スター・ウォーズ
-エピソード7・フォースの覚醒-
採点:★★★★★★☆☆☆☆
2015年12月29日(映画館)
主演:デイジー・リドリー、ジョン・ボイエガ、ハリソン・フォード、キャリー・フィッシャー
監督:J・J・エイブラムス

2015年最大の目玉作品として世界中で注目された「スター・ウォーズ」第7弾。
世界的視点で見ると、この作品はものすごく評価が高く、各国で記録を塗り替えているのだが、日本は他国と比べるとものすごく評価が低い。過去の6作品にしても、歴代TOP10にすら名を連ねていないし、この最新作にしても「妖怪ウォッチ」という強力なアニメ作品に興行収入では勝ったものの、動員数では負けてしまい、収入ではなく、動員数で発表される日本国内の映画ランキングでは初登場2位。良い意味でも悪い意味でも世界的にも日本的にも注目されていた作品をようやく見ることができた。

遠い昔、はるか彼方の銀河系で・・・。
エンドアの戦いから約30年後、最後のジェダイ、ルーク・スカイウォーカーが姿を消して以降、帝国軍の残党ファースト・オーダーにより、再び銀河に脅威が訪れようとしていた。ルークの双子の妹、レイアはレジスタンスと呼ばれる組織を結成し、新共和国の支援の下、ファースト・オーダーに立ち向かうためにルークを探していた。
ルークの居場所が記された地図を手に入れたレジスタンスのパイロット、ポーは自分のドロイドのBB-8に託した後、ファースト・オーダーによって捉えられてしまう。一方、BB-8はジャクーでレイという少女に出会う―――。

まずはとにかく、「お帰りなさい」という言葉だろうか?
エピソード3が終わった時点で生みの親であるジョージ・ルーカスがもう作らないと言っていたこのシリーズだったが、ディズニーがルーカス・フィルムを買収したことでルーカス以外の監督が指揮を執るということで急遽続編が作られることになり、世界的に期待されていた作品がこうして現実になったわけだから・・・。

正直自分はそこまでスター・ウォーズのことが好きなわけではない。自分が最も好きなシリーズ作品である「バック・トゥ・ザ・フューチャー」は3部作のDVDだけでなく、VHSやデロリアンのプラモなど多数のグッズを持っていて、本編は数十回と見ているが、スター・ウォーズ関連のグッズは何も持っていないし、見た回数も10回も行ってない。
そんな自分としての感想は、この作品は「スター・ウォーズ」の正当な続編と言える内容だったのではないだろうか?という感じ。何よりも驚いたのが、ディズニー制作作品でありながら、ディズニーのオープニング・ロゴがなかったこと。映画史上最も愛されてきた作品ということもあってか、ディズニー側も作品に対して敬意を払ったのだろうか?さすがに20世紀FOXのロゴはなかったが、ルーカス・フィルムのロゴもあったし、オープニングの宇宙空間に文字が浮かび、奥へと消えていく、いつものパターンだったし、デジャブか?と思えるほど前6作で見たことあるようなシーンも随所に見られた。(基地の細い空間に入り込んで、最終的にデス・スターを爆破をするシーンは何度見たことだろう?)

そして旧シリーズのキャラクター達の登場。エピソード6の30年後という設定で、実際にエピソード6が公開されたのが、1983年ということで、2015年公開の今作は公開年度で見ても32年後ということもあり、年齢の取り方もリンクしている。レイア姫を演じたキャリー・フィッシャーは他の作品で見ることがほとんどなく、「あぁレイア姫だ!」と感動。そしてチューバッカは人間ではないため、当時と変わらない姿でそのまま登場するし、活躍の場面も多い。またR2-D2とC-3POのドロイドコンビも登場する。
しかし何といってもハン・ソロだろう。ハリソン・フォードはこのシリーズをきっかけに「インディ・ジョーンズ」などハリウッドを代表するスターとなった。そんな彼が再びこのシリーズに戻ってくるだけでもすごいことなのに、チョイ役としての出演ではなく、愛機のミレニアム・ファルコンと共にこのエピソード7の実質的な主役ともいえる活躍を見せてくれる。

脚本自体はシリーズ全体を通してそうなのだが、そこまで複雑なストーリーではなく、善と悪が戦うと設定を軸に、フォースやらライトセーバーやらドロイドやら、ファンが好みそうな要素が散りばめられている。その点に関しても今作もシンプルかつファンが好む要素を各所に盛り込んでいて、かつ旧6作へのオマージュもそこかしこに散りばめられていて、ファンが喜ぶこと間違いなしの奥深い演出と共に初見のファンにとっても解りやすい世界観を描いている。

