ベッカムに恋して
採点:★★★★★★☆☆☆☆
2005年3月16日(DVD)
主演:バーミンダ・ナーグラ、キーラ・ナイトレイ
監督:グリンダ・チャーダ

パイレーツ・オブ・カリビアン」や「ラブ・アクチュアリー」のキーラ・ナイトレイが出演していて、テーマがサッカーということもあり、以前から見たいと思っていた作品。

ジェスは、サッカー、イングランド代表主将であるベッカムを大好きなインド系の女の子。地元の女子サッカー・チームのジュールズに誘われて、チームに入部。コーチのジョーにも見込まれ、本格的な練習を開始するが、インドの伝統を守る母にバレ、サッカーを禁止される。しかしジェスは隠れてサッカーを続けながら、ジュールズと友情を築いていく。彼女を心配したジョーは、ジェスの両親を説得しようとするが、若い頃にクリケットの選手だったジェスの父は、インド人という理由で差別されプレーができなかった苦い過去から反対を譲らなかった。
そんな中、チームはドイツ遠征へ。家族に嘘をついて参加したジェスは、ジョーと惹かれ合って唇を重ねそうになる。それを、ジョーに恋していたジュールズが目撃してしまう。これがきっかけで2人の友情は崩れてしまう。そしてジェスの姉の結婚式の日がやってくるが、それはアメリカのスカウトが見に来るはずの決勝戦の日と重なっていた―――。

とりあえず、サッカー映画という宣伝に良い意味で騙された、というのが最初の感想。サッカーを通して、家族、友情、そして恋愛を描いた作品で、サッカーがメインではない。タイトルの原題は"Bend it like Beckham"(ベッカムのように曲げろ)となっていて、世界一綺麗な弧を描くベッカムのフリー・キックにちなんで名づけられているのだが、インドの伝統的習慣、古臭いしきたりを曲げてしまえ!という内容とひっかけてあるらしい。

とはいえ、サッカー・シーンはかなり描かれているので、サッカー選手としてそこを突っ込まないわけにはいかない。
まずは練習シーン。ジェスが自宅の庭で洗濯ロープに向かってボールを蹴るシーン。ボールは洗濯物の横を通り抜けていくが、このシーンだけは何があろうとも、ボールは綺麗な弧を描き、ロープの上を越えなければいけないシーンではないだろうか?それこそベッカムのフリー・キックのように。それに決勝戦における最後のフリーキックは、ボールを写さず、ボールの視点で見たカメラワークによって描いているが、他人をつかってでも(編集でどうにでもごまかせるのだから・・・)、綺麗な弧を描いてゴールに向かうシーンを描いてくれないと駄目でしょう!それにゴールキーパーのキャッチングもボールがないためなのか?、はたまた役者自信に演技力がないのか?あまりにも不自然なキャッチングに逆の意味で驚かされた。
それと主人公のまたぎフェイント。最初に見たときはおぉ、これは期待できるかもと思ったが、いつまでたってもそればかりで応用がないし、試合中はカメラワークのせいか、そのフェイントすら見えない状況で敵を抜いてしまうので、玄人としては情けない試合に見える。(監督に全盛期のKAZUのまたぎフェイントを見せてあげたい)
カメラワークといえば、監督にしろ、カメラマンにしろ、サッカーを知っている人間が撮っているのだろうか?自分が監督であれば、試合のシーンに関しては、サッカー中継のカメラマンを使うのだが、そうは見えなかったし、迫力あるシーンを撮ろうとしている(と思われる・・・?)ジュールズのヘディング・シュートのアップ・シーンは逆に彼女がサッカーできない人間だということを証明してしまっている。

サッカー的観点から批判ばかりしてきましたが、その他の点においてもいくつか批判を・・・。
まずはタイトル。"ベッカム"である必然性がまったくない!!時代の流れに沿って、このタイトルにしたと思われるが、上述したが、ベッカムのような綺麗な弧を描くボールが出てくるわけでもないし・・・。
そして、ジェスがジョーと恋に落ちる過程が描かれていないため、二人が突然キスをしそうになったように見え、二人の恋に感情移入できない。当然それを目撃し、怒るジュールズにも感情移入できない。

とはいえ、妹が道で男とキスしていたという噂だけで縁談が破談になってしまうという古臭い貞操観念や、男っぽい性格の娘の親友との言い争いを聞いて、レズビアンと誤解してしまう母親など、の描写は面白い。
親ということでいえば、娘が幸せになるには、自分たちが娘の進むべき道を案内してやるべきだ、という親の気持ちは、インド人ジェスの親もイギリス人ジュールズの親も同じ。その描き方は上手く、親の気持ちは感情移入しやすいかもしれない。
そんな親の反対を押し切り、自らの手で切り開いた未来を手にする二人は素晴らしいし、「自分が味わった後悔を娘にはさせたくない」と娘を応援するジェスの父親の姿には、胸打たれる。夢というものが性別、人種、そして文化的/宗教的背景などによって虐げられる社会というのが、世界中にあるのだということを教えてくれた、そういう意味ではこの映画は大きな役割を果たしている。

誰のための人生だ?

この映画のキーワードでもあり、自分自身のキーワードでもあるこの台詞を最後にしたいと思います。

一口コメント:
1986年W杯得点王の元イングランド代表の英雄ゲーリー・リネカーがカメオ出演しているのには驚きました。

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