モーターサイクル・ダイアリーズ
採点:★★★★★★★★★☆
2004年10月15日(映画館)
主演:ガエル・ガルシア・ベルナル、ロドリゴ・デ・ラ・セルナ
監督:ウォルター・サレス

LACCのクラスで毎週、その前週に見た映画の感想を述べる時間があり、その中でべた褒めされていて(全米でも170館ほどでしか公開されていないにも関わらず、ランキングTOP10に入っている、ちなみに1位の作品は4000館)、ストーリーが自分が行きたくて仕方のないペルーを含む、南米縦断の旅ということで見に行った作品。

喘息持ちのエルネストは23歳の医学生。学業がほぼ修了になった彼は、ブエノスアイレスの自宅からバイク旅行に出発する。旅の相棒は一家と親しくしている友人、生化学者のアルベルト。アルベルトの"Mighty One"というオンボロ・バイクに乗って、ラテン・アメリカ大陸縦断の旅に出かけた。二人の計画はアンデス山脈を抜け、チリの海岸線に沿って進み、砂漠を通り、ペルーのアマゾン上流へ出るというものだった。そしてアルベルトの30歳の誕生日にはベネズエラに着く予定だった。
エルネストのガールフレンドを訪ねて、別れを告げた後、二人は再び旅を開始。"Mighty One"が何度も彼らを振り落としたり、故障を起こしたりするせいで、予定は大幅に遅れていた。国境を超えてチリに入ると、二人は通りすがりの人々を口説いて宿と食事を確保するため、様々な方法を試みるようになる。ある町では人妻を口説こうとして、逃げ出すことになったり・・・。さらに悪いことに"Mighty One"が修復不可能な損傷を受けてしまう。トラックの荷台に乗って、ある町に入った二人は修理を依頼する。そこに病気の老女を見てほしいと一人の男がやってくる。エルネストは自分の薬を老女に分けてやる。喘息持ちの彼にとっては大事な薬だが、極めて限られた財産と収入しかない者にとってはそれ以上に貴重な品なのだ。彼が戻ると、"Mighty One"の修理は不可能だということがわかった。アルベルトはがっくりするが、エルネストは、旅を続けよう、そして君の30歳の大事な誕生日を祝おうと、彼を説得する。
二人はヒッチハイクをした後、徒歩で砂漠を抜ける。疲れきった体と空腹を抱えた二人は、土地を追われ、鉱山へ向かう貧しい夫婦と出会う。その夫婦との会話を通して、今まで見てきた世界とは違う世界があることを、二人は感じ始めていく。
ペルーでマチュピチュを見た後、リマである博士を訪ねる。彼はアマゾン川奥地にある隔離医療施設、サン・パブロで二人が働けるよう手配する。サン・パブロに着くと、二人の心の奥底に起きていた物の見方の変化が表立って現れてくる。修道女たちは健康なスタッフと病人たちとを隔離するという方針でこの施設を運営していたが、二人はそれを無視し、自由に患者たちと交わる方を選ぶ。エルネストはサン・パブロ滞在中に24歳になるが、その日彼は、貧しい人々や病人たちとともに自分の誕生日を祝うためアマゾン川を泳いで渡ってやろうと決心する。翌日、彼とアルベルトは住人達からの贈り物であるいかだに乗って出発する。そして二人は目的地であったベネズエラに到着する―――。

この映画を他の映画を使って、例えるなら「ニュー・シネマ・パラダイス」や「ショーシャンクの空に」といった誰もが認める名作です。上記二作品と同じく、この映画を見て、つまらなかったという人はほとんどいないと思う。
もしくは日本のTV番組で一時期流行った「深夜特急」の南米版といっても過言ではない。乗り物が電車からバイクに変わってはいるものの、実話を元にした話である点は同じであり、旅先で出会う人々との交流を通して主人公が成長していく姿を描いている点も同じである。また、マチュピチュをはじめ壮大なスケールで描かれる風景たちも素晴らしい。壮大なスケールの自然を描いたかと思えば、山中に広がる田園風景を映したり、夜の海に浮かぶ豪華客船を映したり、旅行好きの自分としてはロケーションに関してはこれ以上ないくらいの満足感を覚えた。

人々との交流という観点からいえば、まず最初に彼女のもとへ行き、離れがたい気持ちになり、旅程が大幅に遅れてしまう点から始まることで、一人の人間に対する愛情の微妙なニュアンスを描いている。それが物語が進むにつれて、医学生としての使命感か、生まれ持った本質か、土地を追われた老夫婦に貴重な資産をあげてしまったり、隔離施設で出会った人々と、それまでの慣習・しきたりを打ち破る方法で接したりすることで、一人の人間に注ぐ愛情が大勢の人に対する愛情へと変わっていく(この変化が最後の最後のサプライズに大きくつながっている・・・)。
だからといって、「ものすごくできた人間です」という描き方に終わっていない点が、この映画の素晴らしい点だ。例えば、旅の相棒に「お前は嘘をつけない」といわれた主人公が、嘘をついて現地の新聞に載ってしまったり、ダンスを踊れないという運動オンチっぷりを見せたり、人妻を口説こうとして、失敗したり・・・。そういった人間味あふれる人物描写の中で、最も素晴らしいと思ったシーンが、自分の誕生日を祝ってほしいと夜に川を泳いでわたり、隔離施設の人たちに会いに行くシーン。普通に考えれば、そんなことをするようなガキっぽい年齢でもないし、喘息という持病もあり、明日になれば船で渡れるのにも関わらず、どうしてもその日のうちに祝ってほしいということで、後先を考えずに行動に移してしまう"若さ"に心を打たれた。

ひとつだけ、引っかかったのが、映画の途中で彼女から主人公に送られてきた手紙。その手紙を見て、主人公がしばらくの間ふさぎこむことになるのだが、その手紙の内容(おそらく他の誰かと結婚してしまったというような内容だと思われる・・・)がなんだったのか?というのは結局最後まで、明かされることはなく終わってしまう。それはそれでありの演出だとは思うのだが、個人的には手紙の内容を描いてほしかった。

一口コメント:
「誰もが認める名作がまた一つ、誕生した」そういった紹介が似合う作品です。

戻る