友へ チング
採点:★★★★★★☆☆☆☆
2002年5月1日(映画館)
主演:ユ・オソン、チャン・ドンゴン、ソ・テファ
監督:クァク・キョンテク

韓国で興行収入記録を次々と塗り替えた映画がこの作品。韓国ではR-18指定だったので19歳以上の韓国人で計算すると韓国人の4人に1人が見たことになるらしい。そんな記録破りの作品をストーリーを順に追いながら感想を述べていきたい。

やくざの父を持ち、腕っ節が強く、情に厚く、リーダー的存在のジュンソク、葬儀屋のドンス、真面目なサンテク、お調子者のジュンホの4人の小学生はいつも一緒に遊んでいた。盗みをしたり、エロ・ビデオを見たり、タイヤを浮き輪代わりに海で遊んだり・・・。この辺の描写は暖かい気持ちで見ていられる。男だったら誰もが、心に懐かしさを感じ、自分の子供時代と重ねるのではないだろうか。
別々の中学に進んだが高校で再会したが、ジュンスクとドンスは不良の道に足を踏み入れていて、サンテクは優等生になっていた。ジュンスクとドンスはサンテクが他校の生徒にからまれているのを助けるが、それがきっかけで2人は退学処分になる。自分のせいで退学になってしまったことに悩むサンテクは家のお金を持ち出して、一緒にソウルに行こうとジュンスクに言う。やくざの父親のせいで家庭の愛情に飢えていたジュンスクは「お前はお前の道を生きろ、俺は俺なりに生きる」と言って、サンテクを家に帰らせた。このシーンも含め、映画の中で幾度となく交わされるジュンスクとサンテクの言葉のやりとりの節々に男の友情を感じた。やくざという社会の陰の存在とエリート街道を歩き、社会の光とでもいうべき存在。そんな2人だからこそ、会話のやりとりに重みを感じるのかもしれない。
大学に進んだサンテクとジュンホは久しぶりにジュンスクを訪ねたが、薬物中毒になったジュンソクを見ることになった。最愛の母が死に、刑務所にも入っていたことを聞いた。そしてドンスが刑務所に入所していることも・・・。数年後ジュンソクの父が死に、刑務所から出てきたドンスが葬儀を取り計らってくれたその夜、ドンスはジュンソクに小さい頃から憧れていたようなことを語り、またジュンソクと敵対する組の一員になることも告げ、2人は別れた。この日以降、2人の関係は泥沼になっていくとは知らずに・・・。
数年後、サンテクが留学することになり、4人で会おうとドンスを誘いに行ったジュンソクだったが、ドンスはあまり乗り気でなく、結局送別会には来なかった。ジュンソクは旅立つサンテクと結婚したジュンホのために"My Way"を歌う。腰に手を当てて歌うのだが、渋い!!。韓国の歌でなく、英語の歌を・・・、しかも"My Way"を歌う当たりがなんとも渋い。その頃、ドンスは組織でNo2の地位にいたが、ボスを警察に売り、No1の座を得る。その報復のためにジュンソクの手下がドンスの寝込みを襲うが、返り討ちにあい、これがきっかけでドンスの部下がジュンソクの命を狙う。ジュンソクはドンスと対面で会い、「ほとぼりが冷めるまでハワイに行け。」と言うが、ずっとNo2(子供時代はジュンソクについでNo2だった・・・)だったこともあり、素直になれないドンスは「お前が行け」と言い、承諾したジュンソクは店を出る。しばらくして空港へ向かおうとしたドンスが店を出た瞬間、ドンスは殺されてしまう。
数年後、サンテクがアメリカから帰国し、ドンス殺害容疑で服役中のジュンソクの裁判に立ち会った。「殺害された容疑者を知っていますか?」との検察の問いに「親友(チング)でした」と答えるシーンは心が奮えた。そして「ドンス殺害の指示を出したのはあなたですか?」の問いに「はい」と答えるシーンには驚いた(実際どうだったのかは映画の中では明かされないが、流れから考えてそうではないと思っていたので)が、裁判の後、サンテクがジュンソクと面会をした際の会話の中で、「なぜあんな答え方をしたんだ?」との問いに「かっこ悪いだろ。俺もドンスもやくざなんだぜ?」と答え、ドンスへの償いの気持ちから法廷で「はい」と答えたんではないかと推測できたときには、日本のやくざ映画でいうところの"義理と人情"的なものを感じずにはいられなかった。
実際、映画の後半は日本のやくざ映画そのものと言ってもいいくらいで、敵討ちを中心とした組同士の抗争を描いている。しかし日本のやくざ映画とは大きく異なる点がある。それは前半で描かれた子供時代に築いた友情が重要な場面場面で絡んできて、ただ単なる義理ではなく、友情を絡めた"義理"の世界観とでも言うべき、真の意味で心を打つストーリー展開になっている。

そしてラスト、再び子供時代に戻る。海で遊んでいた4人が「俺たち、遠くに来すぎたよ。もう帰ろう。」と言い、浜辺に戻っていくシーンで映画は終わる。この台詞を大人になった4人に当てはめて考えてみるとなんとも切ない気持ちにさせられる。子供の頃はすんなり元の場所へと帰れた4人が、大人になって元の関係に戻ることができないほど遠くに来てしまった・・・。なんというか心の奥のほうでくすぶるような感じだろうか。

一口コメント:
"少年時代の友情"を軸に進む韓国版やくざ映画です。

戻る