香港国際警察/NEW POLICE STORY
採点:★★★★★★★★★☆
2004年12月20日(DVD)
主演:ジャッキー・チェン/成龍、ニコラス・ツェ
監督:ベニー・チャン

ポリス・ストーリー」の新バージョン。日本では2005年3月公開予定の作品をルームメートが香港からDVDを購入したので、一緒に見せてもらった作品。香港・中国では歴代新記録を樹立し、更に更新中だそうです。

ある日、5人組による銀行強盗事件が発生し、犯人逮捕に向かった多くの警察官が被害にあった。香港警察の警視正チェンは、犯人グループを逮捕するために精鋭9人を集めて彼らのアジトへ向かうが、そこで待っていたのは犯人グループの用意周到なゲームだった。そのゲームで自分以外の若手刑事を殺され、チェンはアルコールに溺れるようになってしまう。
1年後、アルコール中毒になってしまった彼の前にフランクという刑事が現れ、チェンを半ば強引に犯人グループの逮捕へと引き戻す。チェンは元同僚を訪ね、事件解決のきっかけとなる時計を入手し、犯人グループを追い詰めるが、あと少しのところで逃げられてしまう。
警察に戻ったチェンとフランクは犯人グループの情報を入手する。その情報とは5人全員が金持ちの家の子供で生きる目的を持たない集団だということ。そしてその首領が警察官僚の息子であるということ―――。
再び犯人グループを追跡する二人だったが、チェンの恋人が犯人の手によって爆弾を取り付けられてしまう。警察署を爆破してしまうことにはなったものの、かろうじて一命を取り留めた恋人だったが、チェンとフランクは牢屋へと入れられてしまう。フランクが警察官ではないことがわかったのだった(フランクの正体はぜひ見て確認してください)。同僚の手配によって何とか警察署を脱走した二人は犯人グループが次に狙いを定めた銀行へと詰め寄り、最後のバトルが始まる―――。

「素晴らしい!!」この一言に尽きる。脚本、キャラクター設定、アクション、すべてにおいて完璧な作品。
冒頭30分、犯人グループのアジトで、部下の若手警官が次々と捕らえられていき、最後に捕らえられた警官達が宙吊りにされた状況下でチェンが精神的に追い詰められていくシーン。若手警官を捕らえる方法がすごくうまくできているし、今の時代(=ゲーム全盛期とでも言えばいいだろうか?)をすごく反映している。更にチェンの精神的な苦痛を香港アクションを交えて描いているシーンは、チェンに対する感情移入という意味で本当に素晴らしい。犯人グループに対する憎悪と、部下に対して何もできないチェンの苦悩、この二つがとても伝わってきて、物語にぐいっと引き込まれてしまった。
それがオープニングとアジト潜入直後のアルコール中毒になった主人公のシーンに挟まれていることによって、より一層主人公の心情が伝わってきた。これは今までのジャッキー映画にはなかった(なくはないが、ここまで重くなかった)新しい一面でもある。

相棒となるフランク。最初にスクリーンに登場した瞬間は、日本人なら誰もが「あれっ?これって青島刑事?」と思わざるを得ない出で立ちで登場するため、最初からなじみがある。しかもキャラクター設定もよく似ていて、熱血刑事という言葉がピッタリと来る。そこに香港アクション俳優として必須ともいうべき、カンフー・アクションが入り、更にジャッキーのシリアスなキャラクター設定とは逆にコミカルなキャラクター設定になっており、青島刑事をよりコミカルにし、さらにカンフー・アクションを学ばせたらこうなるのではないか?というキャラクターに仕上がっている。そして最後に明かされる何故、刑事だと偽ってまでジャッキーを信望したのかという理由付けも今までのジャッキー映画にはなかった一面である。(今までのジャッキー映画って終わり方が唐突なのがほとんどで、この作品はすごく綺麗な終わり方だと言える)

そして敵キャラの5人組。全員が金持ちの家の子供で何不自由なく暮らしているが故に生まれるその日暮らしの怠惰な人生、そこに親の過度な期待が加わり、犯罪に手を出してしまう。しかも犯行目的が金ではなく、スリル感というところが非常に現代的であり、タイトルが「ポリス・ストーリー5」ではなく、"新"になっているのにも納得できるし、敵キャラの心理も理解できる。

ジャッキー映画の代名詞ともいえる派手なアクションもキチンと詰められている。まずは犯人グループによる高層ビルの壁面垂直滑り。高層ビルにある銀行に潜入するためにビルの屋上からロープを使って中階にある銀行へ窓を突き破って侵入するのだが、登山用ロープを使って垂直にビルの壁面を滑り降りていくシーンは「ルパン3世」か何かアニメを実写化したように美しい。そしてそれを今度は主役二人が実演する。犯人グループを追いかける中で犯人のうち二人が、この手法で逃亡を図ったため、チェンは手錠を、そしてフランクは折った鉄棒を使い、この垂直ロープ滑りを実施するのだ。
次に運転手が射殺され、香港の街中を暴走するバスに街灯から飛び乗り、止めるシーン。このシリーズのファンであれば、「パート1」の傘でぶら下がるシーンや、「パート2」でも見せた同じバスで迫り来る看板を次々に交わしていくシーンを思い出すかもしれない。というわけで、続編ならではの楽しみと派手なアクションを同時に楽しめる。
そして、最後。香港コンベンション・センターという場所での主演二人による宙吊り⇒落下シーン。これもまた有名な「パート1」のデパートでのポール滑りを彷彿とさせるシーンに仕上がっている。

全体を通してジャッキーのアクションはパート1と比べて減ってはいるが、その分を若手俳優がカバーしている。ここが「パート3」とは大きく異なる。ジャッキー自身も50歳を超えているとは思えないアクションを見せてくれるが、若手も育てて行こうという意思がそこかしこに見え隠れしていて(特にX-Gameの集会が開かれている高層ビルの屋上での、そういった意味でも"新"のタイトルはふさわしいのかもしれない。

そしてハリウッド進出したジャッキーの要素もキチンと入っている。まずは脚本そのものが結構ハリウッド・ベースな内容になっていて、今までのジャッキー映画とは異なり、アクションを前面に押し出しただけの映画ではなく、物語の中にアクションを織り交ぜたといった感じに仕上がっている。
そして何よりもバディ・ムービー。「パート3」もバディ・ムービーといえば、そうなのだが二人ともシリアスでコミカルな要素が少なかった。そこが今回はシリアスなチェンとコミカルなフランクということで、「ラッシュ・アワー」シリーズで培ったコメディ要素が非常に上手く表現されている。

一つだけ難点をつけるとすれば、貧困に喘ぐ子供が登場するシーンがあるのだが、その子供がどちらかというと、太っている点。食うものがなくて困っている子供がこんなに丸々としてていいのか?という疑問だけが残った。

とはいうものの、個人的にはジャッキー映画最高峰の作品だと思います。日本では「パート1」公開からちょうど20周年ということで、盛り上がるかと思います。日本ではブームに乗ってはみたものの、実はつまらないということが往々にしてありますが、昔からの香港版ジャッキー・ファンにとっても、ハリウッド版ジャッキー・ファンにとっても、この作品は期待を裏切らない作品だと思います。

一口コメント:
脚本、キャラクター設定、アクション、すべてにおいて完璧な作品。

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