ソウ/SAW
採点:★★★★★★★★☆☆
2007年10月27日(DVD)
主演:ケイリー・エルウィス、リー・ワネル
監督:ジェームス・ワン

アメリカではハロウィンの時期に公開される定番シリーズの第1作。現在第4弾まで製作されている。

目が覚めると、部屋の中央に死体。部屋の対角線上の隅には足を鎖で繋がれた二人。
「君たちは死にかけている」、「6時までに相手を殺すか、自分が死ぬか」。
犯人が残していったものは、テープとプレーヤー、何かの鍵、2本のノコギリ、一発の弾丸、タバコ2本、そして着信専用の携帯電話。二人は犯人が部屋に残したヒントを手掛かりに脱出しようともがき始める・・・。

上手い!
いや、本当に上手い。何が上手いのか?と聞かれたら、ほとんど全てが上手いと答えたい。物語冒頭の観客の引き込み方だったり、カメラ・アングルだったり、時間軸をわざとずらした展開だったり、とにかく上手いのだ!
例えば、閉ざされた空間、時間的制限(タイムリミット)、そして危機を脱出するために与えられたアイテム。その1つ1つが本当によく練られていて、最初から最後までまったく中だるみがない。

よく見ていると一歩先まで映画の展開が読めるのだが、実は"読んでいる"のではなく、作り手によって、上手く"読まされている"だけだということに最後に気づかされる。謎解きのヒントが映画全編にわたって、あちこちにばらまかれていて、その1つ1つが登場するたびに謎を解いている気になるのだが、実は誘導されているだけ。しかもミステリーやサスペンスによくあるミス・リーディングではなく、きちんと最後の結末に向かっている意味のある正しいリーディングだから、余計にそのすごさがわかる。

しかもただ単なるミステリー・サスペンスとして、謎を解いて終わりというのではなく、かなり深く考えさせられるテーマがあるのも、他のミステリー・サスペンスものとは一線を画している。
たった一人、このゲームから脱出した元ドラッグ依存者生存者が劇中で話す「今では加害者に感謝している(この犯人のおかげで更生できた)」といった台詞に、妙に考えさせられたりもするのだ。

とはいえ、欠点がないわけでもない。作中で2人が監禁されている状況が、それ以前に犯人が行っていたゲーム内容とは大きく異なる点。
他のゲームは常にチャレンジャーが1人であり、犯人の関わり方も同一であったのに対し、この作品で進行形で描かれているゲームだけはこの2点において、他のゲームとの統一性が見当たらない。
もう1つ大きな欠点がある。それはこの映画のオープニングとエンディングを比較してみるとわかりやすいのだが、ネタバレになるので、一言だけ。
2人が目覚めた順番。
なんて感じで欠点があるにはあるのだが、その欠点を補って余り得るだけのパワーを持った作品です。

続編が作られても納得がいく、現時点でシリーズ4作目までが作られたシリーズの1作目として、満足のいく内容だった。

一口コメント:
非常に"上手い"密室サスペンスです。

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