ロード・オブ・ザ・リング ~王の帰還~ |
遂にこの時が来た!第1部「~旅の仲間~」が公開される前から、なぜ日本では公開時期が遅いのだろう?そして第2部「~二つの塔~」の公開時にも同じように早く見たいのに・・・と思っていたが、もう終わってしまうのか?と少し名残惜しく感じてしまう3部作の完結編がやってきた!
前作同様ハイライトなどない、潔い始まり方、ゴラムの回想シーンで幕を開けた。ゴラムがどのようにして指輪を手に入れたかを最初に持ってくることで、改めて指輪の恐ろしさを思い出させられる。
フロドとサムはそのゴラムと一緒に滅びの山への旅を続けるが、ゴラムの策略によって二人が離れ離れになってしまう。サムと別れ、一人になったフロドは巨大なクモに襲われ、最終的にはオークに捕らえられてしまう。
一方メリーとピピンはアラゴルンたちと合流し、第2部で描かれたローハンの兵士達と共にもう1つの人間の王国、ゴンドールへ向かう。そこで繰り広げられる戦闘は第2部の300vs10,000を遥かに凌ぐ迫力。20万の敵軍の中には巨大なマンモスやナズグルの操る飛竜も加わり、攻城兵器も第2部よりパワーアップしている。それに何より、戦闘場所となるミナスティリスの街が素晴らしい。フランスにあるモン・サン・ミッシェルを思い出させる作りになっていて、特に俯瞰図は最高である。
今回はまず音響に驚かされた。今まで数多くの映画を見てきて、この作品ほど音響の凄さを実感した作品はないかもしれない。ナズグルの乗る飛竜の羽ばたき音や咆哮は、戦闘に臨む兵士達の士気を挫くだけの代物であることを実感できるし、膨大な数の馬が疾走するシーンの地響きなどは体にビリビリと来て、実際にその戦闘場所にいるような錯覚すら覚えた。
中でもローハンの兵士達がペレンノール平原に到着し、サウロン軍に向かって突進していくシーンはその音響と映像が見事にマッチしていた。
そして前2作同様にCGも素晴らしい。いや、前2作を遥かに凌駕していると言っても過言ではない。ゴラムは説明不要だろうが、それ以外にもいくつものCGの産物が登場する。上述した飛竜もそうだし、城や塔が崩れるシーンなどは、ミニチュアにCG処理を加えていると思われるが、カメラワーク(崩れ落ちる建物を下から撮るアングルはとても興味深い)と合わさって、その崩壊シーンをメーンにした映画が1本撮れるほどの出来だ。
また死者の軍勢とその死者の都市やフロドを襲う巨大クモなど他にもCGの素晴らしさを感じるキャラクターはいくつも登場するが、一番驚いたのは巨大なマンモス。その躍動感はジュラシック・パークに登場する恐竜と大差ないのだが、その背中に人間を乗せたり、ある時はレゴラスの見せ場の舞台装置となったり、動くマンモスにあわせて実在の人間もその振動を表している点。つまり、CGで作り出した生物の躍動感の中で、その躍動感にあわせて人間の演技が要求されるのだ。これは想像するだけでも非常に難しい。DVDが出たらその辺も確認してみたい。
この3部作が世界中で大ヒットしている(日本だけはちょっと物足りない気がするが・・・)理由は、CGの素晴らしさもさることながら、やはりドラマではないか?前2作でもそうだったが、この作品の中で登場する"愛情"や"友情"に誰もが心を打たれるのではないだろうか?
例えば、人間とエルフという種族を超えたアラゴルンとアルウェンの愛、アルウェンとエルロンド、あるいはエオウィンとセオデンなどの親子愛、そしてフロドとサム、メリーとピピン、レゴラスとギムリといった旅の仲間の友情。
そのドラマという観点でも、CG同様にこの完結編が一番素晴らしい。指輪を葬り去るまでのサムは、前2作で正直サムって居なくてもいいんじゃないかと思っていた自分を恥ずかしく思えるくらいだし、サブタイトルにもなっているアラゴルンの王としての帰還へつながる伏線上に盛り込まれた人間の王達の苦闘、エルフの苦悩などでどんどん物語の奥深くに引き込まれ、指輪を葬った後のそれぞれの登場人物に待っている、それぞれのエンディングの場面では、かなり多くの人が泣いていた。もちろん自分も泣いていた。
この涙は全3部を見てきて、普通なら把握できないほど大勢居る登場人物のそれぞれの心理などに対する共感でもあり、旅を終えた仲間の解散に対する"もう終わってしまうのか?"という惜別の念でもあると思う。
CGによる"興奮"とドラマによる"涙"が見事なまでに融合した作品であり、歴史に残る作品となると思われる。
総上映時間9時間超の旅を通して、自分も"旅の仲間"となり、"愛情"と"友情"という"二つの塔"の頂上から、21世紀の映画界の"王"となるであろう作品の"王の帰還"を見れたことを素直に嬉しく思います。