グリーン・ゾーン Green Zone |
個人的には、サスペンス映画史上最高傑作である「ボーン・アルティメイタム」の監督と主演タッグの最新作ということで期待していた作品。
ロイ・ミラーは、イラクの砂漠地帯に隠された大量破壊兵器の所在を追う極秘任務に就くが、何の情報も発見できない。大量破壊兵器に関する情報の出所に疑問を抱いた彼は、作戦会議の席で情報源についての説明を求めるが、上官に一蹴されてしまう。
更に、激しい銃撃戦の末に拘束した重要な参考人も、国防総省のパウンドストーンの手によって、強引に奪われてしまう。この動きを不審に思ったミラーは、同じ疑念を抱いていたCIAのブラウンと共闘し、部隊を離れ単独で調査を開始。飛び交う偽情報と激しい銃弾戦をすり抜け、パウンドストーンに極秘情報を提供している正体不明の大物キーマン"マゼラン"の存在を突き止める―――。
ポール・グリーングラス監督+マット・デイモン主演ということで、ボーン・シリーズと同様の面白さを期待していると正直、がっかりしてしまう。
ボーン・シリーズの売りだった手ぶれカメラやカット割の多さは引き継がれているものの、どちらもボーン・シリーズに比べると頻度が少ない。それに何より、ボーン・シリーズの醍醐味を満たしていない。自分が思うボーン・シリーズの醍醐味というのは大きく以下の3つある。
1:チェイス・シーン(車だったり、バイクだったり、人だったり・・・)
2:頭脳戦(暗殺者という設定なのに、名探偵のような頭の切れ)
3:身近なものを使った肉弾戦(スパイなのに、極力銃は使用しない)
映画のキャラクター設定が違う(スパイと米軍の隊長)ので、1のチェイス・シーンがないのは仕方がないし、3の肉弾戦がないのも仕方がない(銃を持ち歩く米軍が肉弾戦をするのも変な話だし・・・)。
しかし2の頭脳戦に関してはそれを発揮する要素が、劇中のあちらこちらに散りばめられていたはずなのに、発揮されなかったのが、非常に残念。
例えば、情報操作に気づいた米軍所属の主人公、その存在を邪魔に思った国防総省、そしてCIA、というアメリカ国防におけるTOP3とも言うべき象徴的な3つ巴の頭脳戦が実現可能な舞台が用意されていたにも関わらず、まったくもってスリルがない。
主人公を暗殺してでも止めたいはずの国防総省だが、結構ゆるい作戦で抜け穴だらけというか、緊迫感ゼロである。これがボーン・シリーズなら、これは絶対に逃げられないだろ!っていう作戦を国防総省が仕掛けるが、ボーンが一枚上手で、色々な身近に存在する小道具と頭脳を駆使して、ギリギリのところで、回避するという緊迫感100%の展開があったはず。
これはひとえに脚本の違いだろう。
そして主人公ミラーのキャラクター設定も、少し人より使命感が強いくらいで他に特筆すべきものがない。めちゃくちゃ頭が良いわけでもなく、めちゃくちゃ銃の扱いが上手いでもなく、言うなれば普通の人である。
映画の設定上、スパイのようにめちゃくちゃ頭を良くしたり、強くする必要もないのだが、1つの作品の主人公である以上、最初は弱くて、徐々に強くなっていくか、最初から何か一芸に秀でているか、何かキャラを確率させる要素が欲しかった。
でなければ、見ているこちらとしては物語に入り込めないのだから・・・。
他のキャラクターも中途半端。悪い奴はもっと悪く描いてくれないと憎めないし、どいつが本当の味方か、わからないような展開になるわけでもなく・・・。それならそれで、国防総省やイラク軍との陰謀に巻き込まれていくような展開にするわけでもないし・・・、もう少し脚本にひねりが欲しかった。
米軍のイラク内部での描写、そこに国防総省、CIA、有名マスコミが絡むという美味しい設定を生かせなかった残念な作品でした。