スター・ウォーズ -エピソード8・最後のジェダイ- |
2017年最大の目玉作品として世界中で注目された「スター・ウォーズ」第8弾。
銀河帝国軍の残党ファースト・オーダーと新共和国のレイア姫が率いる私設軍隊レジスタンスの戦闘が激化する中、行方が分からなくなっていた伝説のジェダイ、ルーク・スカイウォーカーが発見される。その頃、ファースト・オーダーの大艦隊がレジスタンスの基地を襲っていた。ポーがレイアの帰還命令を無視して多大な犠牲を払った結果、なんとか敵の軍艦スター・デストロイヤーを撃沈することに成功する。しかしハイパースペースを利用して逃げた先にもファースト・オーダーの軍隊が追ってきてしまう!!。
一方、ジェダイ・マスター、ルークの元へ向かったレイは、レイアがルークの帰りを待っていることを伝えるが、ルークはそれを拒否し、レイに島から去るよう告げる。しかし時間をかけて説得していく中で、"ミレニアム・ファルコン"の名前を聞いたり、チューバッカやR2と再会したり、更にはハン・ソロが殺されてしまったことを聞いたルークは悩んだ末に、レイにジェダイとしての修行をつけ始める―――。
まず何はともあれ、最初に思ったのが、「主人公のレイが太った?」ということ。
シーンによると言えばよるのだが、前作ではエピソード1~3のナタリー・ポートマンとその影武者役のキーラ・ナイトレイとどことなく似ていると思えたのだが、今作ではそう思うシーンがなかった。エピソード7~9までの3作まとめて撮っているのだからそんなことありえないだろうと思っていたが、3作別々に取っているようなので、実際太ったのかもしれない。
なぜ別々に撮っていると気づいたのか?というと、レイア姫役のキャリー・フィッシャーがこの作品撮影後に逝去し、エンドロールの最後にそのことが記されていたため。ということはエピソード9は彼女無しで脚本を大幅に修正して撮影が進むのか?あるいは代役を立てて進むのか?いずれにせよ、最後のエピソードはいろんな意味で大注目の作品になりそうだ。
続いて気になったのが、前作では実質ハリソン・フォードが主役だったが、今作はマーク・ハミルが実質の主役になっている。3部作の2部作まで終わっていながら、真の主役であるはずのレイがあまり活躍していないのが気になるところではあるが、もしかしたら今回の3部作は最初から最後まで群像劇で描くつもりなのかもしれない。
フィンとローズがレイ以上の活躍を見せたり(結局、全く意味が無かったが・・・)、ポーが1人で良くも悪くもかき乱したわりには最終的に旗艦を捨てることになったり・・・、R2-D2やC-3POを完全に脇役に追い込むほどBB-8が大活躍したり・・・、といった点はまさに群像劇。
あるいは完結編でのレイの活躍を際立たせるための敢えて抑えた演出かもしれないので、そこは次回作を待ちたい
そしてもう1つ気になったのが、"フォース"。
一言で言うと「フォースってなんでもありの魔法のような力だったっけ?」という疑問がそこかしこで湧き上がるのだ。
例えばレイとカイロ・レンのフォースを使った対話。距離に関係なく通じてしまう問題と実際にその場にいるほどの鮮明な映像という点を除けば、まぁこれは旧シリーズでもそれっぽい演出もあったので、まだ良い。実際、この2人の会話によって相互理解が深まっているので、新解釈という理解はありかもしれない。
続いて気になった・・・というか驚いたのが、レイアのフォース。宇宙船が爆破され、宇宙空間に放り出されてしまったレイアが見せるトンデモな力。さすがに「これはないわ~」という演出だった。
そしてクライマックスのルークが見せたフォース。「これもないわ~」って演出なのだが、ここはクライマックスということもあり、ここを突っ込みだすと「話全体がないわ~」になってしまうので、華麗にスルーってことで・・・。
また「フォースは岩を動かしたり、人を操る力じゃない」とルークがレイに教えたはずなのに、岩を動かして仲間を救うシーンを挿入してしまうのもどうかと思う。せっかくカイロ・レンとフォースで会話ができるシーンを入れているのだから、レイアとフォースを使った会話で隠し通路を誘導するといった演出にすれば良かったのに・・・。
このまま"なんでもあり"のフォースを許してしまうとスター・ウォーズの世界観が崩壊してしまうのではないだろうか?
