ラ フ/ROUGH
採点:★★★★☆☆☆☆☆☆
2007年4月28日(DVD)
主演:速水 もこみち、長澤 まさみ
監督:大谷 健太郎
原作:あだち 充

タッチ」に続く、あだち充原作、長澤まさみ主演ということで、話題を集めていた作品。

二ノ宮亜美と大和圭介は、それぞれ和菓子屋の家に生まれ、商売敵として生きてきた。しかし、同じ高校に入学した二人は、最初はいがみ合っていたが、やがて打ち解け、惹かれ合っていく。だが亜美には、競泳全日本チャンピョンの仲西というお兄ちゃん的な幼馴染がいた。仲西は圭介の憧れであり、目標の選手でもあった。
そんな折、仲西が再起不能といわれるほどの怪我を負ってしまい、目標を失ってしまった圭介はやる気を失ってしまう―――。

どんな映画であれ、映画の冒頭というのは、その世界感に入り込むための導入部分が存在する。しかし、どんなに長くても最初の30分が限度である。その意味において、この映画は導入が長すぎるというか、最後まで導入のまま終わったといっても過言ではない。
漫画を原作にしているとはいえ、画面の絵としては、ミニスカートの女子高生が登場したりしていて、完全に現代の物語なはずなのに、カセットテープのウォークマンが登場したり、携帯電話ではなく、公衆電話が登場したりと、まず時代がいつの設定なのか?というのが一向にわからない。昔なら昔、今なら今と明確に時代設定を設けてほしかった。

とはいえ、登場人物の心理的描写というのは原作があるだけに、なかなか奥深いものがある・・・というか、奥深すぎて伝わってこない。
例えば、
おぼれた亜美を救うために先に飛び込んだにも関わらず、後から飛び込んだ仲西に先を越された劣等感、
小さい頃からずっと憧れだったライバルと勝負の時、突然目の前からいなくなったライバル=目標に対する喪失感、
愛する人に負い目を感じさせないために、再起も危ぶまれる試練を乗り越え、正面からライバルに立ち向かう男らしさ、
たとえ恋のライバルであっても、自分の道をあきらめようとする姿を見ていられない女の友情、
ほかにも亜美と圭介が寮の“一日デート行事”で出かけたり、ハシゴを使ってのベランダシーン、カセットテープのメッセージなど、原作では相当面白かったと思われるシーンがいくつかあるのだが、どれもそこにいたるまでの過程がまったく描かれずに次のシーンに行ってしまうので、共感しにくい。
具体的には、圭介のルームメートがいきなり退学し、これから悲しみに暮れるのか?・・・と思いきや、亜美に高飛び込みを教えてくれ!と言っていて、高飛び込みを教えるのかと思いきや、亜美との思い出話になったり・・・。

中でも圭介に思いを寄せる女の子の役は、その役のバックグランドがまったく持って描かれておらず、心理的になぜ好きになったのか?というのが全然わからない。
それ以上にまずいのが、亜美が圭介を好きになっていく過程が描かれていない点。ある地点で10だった好感度が、次第に20、30・・・と増えていくのが普通なのだが、この作品に限って言えば、10がいきなり100になっていて、「えっ?いつの間に好きになったの?」と驚かずにはいられないくらい、いきなり好きになっている。一目惚れ以上に速攻で好きになっている。

それとひとつだけメチャクチャ許せないのが、事故のシーン。どう見ても、そんなにスピード出てなかったし、交差点でゆるいスピードで左折しようとしてたのに、なぜか横転して、車が大破してしまっている。大破するなら、するなりのスピードを出させるなり、方法があるだろう!しかも大破させたわりには、1年で日本のトップとして復帰できてしまう程度の怪我しか、負っていない。(申し訳程度に背中に傷があるだけ・・・、あの事故り方で背中に傷はできないし、普通顔だろ!?)
一体なんなんだ!?これはもう演出ミスとしか言いようがない。

そんな中、今回も一際光っていたのが、長澤まさみ。アイドルではない、普通の女優がここまで大胆に水着姿を披露するのは珍しい。普通なら、所属事務所からNGが出そうだが、そこはさすがに、「世界の中心で、愛をさけぶ」で、丸坊主を許した事務所である。
さて、その長澤まさみ、正直かなりプロポーションが良い(女性であっても驚くくらいではないだろうか?)。水着を着たシーンで、共演者である市川由衣と並ぶ場面が何度かあるのだが、グラビアアイドルの中でもトップを争う市川が、長澤の横に立った瞬間、一般人に見えてしまうくらい、長澤はすごいのだ。

ところで、今回の映画で見所があるとすれば、水中撮影だろうか?おそらく日本映画史上に残るくらいの綺麗な水中シーンが楽しめる。正確に言えば、水中シーンと水上シーンのバランスが良い。
特に、日本選手権のスタート時、飛び込んでしばらく水中を泳ぐ仲西と大和が、微妙なタイミングの差(日本チャンピオンと日本第2位の差)で水面に上がってくる際のカメラ・ワークは絶妙だし、随所に挟み込まれる水中の一人称カメラにも感動させられる。

ところで、寮で出されるけれど画面に出てこない夕食「ひつまぶし」とは、主にわが出身地である名古屋名物である。

一口コメント:
タッチ」で詰め込み過ぎたというのをまったく反省できていない、というか悪化している作品です。

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