GANTZ: PERFECT ANSWER |
前編を日米同時公開のアメリカでの主役2人と共に鑑賞して、その舞台挨拶で後編もアメリカで公開したい!と言っていた言葉を当てにしないでいたが、本当に後編はアメリカで公開されることのないまま日本版DVDが発売された・・・。
黒い謎の球体"GANTZ"に召還され、"星人"と呼ばれる存在との戦いを続けてきた玄野。その戦いの最中で死んでしまった親友・加藤を100点メニューで生き返らせようと戦い続けていた。
過去に100点を取り、GANTZから解放されていたメンバーたちも復活し、得点を積み重ね、100点まで後一歩のところまで来た。そんな時、目の前に死んだはずの加藤が玄野の目の前に現れる。さらに恋人の多恵が新しいGANTZのターゲットに選ばれてしまう―――!!
"PERFECT ANSWER"という副題がつけられた完結編だったが、これのどこが"パーフェクトな回答"なのだろう?見終わった直後の感想がこれ。
この終わり方にするなら前後編に分けず、1本の作品にしたほうが良かったんじゃないだろうか?40億円の制作費を分割せずに1本に集中させて作れば、それこそハリウッド大作に引けを取らない完成度の高い1本の映画が完成したと思うのだが、2本に分けてしまったことで、前編はそれなりのクオリティを保っていたが、後編はかなり粗が目立つようになってしまった。
前編はわりと原作に忠実な進行のため脚本もしっかりとしており、非人間型の星人のビジュアルにも金がかかっているのが伝わってきたが、後編は原作の一部の設定を抽出してはいるものの(多恵がターゲットになったり、玄野が2人存在する設定を偽加藤に変更したり、GANTZメンバーが他にもいる設定だったり・・・)、基本的にはオリジナルの展開になっており、脚本の詰めが甘く、星人もお金が不足したのか、人型の敵のみになり、ガンツ・スーツを着た超人間vs星人ではなく、超人間vs超人間になってしまっている。
また前編の最後で意味深に登場した山田孝之扮する刑事が、彼がいなくても物語りは成り立ってしまう設定だった上に、最終的には死んでしまう(どうせなら最初に死んでGANTZメンバーになれば面白かったのに・・・)。この刑事を描いている時間を他の星人との戦いに置き換えてもらったほうが物語としては面白かった。
そもそも構成もまずい。この手のSF大作というのは冒頭に作品世界に引き込むためのド派手なシーンを持ってくるのが常套手段なのだが、この作品はドラマのようなスローな展開が続き、ようやく戦いが始まったかと思えば、既に玄野の点数は90点を超えている・・・。これであれば、冒頭を星人たちとの戦いから初めて、いろんなパターンの星人と戦う度に玄野の点数がUPしていく描写でも入れておけば良かったのに・・・と思わずにいられない(それこそ山田孝之演じる刑事の無駄なシーンをカットして・・・)。
他にも多くの矛盾点がある。
-命さえかけて生き返らせようとしていた加藤が目の前に現れたのに、呼び止めることなくあっさり帰らせてしまう玄野
-加藤を生き返らせた直後に、「女房を生き返らせたい」と意味不明な発言をする鈴木
-まるで加藤が帰ってくる日がわかっていたかのようにケーキを用意している弟(なぜ腐ってしまう食べ物を選択したんだ?)
-最後に玄野が加藤に向けて放った銃撃が、何故か加藤をスルーして星人に命中
-ラスボスともいうべき敵キャラが姿を変えて現れるが、姿を変えないほうが明らかに強かったのに、なぜ姿を変えたのか?説明もない・・・
などなど、脚本の突っ込みどころは多々あるが、一番の問題はこの作品の核とも言うべきGANTZとは何ぞや?が不明な点。誰が何の目的でGANTZを作ったのか?そしてGANTZの敵である星人とは何者なのか?。副題がPERFECT ANSWERと言っておきながら、何の答えにもなってない。
脚本としての結論:原作終了まで待ってから原作に忠実な映画にして欲しかった。これに尽きる。
脚本について悪い点ばかりを書いてきたが、演出面においては良い点も多かった。
中でも地下鉄での戦闘シーンは日本映画史上に残る名シーンだ。地下鉄の電車内という閉鎖された狭い空間を用意したことで、GANTZチームが一般人を殺さないために銃ではなく、刀を用いて敵と戦う必要性が出てきたし、その狭い空間+走る車内ということで殺陣やワイヤー・アクションが冴える。
また割れた窓を通して走りすぎる車両を外部から描いたショットも、良い意味で日本映画らしからぬ素晴らしい絵だった。
そして一度吹き飛ばされた走行中の電車に駅のホームを利用して、ダッシュして窓ガラスを突き破って戻るシーンや、刀で切断された車両から走り続ける元の車両へと大ジャンプするシーンなど、ガンツ・スーツの能力の見せ方は今までの日本映画では見たことのない最高級の演出だった。特に走行中の車両から吹き飛ばされるシーンをスロー・モーションで見せ、かつ、その車両に彼女がいるという演出は玄野の戦う理由を見せるための演出としてはこれ以上ないほど見事の一言に尽きる。
また加藤2人が相対する戦闘シーンもなかなか凄い。殺陣や演出は地下鉄のシーンに比べるとレベルは下がる(一般人もいない外なので、刀で戦う必然性はなく、むしろ持っている銃を使うべき・・・)が、その合成技術は日本映画史上かなりハイレベルなもののはず。
ドラマなどのゆったりしたシーンで、そっくりさんとか1人2役という設定で同一人物が同じ画面上に現れるのであれば、ブルー・スクリーンなり、画面を分割して撮影するなどでそこまで難しくはないのだろうが、激しく動き合う人物を同じ俳優が演じるのは技術的にはかなり難しいのではないか?
作品全体としての結論:演出面はかなりハイレベルだったが、脚本が足を引っ張った形になっているので、日本テレビではなく、「ライアーゲーム:ザ・ファイナルステージ」で素晴らしい脚本を元にハイレベルなエンターテインメント作品を作り上げたフジテレビに制作をしてもらっていればなぁ・・・、というのが最終的な感想といったところだ。