G A N T Z |
渡米前から「週刊ヤングジャンプ」に連載していて、個人的には「DEATH NOTE」と並んでここ10年でトップ2の双璧をなしていた漫画。その実写化ということで制作発表の段階からとても期待していた作品。
日本に先駆けてのワールド・プレミアで、主演2人のほぼ真後ろの席で見てきました。
就職活動中の大学生・玄野と、彼の幼なじみで正義感の強い加藤は、電車にひかれてしまう。しかし、次の瞬間、2人は見知らぬマンションのある部屋に転送されていた。そこには黒い謎の球体"GANTZ"があり、他にも同じように死んだはずの人間が転送されており、星人と呼ばれる敵を殺すミッションを課される。
何とか最初のミッションを果たした2人は、星人を倒すことで得点を獲得できることを知る。さらに得点を重ね、100点になった時、このGANTZの世界から解放されるか、あるいはGANTZの世界で死んだ人間の誰か1人を生き返らせることができる、という100点メニューの存在を知る。
そして現実世界に戻った2人だったが、ある夜、再びGANTZに召喚され、別のミッションを与えられる―――。
主演の2人が日本でのプレミアを終えて、その日のうちにハリウッドでワールド・プレミアを行うという日本映画界初の試み。上映前・上映後の舞台挨拶と質疑応答を行い、上映中は自分の目の前の席に座り、一緒に観賞。
というのも今回上映されたのが字幕版ではなく、吹替え版だったから。おそらく2人も初めて見たのではないだろうか?上映中の観客の反応をじかに感じて2人とも満足していた様子。上映後の質疑応答でも吹替え版と客の反応についてのコメントが非常に多かった。
さて肝心の作品についてだが、原作の売りでもあるエログロさを適度に抑えて見事に大衆向けの作品に仕上がっている。ストーリーはそこまで端折っておらず、かなり原作に忠実で、内臓ぶちまけやモザイクをかけなければいけないエロシーンがない点を除けば、描写も忠実。
特にガンツ・スーツは見た目といい、質感といい、見事の一言に尽きる。そして何よりCGが凄い。この漫画が実写化が難しいと言われていた最大の理由とも言える星人の異様な顔、動く仏像や大仏・千手観音など違和感なく実写になっていた。中でも田中星人はよく出来ていた。
そしてCGといって忘れてはいけないのが、転送シーン。実写化が決まった時に真っ先に思い浮かんだのが、この転送シーンをどうやって表現するのか?ということ。こちらも違和感なく描かれており、原作同様、最初に全裸の転送シーンを持ってきて、観客を一気にGANTZの世界観に引き込むのは上手い。
そして個人的にもっとも驚いたCGはガンツ・スーツの筋力強化シーン。通常は体に密着しているスーツが体に危機が及んだり、相手を攻撃する際に筋肉隆々になるその筋肉の繊細な動きをあそこまで忠実に描けるとは、「Space Battleship ヤマト」といい、日本映画のCGレベルもかなりのレベルに達しているのではないだろうか?
そして原作同様、コミカルかつシニカルな笑いも上手く描かれていて、劇場のアメリカ人は爆笑の連続だった。例えば、玄野が地下鉄のホームで女性の裸の広告を見た直後に、全裸女性の転送シーンを持ってきて、転送というあり得ない状況に驚くよりも先に女性の裸にニヤつく玄野という描写だったり(このあたりの二宮の表情の演技はさすが)、ミッション終了後のGANTZの採点で"~を見過ぎ"という理由だったり、この"見過ぎ"を笑いのテンドンよろしく複数回繰り返したり。
中でも岸本が田中星人の急所に金的をお見舞いしたした直後に星人の顔のカットを入れて笑いを取りにいったシーンはお見事。
そして舞台設定が死んだはずの人間が異星人と戦うという非現実的な設定でありながら、人物描写は非常に現実的なところがこの作品に大きなリアル感を持たせている。
ハリウッド映画ならこんな非現実な設定であれば、みんなで助け合いながら一致団結して敵を倒す!といった展開になりがちだが、この作品はそんな野暮なことはしない。あくまでも個人個人がそれぞれの目的のためにミッションに挑み、別々に死んでいく。仲間を助けるために全員が同じ目的に向かって動くというのは前半はまったく描かれない。原作がそうだから当然といえば当然なのだが、エログロを緩和しているので、こういった人間関係も緩和されるのかと心配だったが、そこは原作そのまま。
こういった人間関係の描き方が今の日本の世相を如実に現しているようで、そこの部分に関してはアメリカ人はどう感じたのだろうか?
逆に原作を上手く再現できていなかった部分を述べてみたい。これは日本映画全体に言えることだが、1つ1つのシーンで無駄に間が長いシーンがある。その典型例が、岸本が千手観音との戦いに敗れた直後の加藤の描写。すぐ背後に敵がいるにもかかわらず加藤の心理を描くことに重きを置き、ストーリー展開のテンポを捨ててしまっている。二者択一なので、どちらかを選ばなければいけないのだが、あの場合はテンポを取り、加藤の心理描写は後回しにすべきだった。他にもいくつか同じようなシーンがあり、せっかく作り上げたGANTZの世界観、そこに流れるテンポを壊しかねない状況もあった。
結論としては、上述したように原作のグロさは半減しているが、大衆向け映画という観点から考えればそれで正解だったのではないだろうか?原作に忠実なグロさにしてしまうと、レイティングが厳しくなり高校生は見れなくなってしまい、原作のファンやキャスト目当ての大半の客層が映画を見れないという最悪の状況になってしまう。映画は芸術だけでなくビジネスでもあるという観点から考えればこの決断は正解のはず。
後編は映画オリジナルの展開になるらしいが、予告を見る限り原作のあるミッションを中心に展開していく感じだ。後編も是非アメリカでも日本と同時公開して欲しい。