南 極 物 語
採点:★★★★★★★☆☆☆
2007年12月2日(映画館)
主演:高倉 健 、渡瀬 恒彦
監督:蔵原 惟繕

ロサンゼルスのダウンタウンに新しくオープンした劇場のオープニング・イベントとして無料で上映していたので見に行った作品。

昭和33年2月、南極昭和基地での越冬隊の活動は、例年にない悪天候のため中止になり、犬係の潮田と越智の必死の要請も虚しく、越冬隊と行動を共にした15匹のカラフト犬は極寒の地に置き去りとなってしまう……。 1958年(昭和33年)2月、南極昭和基地での越冬生活をしていた越冬隊と15匹の樺太犬。南極最高峰の山へと登頂するなど、いろいろな思い出を作っていた先遣隊だったが、悪天候の為に二度目の越冬は断念し、帰途に着くことになるのだが、その過程で樺太犬15匹を置き去りにせざるを得ない状況になってしまう。
鎖につながれたままの状態で、餌もなく、置き去りにされてしまった15匹の犬たち。果たしてこの犬たちの運命は―――?

1983年公開で、「踊る大捜査線2」が記録を塗り替えるまで実写版日本映画歴代1位だった作品(現在でも2位、ちなみに3位が「踊る大捜査線」パート1)。
当時自分が5歳だったので、置き去りにされた犬が過酷な状況を乗り切り、生き残った2匹だけが時間を経て、再会するという内容以外ほとんど忘れていた。それもあってか、はたまた、こんな歴史的作品を映画館で、しかもロサンゼルスで見れるというだけで、とても興奮した状態で鑑賞することになった。

何がすごいって、映像がすごい。CGなんて言葉どころか、コンピュータという言葉すら、まだ一般の人には馴染みのなかった時代に、南極の映像を実写で具現化したのだから・・・。しかもスタジオやセットではなく、実際に南極で撮影したというのだから、すごい!一体制作費はいくらだったのだろうか?
さらにオーロラの映像も出てくる。映画史上初めてオーロラを取り込んだ映画らしい。
そして一体、どうやって撮影したんだ?という映像がそこかしこに登場するので、それを見ているだけでも十分楽しめる。例えば、犬が途中で氷の崖から転落していくのだが、それを遠方から落ちていく全体像を撮っているシーン。これはもうCGでなければ、実際に犬を落とすしか撮れない。しかも落ちたら絶対に助からないような場所に落としているのだ!本当、どうやって撮影したんだ!?

そして役者もすごい。高倉健はもちろんだが、夏目雅子が着物姿、かつ京都弁で出演しているだけで、この作品の点数は高くなる。なんて冗談はさておき、役者がすごいと言っても人間ではなく、犬たちのことである。
オーロラにおびえる犬の表情、仲間が危機に瀕した時の心配そうな顔なんて、もうオスカー俳優顔負けの迫真の演技である。

そんな犬たちの中でもリーダー格のリキにはやられた。集団でアザラシを襲う術を教え、飢えと戦わなければいけない仲間たちをたくましく引っ張っていく姿は雄々しくあり、とてつもなく格好良いのだ。そして最後、シャチに襲われそうになったタロとジロを身を挺して救い、しかもそこでは死なないというのが、これまた格好良い。普通なら身を挺してかばって、代わりに捕らえられてしまうところだが、そこを切り抜けたリキ。本当格好良いです。自分がメス犬なら、間違いなく惚れてます(笑)

そしてこの映画のすごいところは、語り手を使うことでドキュメンタリー的な映画にしていることである。本来なら、登場人物がいるのだから、その登場人物の視点で物語を進めていくのが常だが、そこをドキュメンタリーの方法にしたことで、犬たちの生き様というか、死に様を淡々と描いていくことに成功している。ドラマチックに描くのではなく、あくまでも淡々と描くことで、犬たちの無念さ、そして自然の恐怖というものが伝わってくる。
そんな大自然の中で、ある一匹の犬が氷に閉ざされた餌を取る為に、地面を掘っていた最中に氷が割れ、その狭間に足を取られ、海へと沈んでいく時の恐怖。それを見守ることしかできない仲間達の必死の叫び声。ある意味、とても残酷な描写であるが、それこそが自然だということを痛烈なまでに教えてくれる。

そしてこの作品がすごいところがもう1つある。それが音楽担当があのヴァンゲリスだということ。「炎のランナー」の曲といえば、映画通の人なら誰もが知っているだろうし、そうでなくても2002年W杯のテーマソングの作曲者だと言えばわかるだろうか?
そんな大作曲家が東洋の果ての、何の所縁もない異国の地の映画音楽を担当しているのだから、すごいめぐり合わせである。

何はともあれ、この作品を劇場で見れただけで満足な状態で書いたレビューなので、いつもとはややずれたレビューになってしまっているかもしれませんが、あしからず・・・。

一口コメント:
この作品を映画館、しかもロサンゼルスの映画館で見れたことが奇跡です!

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