夜宴/THE BANQUET 女帝(エンペラー) |
章子怡のヌード代役でも話題になった中国版「ハムレット」。ということで今回ようやくDVDで見ることができた。
紀元前春秋時代、とある国の皇子・無鸞は、幼なじみの婉と愛し合っていたが、婉は皇帝である父に嫁ぎ、皇后となる。一方の無鸞は放浪の旅に出て、遠く離れた僻地で暮らすようになる。
そんなある日、父が死んだことを知った無鸞。彼はその直後、暗殺集団に追われることになる。暗殺者の手を逃れ、宮廷に戻った彼は、父の弟・歴帝が父を殺害した犯人だと知る。
一方、無鸞の婚約者・青女は、自分は愛されていないと知りながらも、彼を想い続けていた。宮廷に戻った無鸞と再会し、喜ぶ青女だったが、そんな淡い恋心とは裏腹に、宮廷の中では陰謀が動き出していた―――。
映画そのものは「ラスト・エンペラー」を思わせる豪華なセットと、「HERO」よろしくの中国得意のワイヤー・アクションということで、一見派手で、すごいのだが、どうもしっくりこない。
それがストーリーのせいなのか、それとも演出の悪さなのか?はたまた英語字幕が難しかったからなのか?正直、よくわからない。
1つ確実なのは、ワイヤー・アクションによる格闘シーンというのは中国映画の得意とするところであり、さらにそこに色調のコントラストを盛り込み、チャン・ツィイーを主演に持ってくるあたりは、もうまさに!って感じなのだが、このパターンはもう見飽きた感が強い。考えてみれば、「グリーン・デスティニー」、「HERO」、「LOVERS」と既に3作も同じような系譜の映画が続いているわけだから、それも仕方がないかもしれない。
今作に関して言えば、アクション・シーンを少なめにし、ドラマの部分に重点を置いているので、今までのようにアクションを前面に押し出した作品というわけではないが、近作の中で見せるアクション・シーンは過去に何度も見た中国アクション映画のそれと比べて、特に目新しさを感じることはなかった。
だからといって、チャン・ツィイーを嫌いになったとか、飽きたというわけでは決してなく、彼女に関してだけいえば、この映画を見て良かったと思える。今までの出演作ではどことなく、影のある女性というか、どこか負い目を負いながらもひたすら純粋な役どころが多かったのだが、今作では影がないわけではないが、皇后というだけあって、きらびやかな生活を演じているし、見る人によっては憎むべき存在として映ってしまう、いわば悪役を演じていることもあって、彼女の新しい魅力を発見できた作品でもある。
女優といえば、もう1人のジョウ・シュン。おそらく彼女が演じた役は映画の中で最も無垢で純粋な存在であるのだが、純粋すぎるが故に、彼女がこの野心渦巻いている宮廷で生きて行くのはとても難しい状況の中で、報われないと知りながらも、愛する男をただただ献身的に支えるその健気の姿には胸を打たれる。
そしてダニエル・ウー演じた皇子は「香港国際警察/NEW POLICE STORY 」の少しトチ狂った演技の印象が強く、個人的にはシリアスな演技に感情移入できなかった。
ラストでちょっと意外な結末が用意されているのだが、このエンディングも人それぞれで意見がバラバラに分かれてしまう終わり方で、万人が納得できる終わり方ではないことは確実です。