名探偵コナン 探偵たちの鎮魂歌 |
毎年作られている映画版も遂に10作目になり、10周年ということで、これまでの主要キャラクターが総出演している。
今回の事件は、横浜の遊園地の隣に建つ超豪華ホテルにいつものコナン一行(コナン、蘭、毛利小五郎、灰原、そして少年探偵団)が招待されたところから始まり、遊園地のフリーパスと称した爆弾をつけるところから始まる。そんなことを知らない蘭ひきいる子供たちが遊園地で遊んでいる間に、コナンと小五郎が謎解きに挑む。しかも全員につけられた爆弾は夜10時に爆発するという時間制限付の条件、かつどんな事件の謎解きなのかすら、教えられない状況からスタートするのだ。
しかし、コナンと小五郎以外にも同じ条件で謎解きに参加している探偵がいた。西の名探偵、服部平次と警視総監の父を持つ高校生探偵、白馬探の2人だ。さらに、謎を解いていくうちに怪盗キッドが事件に絡んでくる。
一方、遊園地で遊ぶ子供たちの中で唯一、事情を知っている灰原はいろいろな手をつかって、他の子供たちを危険から遠ざけていくが、偶然に別の事件に巻き込まれてしまう!!
コナンたちは解くべき事件をようやく割り出したが、バイクに乗った謎の2人組に追跡され、遂に発砲されてしまう!!―――
今作は原点回帰とでも言うのか、前二作の飛行機や客船のような派手なアクションはなく、推理中心のストーリーとなっている。とはいえ、「テーマパークの外に出るとパスが爆発する」=「一部、敷地外を走る売り物のジェットコースターに乗ると死ぬ」という制約があるため、それなりの緊張感は保たれている。
そのテーマパーク側でこの事実を知っている唯一の人物が灰原。いつもはしらっとした雰囲気が売りの彼女が、ジェットコースターに乗りたがる皆を引き止めるために、わざと仮病で倒れ、「そばにいて・・・」と言っているシーンは笑える。
また高木刑事&佐藤刑事の園内デートという設定だけでも面白かったが、そこに目暮警部がやってくるというのも面白いし、「オレの言うことが信用できないのか!?」という小五郎に対し、「できない」と返すコナンの駆け引きも笑える。
今作はお笑いという点においても10周年記念と言える。が、そういう意味では阿笠博士の駄洒落クイズがなかったのは残念といえば、残念だが、代わりに蘭がそれを行っているので良しとしよう。
さて、毎作、毎作、気になる点はあるのだが、今回一つだけ気になっているのが、コナンと平次で与えられたヒントに差があったこと。ヒントが違っているのであれば、何の問題もないのだが、コナンに与えられたヒントがAだとすると、平次にはA+αが与えられているというのが気になった。何故コナンには"α"を与えなかったのか?その答えは最後の最後まで解き明かされることはなく、終わってしまった。だったら、最初からコナンにも同じヒントを与えるべきじゃなかったのか?コナンと平次に差を与えたことに対しては、何の意味もないわけだし・・・。
ところで今回の作品は、冒頭にも書いたように10周年記念ということで、今までの主要なキャラクターが総出演といった感じなのだが、その中でも一際輝いていたのが、やはり怪盗キッド。
まずは謎解きが始まってすぐの登場シーン。大空をかけるいつもの姿で観客を魅了する。その後しばらくは登場しないのだが、終盤の冒頭で、もう1人の犯人とも言うべき人物との対峙シーンでも華麗に振る舞い、その人物をかるくいなしてしまう。
はっきり言って、キッドとしての登場シーンの数は少ないが、得意の変装で別キャラとして登場するシーンが多く、しかも途中までキッドが変装していることに気づかなかったことがまた、ポイントを上げている。
作品の中で、はっきりとキッドが変装していたのが誰か?という名言はしないので、気づかない人は、最後まで気づかないかもしれないが、園子がなくしたIDがペンキに汚れていたり、そして最後のコナンの台詞だったり(他にも服部の携帯をスッたり、川に落ちたコナンを救ったり・・・)と伏線はいくつもある。
そして最後の最後の登場もまたにくいくらいな演出での登場となる。
それと、もう1つ誉めたい点がある。いつも映画になると必ずといって良いほど、蘭が「新一・・・」とつぶやき、コナンが「ラーン!」と叫ぶシーンがあったのだが、今回はそれをしなかった点。
冷静に考えると、今回の事件で危機を危機として認識していたのはコナン&小五郎&服部サイドだけだったということもあるか?
それと小五郎と英理の会話も良かった。ちょっと弱音を吐く小五郎に、それをやんわり受け止め、叱るでもなく上手に気持を上向かせる英理。離婚したとはいえ、かつては夫婦だった2人の大人の愛情がちらっと見えた、隠れた名場面だと言えるかもしれませんね。