二人は分かれてしまう。その後、15歳の女の子と付き合いながらも、実業家としてTWAという航空会社の経営を一手に握っていった。
しかし、政府の資金で作るはずだった航空機を完成させることができず、さらにその情報を軍関係者にも一切公開しないということで、ことは裁判にまで発展する―――。

本編の前にディカプリオ制作の地球温暖化に関するショート・ムービーがあり、その直後に本人が登場し、短いスピーチをした後で、本編の上映が開始された。
事実に基づいたストーリーということで学校の授業で習った、史上初のトーキー映画「ジャズ・シンガー」が使われていたり、ハワード・ヒューズ自身も授業で習っていたり、LACCで学んだ素材がいたるところに散りばめられていて、そういう意味では非常に興味をそそられる作品だった。中でも映画の中でも登場するチャイニーズ・シアターでの試写会であったため、映画にシアターが登場するシーンでは、ディカプリオがシアター内(売店の前など・・・)を歩いていたりして、自分が見ている映画が、自分の見ている空間で繰り広げられるという不思議な感覚に捕われた。
というわけで、ディカプリオ本人の登場と、不思議な感覚に捕らわれて、とても興奮しながらの鑑賞となった。

今作のディカプリオの演技は非常に良かった。というのもキャラクター設定が、"超"の字が付くほどの潔癖症で、かつ聴覚障害者という見た目にわかりやすい設定であったため。人と握手をするのも嫌がり、トイレでは新品の石鹸で手を荒い、何か物を触るときにはティッシュを介して触るという徹底振り。そんな設定でありながら、物語中盤で部屋に閉じこもるシーンでは牛乳瓶に放尿したり、髭面で裸でアリがはびこる部屋中を歩き回るシーンとなり、潔癖症という設定とは真逆の演技をすることになるが、その演技に違和感はなく、むしろ真に迫っていて、スムーズに受け止めることができた。
また、彼が一人で悩み、苦しむ姿にも共感を覚え、人物描写においては、非常にうまい作品だなと感心させられた。

が、それ以外に関しては「これは!」と思わされる要素が特になかった。映像的に興奮したシーンは片手で余るほど(ディカプリオがパイロットとして飛行機を操縦する3シーンのみ)しかなく、ストーリー的にも"中の上"のレベルを平坦に繰り返すだけで(とはいうものの、裁判シーンは例外的に面白かった)、自分としてはもっと強弱をつけて表現して欲しかった。それと最後の終わり方も、いまいち心を打たなかった。最後の最後ではなく、その直前に劇場内でも拍手が起こったシーンがあり、自分が監督だったら、ここで終わるというシーンだったのだが、そこで終わらずに引っ張った割には、「次はジェット機の開発だ!」と言った直後に、子供の頃に見ていた夢が叶い、「No way of the future:もう未来はない」という台詞で終わる、というスコセッシらしいといえば、らしいのだが、自分としてはいまいちの終わり方だった。

MIRAMAXというアカデミー賞常連の会社が12月に公開ということで、当然アカデミー賞狙いの作品なのだが、主演男優賞はあるとしても、正直なところ、作品賞としてはちょっともの足りない作品でした。

一口コメント:
生ディカプリオのオーラと作品中のディカプリオの演技力に驚愕した作品でした。

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