ジ ュ ノ / J U N O
採点:★★★★★★☆☆☆☆
2008年1月27日(映画館)
主演:エレン・ペイジ
監督:ジェイソン・ライトマン

先日発表されたアカデミー賞作品賞にノミネートされた作品、そして周りの評判が良かったこともあり、見に行った作品。

16歳の女子高生のジュノは、妊娠をしてしまう。中絶を含め、いろいろと悩んだ挙句、養子縁組を望む夫婦に子供を譲ることにする。そして養子を望む裕福な夫婦、マークとヴァネッサを見つける―――。

率直な感想。誰が見てもこの作品をけなす人間はいない作品である。系統的には「サイドウェイズ」、「リトル・ミス・サンシャイン」の系譜の作品である。
作品の系統だけでなく、宣伝の仕方もとても似ている。インディペンデント映画として、ニューヨークとロサンゼルスの数館のみで年末に公開し、その後ゴールデン・グローブにノミネートされ、そのままアカデミー賞にもノミネート・・・。調べてみたら、3作品すべて"Fox Searchlight"の配給である。そりゃ宣伝の仕方が似ているのも当然である。
とはいえ、受賞暦、興行成績の両面において、それぞれ良作であることは間違いないのだから、それをヒットさせる"Fox Searchlight"の配給・宣伝力は素晴らしいの一言に尽きる。

映画本筋から話がそれたが、10代の妊娠という一見重たいテーマを扱ってはいるものの、そこはアメリカ映画、日本のTVドラマのような重さはない。むしろ妊娠を笑いのネタにしている。
脚本は過去の2作同様、重い内容であってもそれを見終わった後にちょっとした幸福感を味わえる"ほんわか"コメディーとなっていて、ストーリーに大きな起伏なく、基本的には登場人物の会話を楽しむ作品である。ただし、その会話のテンポだとか、ウィットに富んだ会話の内容だとかは、他の作品とは段違いに面白い。字幕なしの状態(70%くらいの理解度だろうか?)でそう思うのだから、英語が100%理解できるアメリカ人にとっては、その面白さはハンパないだろう。

例えば、10代のジュノが、30代後半の養子縁組の父親と同じ音楽について語りあうシーンがあるのだが、10代とは思えない口の利き方をしながらも不快感を感じさせない会話の内容であり、非常に面白い。しかも耳に入った瞬間に笑える面白さではなく、ちゃんと脳に届いた時に笑える、ちょっと考えた時に面白さが増す、ウィットに富んだ笑いである。

10代の女の子が主人公であるが、その両親、養子縁組を望む子供のできない夫婦、そして学校の親友といった、いわゆる脇役のキャラクターまでもがきちんと確立されている点も上述の2作品と同様である。
そうすることによって、幅広い年齢層がいずれかの登場人物に感情移入できるのだから、興行的に成功するのも納得である。

ノミネート5作品の中では4番手の作品ではあるが、興行的には1番手の作品でもあるこの作品。果たしてアカデミー賞受賞はありえるのか?
そして来年の12月頃に"Fox Searchlight"が配給する作品がどんな作品になるのか?どちらも非常に楽しみです。

一口コメント:
作品の内容的にも、配給・宣伝の意味においても、「サイドウェイズ」、「リトル・ミス・サンシャイン」の系譜をしっかりと受け継いだ作品です。

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