亡国のイージス
採点:★★★★★☆☆☆☆☆
2005年8月13日(映画館)
主演:真田 広之、寺尾 聰、佐藤 浩市、中井 貴一
監督:阪本 順治

日本アカデミー賞最優秀主演男優賞獲得俳優4人がキャスティングされ、原作もベストセラーということで、見に行った作品。

東京湾沖で訓練航海中のイージス護衛艦"いそかぜ"に、米軍基地から奪われ、わずか1リットルで東京を廃墟に変える威力を持った化学兵器"グソー"が、ある国の特殊工作員によって持ち込まれた。
首謀者は、対日工作員ヨンファ。艦の先任伍長である仙石は、新しく船に乗り込んだ如月が特殊工作員ではないか、と目星をつける。
その直後、副長・宮津から総員離艦命令が発動され、部下と共に艦を離れる仙石。離艦の直前に艦に戻った仙石は、ヨンファと共に日本国家に対して反旗を翻したのは、副長の宮津であることを知る。そして宮津は無線機を手に取る。
「現在、本艦の全ミサイルの照準は東京首都圏内に設定されている。その弾頭は通常に非ず」。
防衛庁情報局"DAIS"内事本部長・渥美らが対策を練るが、最新鋭の防衛システムを持つ"いそかぜ"にを攻略する術は見つからない。政府に対する宮津の要求への返答期限は刻々と迫ってくる。
すべてはある防衛大生の論文「亡国のイージス」から始まっていた―――。

原作を読んだわけではないのだが、おそらく原作はとても面白いはずだ。たいていの小説を原作とする映画は原作のほうが面白いといわれるが、この作品は間違いなく、そうだと思われる。
というのは、300ページ以上の原作を2時間の映画におさめるというのは困難なため、原作の一部は省略、あるいは映画用に改定される。今作品の中で改定されたのは、多分、この一連の事件に関する家族関係。それは副長である宮津の家族。この家族の話がこの作品の物語の流れの中核にあるにも関わらず、この家族のバック・グランドがほとんど描かれておらず、なぜこの事件が起きたのか?という理由が薄い。
海上自衛隊、航空自衛隊の全面協力(「戦国自衛隊1549」最近映画やTVなどで"自衛隊全面協力"というコピーをよく見るような気がするが・・・)のおかげで、リアリティーの高い映像が撮れるようになった。だが、映像のクオリティーにこだわった分、サスペンスの要素の部分がおざなりになってしまっているような気がする・・・。

原作はそのサスペンス要素=宮津家族のバック・グランドがページを割いてしっかりと描かれているであろうから、原作を読んでみたいという気にはさせられた。

キャスティングについては、日本アカデミー賞最優秀主演男優受賞者4人を集めたというだけでも、評価に値するが、その4人の配役も見事だ。ヨンファ役の中井貴一はもちろんだが、DAISの渥美役の佐藤浩市も見事だ。知的な仕事を受け持ちながら、艦の乗組員のことを案ずる姿勢には共感できた。そして今や世界が注目するようになった真田広之。彼の演技は本当に素晴らしい。どの作品、どの役をやらせても本当にぴったりとはまる。「ラスト・サムライ」において、脇役である真田広之の演技が上手すぎて、彼のシーンがかなりの量、カットされたという噂も真実味が高い。

作品としてのレベルはさておき、キャスティングだけを見れば、本年度の日本アカデミー賞総なめといえる充実したキャストの競演をみるだけでも価値はあるかもしれません。

一口コメント:
見終わった後に不満が残るものの、原作を読んでみたいと思わせてくれる作品です。

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