パニック・ルーム
採点:★★★★★★☆☆☆☆
2002年5月18日(映画館)
主演:ジョディ・フォスター
監督:デビット・フィンチャー

アカデミー賞5部門を受賞した「羊たちの沈黙」以来のサスペンス主演となるジョディ・フォスター久々の新作であり、「羊たちの沈黙」の続編「ハンニバル」や「カンヌ映画祭審査委員長」のポストをけって取り組んだ作品であり、見る前から非常に期待していた作品。

夫と別れ、娘を連れて新しい家に越してきたメグ。その家は4階建ての豪華な家でエレベーターも付いており、さらに緊急時の避難用としての特別な部屋があった。"パニック・ルーム"と呼ばれるその部屋は頑丈な鋼鉄で作られており、内部には10台以上の監視カメラが家の中をくまなくモニターしている。
引越しの片付けを済またその夜、事件は起こった。3人の男達が前の住人の遺産目当てに侵入したのだった。その遺産はパニック・ルームの中に隠されており、3人組の1人ジュニアは遺産相続でもめている遺族の1人であり、多額の借金を抱えており、今回の犯行に及んだ。そして仲間としてパニック・ルームの設計者バーナムと正体不明のラウールを今回の計画に同行させた。空家と予想していた3人は人がいることを知り、躊躇し3人の意見は対立する。
眠れずにいたメグが異変に気づき、娘を起こし、間一髪でパニック・ルームに逃げ込んだ。男達の目的がこの部屋にあるとは知らないメグは警察に通報しようとするが回線が未接続のため、連絡できず、邸内マイクを使って男達に警察に通報したから出て行けと言うが、電話が未接続だとわかっている3人はモニターを使って部屋から出てくるようにと伝えた。
3人はガスを使い部屋から追い出そうするが失敗に終わり、メグも携帯を使って連絡しようとするが電波が入らない。その後もお互いにさまざまな方法でお互いを追い詰めようとする。しかしメグの娘が持病の糖尿病を患い始め、注射を打たないと危険な状態になってしまう。しかし注射器は部屋の外。その頃3人のうちのジュニアがパニック・ルームには入れないと諦めて家の外に出ようとしたその瞬間、ラウールがジュニアを射殺していた。その隙をついてメグは注射器を取りに、娘を残し、部屋の外に出る。
さまざまな状況が絡み合い、立場が逆転する。犯人2人と娘がパニック・ルームに、そしてメグはラウールの持っていた銃と共に部屋の外に・・・。そして映画はクライマックスに向かい、最後の動きを見せる。メグは娘を助けるために・・・、犯人は遺産を見つけ、それを持って家から、そしてこの"パニック・ルーム"から逃走するために・・・。

冒頭で述べたようにジョディ・フォスターがこだわりを見せた作品だったが、個人的な意見を言わせてもらえば、「ハンニバル」のクラリス役としての彼女を見たかった。これは決してこの作品が悪かったという意味ではない。この作品で見せる母親としての強さ、そして時に見せる弱さが「ハンニバル」におけるクラリスに通じるものがあり、見ていてクラリスを思い浮かべてしまったという意味である。つまり、ジョディ・フォスターの女性としての強さや弱さをうまく引き出していたと思えたということである。
またこの作品は、サスペンス映画としての宣伝が強かったのだが、登場人物たちが置かれた状況をそれぞれどのように打破していくのかに焦点が当たっていて、サスペンスとしての謎解きらしい謎はないといっていい。それゆえに通常のサスペンス映画のような謎解きを求めているといまいち物足りないものとなるかもしれない。どちらかというとホラー映画やアクション映画のようなハラハラドキドキ感を味あわせてくれる作品となっている。前半はパニック・ルームの内と外でメグと犯人の頭脳戦が展開され、中盤はメグが部屋の内と外を行き来し、観客としては犯人につかまらないかどうかというハラハラさせられる展開。そして後半は犯人とメグの置かれる状況が逆転する。登場人物も極端に少ない(メグと娘、犯人3人、メグの夫の6人以外はほとんど登場しない)し、映画は最初から最後まで一軒の家の中を舞台として展開される。

自分の知っている限り、今までにこのような展開の映画は見たことがないし、聞いたこともない。映画に新しいジャンルを確立したと言っていいのではないだろうか?

一口コメント:サスペンスという枠に収まらない新しい感覚の作品。

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