ソードフィッシュ |
"やられた!!"
それがこの映画を観終わった直後の感想。脚本が本当に素晴らしい。よくもまぁ、ここまでミスディレクションを織り込んだものだと感心してしまう。
元世界一のハッカー、スタンリーはFBIのシステムに侵入し、システムを破壊。それが原因で逮捕され、パソコンに近づくことを禁止され、妻と離婚し、愛する一人娘に会うことも許されなかった。そこにジンジャーと名乗る女性が来て、コンピューター回線で巨額の金を奪うのに協力して欲しいと依頼する。ジンジャーのボスで、元スパイで天才的犯罪者のガブリエルは「最高のハッカーは60分で破るが、俺は60秒で破る男を探している」と銃を押し付け、スタンリーはやむを得ず依頼を引き受ける。
スタンリーにとって、ガブリエルもジンジャーも正体不明だったが、ある時ジンジャーが麻薬捜査官であることを知る。スタンリーはシステム侵入のワーム(ウィルスのようなもの)を完成させたが、ガブリエルは装甲車とバスで銀行に突入し、人質を取り立てこもる。人質には爆弾をつけさせて・・・。
警察は人質の1人を助け出そうとして、爆弾が爆発してしまう。それによって警察はガブリエルの出した"飛行機を用意しろ"という要求を飲む。その爆発騒ぎの時、銀行の中ではガブリエルがジンジャーを射殺してしまう。しかし、スタンリーは人質と一緒にバスに乗せられ、ガブリエルと一緒に空港へ向かう。しかしバスは空港直前で進路を変え・・・。
ここから先は実際に見て、"やられた"と思ってください。
この映画は「L.A.Confidential」のような最後まで謎の解けない展開と、「フェイス・オフ」のような斬新なアクション・シーンが合わさっている、と言えば、わかってもらえるだろうか?全編に散りばめられた、ミスディレクションの数々、手に汗握るカー・チェイス、"そうきたか!"と、うなってしまうガブリエルの逃亡シーン。
映像的にも「マトリックス」の"ブレットタイム"(弾丸を避けるシーン)を更に進化した爆発シーン、実写なのかCGなのかまったく区別できないほど精巧なCG、と目を見張るものがある。
そして人物描写もうまい。アクション大作だと人物描写はおろそかになりがちだが、この作品はミスディレクションを招くため、非常にうまい人物描写がされている。元ハッカーだったスタンリーは仮釈放後、コンピューターには近づかないと誓いを立て、ガブリエルに脅された時も、拒否していたが、強引に丸め込まれて、ハッキングするシーンではとても活き活きと描かれている。
さらにガブリエルとジンジャーの関係も"善"なのか"悪"なのか微妙なラインで描かれていて、最後まで2人の関係が曖昧な感じで描かれていて、それがこの映画の醍醐味であるミスディレクションにつながっている。
そしてエンド・ロールの流れる直前にもガブリエルの徹底した用意周到さを垣間見た。
観ている途中から次は何が起きるんだ?その次は?と、どんどん引き込まれていった。いわゆる「謎解き」映画とは一線をおきながら、謎解き映画の面白みは残っている。そこにアクション映画の派手さを織り込んでいながらも、人物描写も巧みという素晴らしい作品。おそらくアカデミー作品賞、そして脚本賞の候補になるのではないだろうか?