また相変わらずカイロ・レンは仮面をすぐに取る・・・。
改めてこのキャスティングはイマイチ。前作のレビューでも書いたが、「良い作品には必ず良い敵役がいるという今までの映画の歴史からすると、その点においてこの新3部作は不安で仕方がない。今回は敢えて情けない男として描き、次作以降で主人公だけでなく、敵役も成長していく過程を描くための壮大な伏線だと思いたい・・・」と前回書いたが、やはり残念なまま終わりそうだ。
とダメな点ばかり書いてきたが、もちろん良い点もある。
いくつか見せ場は合ったのだが、基本的に冒頭のポーの活躍以外、この作品の中ではレジスタンス側は敗北しかしていない。これは3部作の2作目ということで完結編で"ジャンプする"ためにこの作品は"かがむ"ことに徹しているのだと思われる。特にフィンとローズの潜入は全くの無駄なシーンだし、レイア達レジスタンスも旗艦を捨てることになったし、良いところ無し。これらはすべて完結編で"ジャンプする"ための"かがみこみ"だと思われる。
唯一の救いはレイとカイロ・レンが組んでファースト・オーダーの最高指導者スノークを倒したことだろうが、一番の強敵を2作目で倒す=完結編でいよいよカイロ・レンが強敵となるための布石="かがむこみ"と考えられる。
こうして徹底的に"かがみこむ"ことに専念しながらも1つの作品として成り立たせたストーリー展開は素晴らしかった。その一番の要素はやはりルークの隠れた人間性の部分だろう。エピソード4~6で描かれた根っこの部分=ダメ人間の要素が、この作品に深みを与えている。ルークはジェダイ養成学校を設立し、そこにいたカイロ・レンを育てていたのだが、ダークサイドに引き込まれそうなカイロ・レンを殺害しようとして、それがきっかけで結果ダークサイドに落ちてしまったという流れはエピソード1~3のダースベーダー誕生のストーリーを連想させてくれる。
またロゴの色を今までの黄色枠から赤枠に変え、ストーリーの中でも赤をメインカラーとして描いているのも良かった。赤と言えばこの手の作品だと血を連想させるわけだが、そこを逆手に取り、白い塩原の大地での戦闘シーンでは実際に流血することなく、塩が赤くなることでそれを連想させる演出などは今までに見たことのない演出方法で感心させられた。
また血=血縁関係という意味でもいろいろな人間関係にメタファーが隠されていて、そういう意味でも赤をメインカラーにして、ロゴの色までも変えたという事実が素晴らしいと感じた。
そして深い言葉もいくつかあった。
ヨーダがルークに語った「失敗こそ最高の師だ!」といった台詞、そのルークが自らに問いかけた「ジェダイの存在がダークサイドを生んでしまっているのではないか?」という台詞、この2つの台詞は印象的で、特にルークの台詞はこのシリーズ全体を貫く根柢のテーマともいうべき内容で、いろいろと考えさせられる台詞でもある。
何はともあれ、ファースト・オーダー側もレジスタンス側もどちらも精神的支柱(スノークとルーク)を失ってしまい、組織としては小粒になってしまった感が否めない。そもそもこのエピソード8は銀河全体の話というよりは辺境に逃げ込んだレジスタンスの本営とそれを追うファースト・オーダーの局所的戦いだった感も否めない。
このあたりエピソード9でどのように盛り上げるのか?あるいはおなじみの冒頭の奥へと吸い込まれていく説明文でその辺りはバッサリ切り捨ててしまい、エピソード8は何だったのか?となってしまうのか?
はたまたラストシーンでホウキをフォースで引き寄せた奴隷の少年がレイを食ってしまうほどの活躍を見せるのか?そもそも前作で提示された謎がすべて回収されるのか?
いろんなものを抱えた状態で完結編を待ちたいと思います。