コールド・マウンテン |
本年度アカデミー賞、主要部門で「ロード・オブ・ザ・リング~王の帰還~」と火花を散らし、レニー・ゼヴィガーが3度目の正直で、オスカー像を手にした作品。
南北戦争のさなか、重症を負ったインマンは出征する前に一度だけ口づけを交わしたエイダの元へ戻るべく、脱走兵としてコールド・マウンテンへ帰る決意をする。その帰路で元牧師という脱走兵と仲間となったり、一度は義勇軍に捕獲されたり、山の中で暮らす老婆に阿片で傷を治療してもらったり、戦争で未亡人となった婦人とその赤ん坊を北軍の兵士から救ったり、様々な体験を通しながら、いろいろな感情が変わっていく中で、写真に写るエイダへの想いだけは変わらずに募っていった。
一方インマンを待つエイダは、父の死により、生活が一変してしまった。教養はあるものの、野良仕事などしたことのないエイダ。畑は荒れ放題で、食事にも困るようになる。そんな彼女の元にルビーという名の女がやってきて、野良仕事を一緒にこなすようになる。そんなある日、小屋の罠にある男が引っかかっていた。その男はなんとルビーの父親だった。幼い頃から父親に苦労してきたルビーにとっては、疎ましい存在だった父。しかも南軍の脱走兵ということで、家には置いておけなかったが、コートを与え、山へと送り出した。
山で過ごす父親とその音楽仲間はある日義勇軍に見つかり、父親は射殺されてしまう。かろうじて逃げてきた仲間の一人がルビーにそのことを知らせる。ルビーとエイダは山へと入り、かろうじて生き長らえている父親を見つけ、山小屋で看病をすることにした。そこへインマンが辿り着き、エイダと3年振りの再会を果たす―――。
アメリカ南北戦争。これをテーマに扱った作品といえば「風と共に去りぬ」が有名だが、この作品はその現代版とも言える。戦争を扱った他の作品とは異なり、戦闘シーンはほとんど出てこずに、愛する人への想いを中心に男女双方からの視点で描かれている点などは共通店といえるのではないだろうか?また、キャスティングの面から見ると、オスカー女優2人とオスカーノミネート男優が主演という豪勢な組み合わせなどは非常に現代的なハリウッド映画である。
テーマとしては、非常に重いのだが、最初から最後まであまりズシリと来なかった。というのも、エイダとインマンがどうして、そんなにまでして、相手のことを想い合うのか?というのが納得できなかったから。
それらしい描写がないわけではないが、飲物を渡すついでに会話をした程度(その内容も燃えるような恋に発展するような内容でない)で、出兵する当日にキスをしただけの間柄。その二人が遠く離れながらも、互いのことを思いつつ、物語は進んでいく。
もう少し二人が親密になっていく過程を丁寧に描いていれば、より感動できたかもしれない。
もう一点。最後の方で激しい撃ち合いがあり、撃ち合いの後で無事だったのはエイダだけだったのだが、エンディングではインマン以外の主要人物は皆生きており、ただ一人インマンだけが死んでしまっている。撃ちどころが悪かったのだろうか?いや、銃で撃たれてそんなことはないだろうし、インマン自身何度も撃たれてはいたものの、死ぬことはなかった。それが最後の最後だけは、死んでしまい、他の人物は生き残る。
銃で撃たれて、死なないという描写にまず疑問を覚えるが、時代が時代なだけに銃の威力もたいしたことなかったのかも知れないと思い直したが、最後にインマンは死んでしまう。この点も自分の心の中では引っかかった。
そもそものこの点に関しても元を辿れば、先ほど述べた二人の親密さに疑問を感じていたのが原因で、素直に受け入れられないのだと思う。
いずれにせよ、妙に疑問が残り、素直に作品に入り込めなかった。二人の恋愛をはぐくむシーンがもう少し丁寧に描かれていれば、おそらくかなりの感動巨編になっていたのになぁ・・・、そう思わずにはいられない惜しい作品でした。