ジュラシック・ワールド JURASSIC WORLD |
映画史上、「ジュラシック・パーク」以前と以後という言葉を残すほどのインパクトを残したシリーズ第1作公開から22年。アメリカや全世界では歴代興行記録を次々と塗り替えている+久々に童心に帰りたいということもあり、劇場まで足を運んだ。
コスタリカ沖の島に建設されたジュラシック・パークの事故から22年が経ち、その地は1日に2万人もの観光客で賑わうジュラシック・ワールドに生まれ変わっていた。
パーク内ではお客の飽きを防ぐための新種の恐竜の必要性があったところに、CEOの意向も加わり、遺伝子操作によるハイブリッド種"インドミナス・レックス"が生み出されていた。テーマ・パークの責任者クレアは、元軍人でヴェロキラプトル調教師オーウェンと共に、インドミナス飼育施設の防壁を調査するが、遺伝子操作の過程で様々なDNAを組み合わせて生み出されたインドミナスは、擬態能力や赤外線反射能力といった他の恐竜や生物の能力を駆使して、防御壁から脱出するのだった。
2万人の観光客の中にはクレアの甥2人もおり、パーク内はインドミナスの逃走により翼竜が客に襲い掛かるなどパニックに陥ってしまう―――。
久々に手放しに深く考える必要もなく楽しめる映画だった。
劇中の設定と同様にパート1から22年が経ち、さすがにパート1で初めて見た"動くリアルな恐竜"に対する感激は薄れていたが、自分の中でもパート3以来14年ぶりということで懐かしさもありつつ、新鮮さもあった。というのもこの4作目、過去のシリーズに対するオマージュが盛りだくさんで、そういったオマージュのシーンには懐かしさを感じつつ、モササウルスなどの新種の恐竜が登場することで新鮮さを覚えるといった感じ。
オマージュ的な要素としては、
・何はともあれ、テーマ音楽 ⇒ あの音楽を聴くだけで盛り上がる!
・パート1で登場した恐竜復元の説明VTRに登場したDNAのアニメの再登場
・パート1の悪者キャラだったネドリーを襲った恐竜がホログラムで登場
・"ワールド"ではなく、"パーク"のTシャツを中古で$150で購入したキャラが登場
・パート1のエンディングの舞台となったビジター・センターの廃墟が登場
・パート3の主役だったスピノサウルスの化石を破壊して登場するパート1の主役だったT-REX
などなど、他にもたくさんの要素が盛り込まれていて、非常に面白い。
かと思いきや、パート1のラストで落ちてきた垂れ幕を2人の兄弟が見つけた瞬間はあの興奮が蘇るのか?と思いきや、次のカットではそれを燃やしてしまっている・・・といったこれはあくまでも旧作を踏まえた新作だというシーンもチラホラとみられる。
脚本レベルで言えば欠点もたくさんある。
・家族には無関心で、女の子に目移りばかりしている兄と両親の離婚におびえる弟というキャラ設定が本筋に全く無関係
・冒頭ではラプトル4匹をようやく手懐けることができたかも?というレベルだったのに、後半にはバイクで一緒に疾走しているほど信頼感が増している
・機械的な兵器よりも生物兵器の方がすごいとか言いきってしまうおバカなお偉いさん
・パークの非常時に無免許でヘリを操縦し、自分が死ぬだけでは飽き足らず、翼竜を開放し一般客まで巻き添えにしてしまうCEO
・体内にGPSシステムを埋め込む技術はあるのに、体内に万が一のための電撃カプセルを埋め込む技術は持たない設定
などなど、こちらも挙げだしたらキリがないレベル。
しかしそもそもこの手の作品に人間描写だとかドラマだとかといった要素を求めるのは野暮。一言で言えば、恐竜が逃げ出して、暴れまくって、人を襲う映画。それ以上でもそれ以下でもない。パート1に関してはそこにCG未開の時代に絶滅したはずの恐竜が大画面で躍動する!いう歴史的背景も加わり、映画史にさんざんと輝く名作となったわけだが、CG全盛のこの時代にその要素はあり得ないわけなので、この作品を見て「恐竜の躍動感は凄かったが、人間ドラマや心理描写が・・・」なんてことは言ってはいけない。
その証拠にいわゆるTOP Aクラス級の有名な役者はキャスティングされていない。主役はあくまでも人間ではなく、恐竜なのだから・・・。そういった意味で1つだけ不満だったのが、今作の表の主役とも言うべき、"インドミナス"。せっかく遺伝子操作によって生み出された"何でもアリ"という好都合な設定なのにも関わらず、見た目がT-REXと変わらなかったのは残念。最後のバトルの際にどっちがどっちか?が明確にわかるように、例えば皮膚の色を変えたり、パート3のスピノサウルスのように背ビレのようなものを付けるなどの工夫が欲しかった。
しかしクレアの甥のお守り係の女性は翼竜によって空に連れられ、かと思えば水中に沈められ、最終的には水竜・モササウルスに食べれられる・・・というこの作品一番の最低な役どころだったわけだが、こういった描写の軽さという名の描写の上手さはさすが!
「恐竜に人間が食べられる」、普通に考えれば残虐極まりないシーンだが、それを恐怖感を煽るだけでなく、思いっきり振り切って笑いに変えているのはさすがハリウッド。日本の劇場ではまだまだ抵抗があるが、アメリカの劇場では大爆笑のシーンだったと思われる。
またオープニングで卵の殻を破る幼竜から、それっぽい足への切り替えで「おっ、いきなり恐竜の登場か?」と思いきや、ただの鳥・・・といった緊張感と脱力感のバランスのとり方もうまい。恐怖の煽り方は、直接的には視覚に訴えずに、影や音のみで恐怖心を煽る昔からのハリウッドの王道方程式。スピルバーグ印の安心な演出。そして子供たちが劇中で使った台詞そのままに、ラプトル4匹を引き連れてバイクで疾走するオーウェンの姿は"格好良い!!"と心の中で叫んでしまう程に童心に帰って作品を楽しむことができた。
最後の三つ巴の戦いに関しては、パート1当時の自分がそうだったように子供たちが一番望むであろう展開にスピルバーグの心意気を感じた。そしてエンディングはお約束の咆哮とともにジョン・ウィリアムズのテーマ曲という、これまた安心のスピルバーグ印で満足のまま作品は終わりを迎えた。
そういえばこのインドミナスは劇中で"ハイブリッド"と呼ばれていたが、第1作目が公開された1993年当時、まだ"ハイブリッド"の代名詞とも言うべき、プリウスは発売されていなかった・・・なんてことを考えながら20年という歳月の重みを感じたりもした。
歳月という意味では、昨今の韓国企業の隆盛を反映してか、今作のメインの建物の名称がSAMUSUNG・イノベーション・センターとなっていたが、20年前ならUniversalを買収していたPanasonicになっていたのだろうか?なんてことを考えたりもした・・・。
話が逸れたが、もう次回作の制作も決定しているらしいが、どんな展開になるのやら?ちなみにエンドロールにDENTSUとFUJI TELEVISIONの名前があった。英語版のエンドロールに名前が入っているということは日本に対して重きを置いているのか?自分が見つけられなかっただけで他国のメディア関連企業も同様に名前を連ねていたのか?
個人的にはこの作品最大の謎が最後の最後に待っていた感じでした・・・。