サンダーアーム/龍兄虎弟 |
「プロジェクト・イーグル」の前編とも言うべき作品であり、冒頭の城壁から木に飛び移るシーンで落下し、頭蓋骨を骨折したことで、当時日本でもニュースになったほどの作品。
6つある"神の武器"の1つである宝剣を入手した"アジアの鷹"と呼ばれるトレジャー・ハンター、ジャッキーのもとに友人のアランが尋ねてくる。アランの恋人ローラが邪教徒によって誘拐されたので、助けてほしいと・・・。
ジャッキーは宝剣を骨董収集家の伯爵の娘メイに売ったばかりだったが、誘拐犯が要求する伯爵が持っている3種の武器を借り受け、ジャッキー、アラン、メイの3人はローラの救出に向かった。
三人は邪教集団の砦に進入することに成功し、ローラを救出することができたが、これは敵の仕組んだ罠だった!薬を注射され催眠術をかけられていたローラは、ジャッキーたちが持っていた神器を奪い、さらにアランを誘拐して消えてしまった!
こうしてジャッキーは再び、砦に向かうことになる。アラン、ローラを救い出し、盗まれた"神の武器"を再び取り戻すために―――!!
「ポリス・ストーリー」と「プロジェクトA2」というジャッキーの代表作とも言うべき2作品に挟まれた状態で公開されたために、あまり有名ではないのだが、この2作に挟まれている=肉体的には全盛期、なわけで、アクションシーンは冴えに冴える隠れた名作とも言える。
まずは、オープニングの宝剣を盗みだすシーン。円形のお鍋のような物体を転がし、その背後に自分を隠しながら、原住民から次々に飛んでくる鏃を交わし、城壁を軽がるとしたステップと次から次へと飛びこしたり、木の枝につかまって逃げていくシーンはさながら猿の動きである。そして最後は子供の頃にダンボールで斜面を滑った思い出がある人なら、誰もが懐かしく思える斜面滑り(当然角度はかなりの傾斜だが・・・)で締めくくられる。
このシーンの撮影中に頭蓋骨を骨折したため、このシーンの中でジャッキーの髪の長さがちょこちょこと変わっているが、そこはこれだけのアクションを見せてくれるジャッキーに目をつぶろう。
パッと見には、大したアクションをしていないように見えるかもしれないが、実はかなりのすごいことをしている。はっきり言って人間業ではない。もはや本当に猿だ。なぜそれが大したアクションに見えないかというと、ハリウッド映画ならば、1つ1つを大々的に見せるべきはずのアクションを何回、時には10回以上連続で行っていて、それを1つ1つ取り上げるのではなく、あくまでも一連の動作の中の1つとして取り上げているから。
そして次はカー・チェイス。実際は、逃げる車とそれを追うバイクと車のチェイス。カー・チェイスといえば、アクション映画の代名詞的なものであるが、現代のハリウッド映画のそれと比べても、見劣りどころか、それ以上に興奮させられるようなカー・チェイスに仕上がっている。しかもそれを30年近く前にやっているのだから、本当にすごい。さらにそれをCGなど一切使わずに、生身のスタントでやっているのだから、本当にもう、ジャッキー様様である。数多くあるアクション映画のカー・チェイス・シーンの中でも、3本指に入るほどのすばらしい出来栄えである。
そしてやはり肉弾戦。敵のアジトに乗り込み、1人で複数の人数を相手にするアクションだったり、その場にある小道具を武器に変えてしまういつものアクションだったり、そして文字通りの拳対拳の肉弾戦だったり・・・。
特に今回はアマゾネス4人組との戦いが面白い。最初は五分五分の戦いで、相手を殴り、
自分も殴られといった一進一退の戦いになるのだが、最終的には相手がハイヒールを履いているので、足場に隙間がある場所に誘い込んで、圧倒的な強さで叩きのめすのだ。
ジャッキー映画の特徴と言う意味では、良い意味で男女差別がないとも言える。この点において、今回はアマゾネス4人組がその良い例だ。女性でありながらも、ジャッキーの蹴りを食らって2階から落下したり、空中蹴りを食らったり・・・。相手が女でも容赦しないのが、ジャッキー・チェンだ!
ジャッキー映画には珍しい銃撃シーンも見れるのも、この映画の1つの特徴と言える。ローラを誘拐しに、ファッション・ショーの会場に邪教の集団が乗り込んでくるシーンで、マシンガンを乱射して警備員らを容赦なく殺しまくるのだ。ジャッキーよ、銃に対して、いかにして拳だけで戦うのか?なんて、不安に思ったりしないでもないが、それ以降のシーンではマシンガンはおろか拳銃さえ持ち出さず、肉弾戦しか挑んでこない。
これもジャッキー映画の定番とも言うべき、脚本のいい加減さを表している。脚本のいい加減さと言う意味では、"神の武器"を盗み出すべきはずなのに、結局人質となったアランとローラを救い出しただけで、"神の武器"に関してはまったく何の描写もされずに映画は終わってしまうあたりは、もう典型的なジャッキー映画である。
最後の結末(エピローグ)をキチンと描いていればもっと高評価にもなりえただけに残念である。
個人的には、「香港国際警察/NEW POLICE STORY 」、「ポリス・ストーリー」、そして「プロジェクトA」と並ぶジャッキー・チェンの代表作です。