ただし逆に言えば、新鮮さというか新しい"スター・ウォーズ"感は全くない。唯一今まで明白に違ったのが、場面転換の際のエフェクトがなくなった点だろうか?
監督のJ・J・エイブラムスは「ミッション・インポッシブル3」、「スター・トレック/STAR TREK」、「SUPER8/スーパーエイト」といった過去作品を見てもわかるが、有名監督や有名シリーズの続編やリメイクなどは非常に上手い。各作品や監督が持つ色や感性といったものを再現することに関しては、世界屈指の監督と言える。しかしオリジナルとなると「LOST」などのTVドラマは例外として、劇場作品になるとオリジナリティが薄れる。"コピーさせたら右に出るものはいない"というのがオリジナリティなのかもしれないが、一度彼の本当のオリジナル作品を見てみたい。
だからかどうかわからないが、今作はよく言えば「懐かしい!」シーンがたくさんあるのだが、「おぉ、これ格好良い!」とか「今までに見たことない!」的なシーンはなかったように感じた。エピソード1~3ではポッドレースという新しい世界観だけでなく、イグアスの滝を思わせるようなシーンを見せるなど惑星1つ1つの描き方にも新鮮さがあったが、この作品に関してはそういった新鮮な驚きがなかった・・・。

キャスティングに関して言うと、今シリーズの主役と思われるデイジー・リドリーは非常に良い。エピソード1~3のナタリー・ポートマンとその影武者役のキーラ・ナイトレイとどことなく似ている(どっちかというとキーラ似?)。同じ「スター・ウォーズ」シリーズということでキャスティングの際に意識したのだろうか?凛とした顔立ち、美人でありながら儚さも強さも両方を表現できるタイプの顔立ち。今後の活躍が非常に楽しみだ。
そしてエピソード4のルークと同じ廃品回収で生計を立てているというキャラ設定もナイス。彼女の生い立ちは今作でははっきり明かされてはいないが、ナタリー・ポートマン演じたパドメ・アミダラを彷彿とさせる風貌に、王族の気品と強い意志が瞳に宿っているし、修行もしていないのに、フォースを操れる強さは恐らく彼女の遺伝子がどこかに入っているのだろう(エピソード8か9で明らかにされるだろうか?)。しかし旧6作で描かれていたジェダイの修行はいったい何だったんだ?という風にも取れてしまうため、"フォースの覚醒"という副題にもなっているその過程はもう少し丁寧に描くべきだったかもしれない。

一方、今シリーズの敵役と思われるカイロ・レン。このキャスティングはイマイチ。そもそもキャラ設定が残念すぎる。このシリーズがここまで世界的にヒットした理由の1つとしてダース・ベイダーという稀代の悪役の存在がある。そのダース・ベイダーに憧れているという設定は良いのだが、あまりにも弱い。もしかしたら今回の敗北と某人物殺害を糧にエピソード8以降でとてつもない活躍を見せてくれるのかもしれないが、今作を見る限りでは期待薄。
そもそもそれっぽい仮面を装着して登場し、フォースを使ってビームをも停止させ、「おぉこれが今シリーズの敵役か?」と思わせておきながら、すぐに仮面を取ってしまうとは・・・。仮面キャラと言えば、仮面を取らないからこその美学があるはずなのに、仮面の奥にどんな人物が?・・・と想像を掻き立てる暇もないし、仮面を取ったら取ったで敵役っぽさの薄い顔立ちだし、失敗を部下に当たり散らすような情けない男でありながら、ファースト・オーダーの軍においてはトップ2の1人というキャラ設定。またせっかく某人物とのとても重大な関係性を出しておきながら、その人物がいなくなってしまったことで、次作以降でそこを深堀していくという展開も望めない。
良い作品には必ず良い敵役がいるという今までの映画の歴史からすると、その点においてこの新3部作は不安で仕方がない。今回は敢えて情けない男として描き、次作以降で主人公だけでなく、敵役も成長していく過程を描くための壮大な伏線だと思いたい・・・。

レイにしてもカイロ・レンにしても、3部作の1作目ということでそこまでキャラが立っておらず、旧シリーズのハン・ソロが実質の主人公的振る舞いをしていて、キャラの描き方に満足を感じることが難しい今作で唯一新キャラとして明確な足跡を残したのがドロイドのBB-8だろう。
R2-D2を彷彿とさせる愛嬌たっぷりのドロイド。敵をやっつけて、とある人物がガッツポーズの代わりに思わず親指を立てた動作を真似て、BB8もライターっぽいものを体内から取り出し、さらにそれを使って火をつけて親指を立てる動作を真似るシーンは本当に愛嬌たっぷり。そしてストーリー展開の上でもルークの所在を示す地図を保管するという重要な役割にを担っており、最後に実際にR2-D2と共演するシーンも用意されている。

時代的にはSW前とSW後といって良いほど、SF映画の質が変わった。「ジュラシック・パーク」前とジュラパ後でCGの歴史が変わったように・・・。そんな歴史的作品の最新、かつ最終3部作の第1作としては正直、物足りないというのが今作の感想だが、残り2作を見終わった後には3部作の1作目としてはあれで良かったとなるかもしれない。残り2作に期待したい。

一口コメント:
映画史に名を残す作品の最新、かつ最終3部作の序章としてはイマイチ。

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