ラスト・プレゼント |
売れないコメディアンのヨンギとそんな彼を愛する妻ジョンヨン。売れないヨンギのためにプロデューサーに掛け合ったり、その奥さんを訪ねたり、夫のことを認めてもらうために懸命に努力するジョンヨン。一方、ヨンギの元に1000万ウォンを用意すれば、売れっ子にしてやるという2人組の男たちが現れる。そんな大金はないと追い払われた2人はジョンヨンを訪ねるが、しっかり者のジョンヨンは2人組が詐欺師だと見破り追い返そうとする。しかし、ジョンヨンが突然倒れ、詐欺師は彼女の余命が長くないことを知る。
翌日1000万ウォンを用意したヨンギが2人組に会いに来る。そのお金はジョンヨンの経営する小さなお店の権利書を抵当にして作ったお金だったことを知った2人は「奥さんは死にかけている」とヨンギに告げる。急いで家に帰るヨンギだが、ジョンヨンは何事もなかったかのように洗濯をしていた。そんな彼女を見て、強がってしまうヨンギ。医者を訪ね、自分の無関心さに気付いた彼はギャラの変わりにもらったと嘘をついて、漢方薬を持って帰る。そして妻の部屋で小学校時代のアルバムを見つけ、彼女が会いたがっている人を探そうと決意する。
人探しをさせられることになった詐欺師は、ジョンヨンには永遠の片思いをしている相手がいることを知る。その相手を探しながら、ジョンヨンの知人を訪ね回る2人。最初は詐欺師として登場した2人だったが、いつしかヨンギとジョンヨンをつなぐ重要な役割を担うことになっていく。この2人組の詐欺師がこの作品の影のMVP的な役割を演じている。
その間もプロデューサー夫人を訪ねるジョンヨンだが、再び倒れてしまう。病院に運ばれた彼女は夫人に「今まで夫に何もしてあげられなかった。せめて邪魔をしたくない。だから病気のことは内緒にして。」と頼むジョンヨン。邪魔をしたくないというのは、ヨンギがテレビ番組の「お笑い王」勝ち抜きトーナメントを勝ち進んでいたからだった。
詐欺師2人組はジョンヨンの片思い相手を探すのに手間取っていたが、小学校の友人を探し当てたことできっかけをつかむ。一方、両親の反対を押し切り、ジョンヨンと結婚したため、勘当されていたヨンギは残り少ない妻のためにと実家を訪れる。後日、ジョンヨンを交えて家族4人で写真を撮影し、両親とジョンヨンのわだかまりが解ける。
しかし徐々にジョンヨンの命の炎は消えていくのだった・・・。
今まで日本でヒットした韓国映画といえば、「シュリ」と「JSA」の2本。どちらも南北朝鮮問題を題材にしたテーマで、日本に感動をもたらしてきたが、今回の作品はストレートなラブ・ストーリー。ストーリー全体を通して見られる愛する人の前では心とは裏腹の態度をとってしまう2人の描写はどこかしら日本の恋愛ドラマを連想させられる。お互いに相手のことを思うあまりに相手の邪魔をしたくないという"内助の功"的な恋愛は"心に染み入る"という表現がぴったりだと思う。
ヨンギがジョンヨンに告白するシーンは冷静に考えるとベタベタな演出だが、それまでの展開がそれをベタベタに見せることなく、爽やかな感動を与えてくれる。
逆に心にずっしりと響かせる場面もある。倒れたジョンヨンを心配して病院を訪ねたヨンギに対していつもと変わらぬ態度をとる彼女に「知っているんだよ。なぜいってくれない、助けてくれ、慰めてくれ、抱きしめてくれって!」と言うヨンギ。それに対して「私はどこも悪くない」と泣きながら言うジョンヨン。このシーンはとてもずっしりと来た。
しかしそれ以上に来たのが、ジョンヨンが母親のお墓を訪ねるシーン。「お母さんは死ぬ間際まで病気のこと黙ってた。あの時は恨んだけれど、今はその気持ちがわかる。」そして慟哭する彼女。映画館中が泣いていたのではないかと思えるほど、館内がすすり泣く音で埋め尽くされた。女優イ・ヨンエの名演技だと思う。夫に対する冷静かつ隠れた愛情を表す演技とはまったく逆の心の感情をまっすぐに表現したこの場面はこの作品の中で最も心をつかまれたシーンでした。
さて、タイトルの「ラスト・プレゼント」とは何だと思いますか?このタイトルも絶妙で、今まで見た映画の中でもこれほどぴったりのタイトルはなかったのでは。いくつもそれにあたるものが出てくるので、そのたびにこれが"ラスト・プレゼント"なのか?という思いにさせられながら、すぐにそれを上回る"プレゼント"が登場し、最後の最後までひきつけられたままでした。そして最後の最後、感動の台詞を残してスクリーンは暗くなった。