恋愛適齢期 |
「恋愛小説家」で中年の恋愛を演じたジャック・ニコルソン
が「ハート・オブ・ウーマン」のナンシー・メイヤーズの脚本を選んだということで、かなり期待していた作品。
63歳で独身のハリーは、今までずっと30歳以下の美女たちと付き合ってきた。そんなハリーが、新しい恋人マリンとともに、二人だけの週末を過ごそうと、ビーチにある彼女の母親の別荘へやって来た。そこに現れたマリンの母エリカは、突然現われた"娘のボーイフレンド"に思わず絶句!気まずい雰囲気の夕食の後、ハリーが心臓発作に倒れ、大騒ぎで病院に運ばれたあげく、エリカの別荘でしばらく療養生活を送ることになる。
ハリーが巻き起こす騒動と、厚かましい態度に、エリカはいらだっていた。しかしハリーの担当医の若くてハンサムなジュリアンに告白され、エリカは舞い上がりつつも、かなり年の離れたジュリアンに対して、どうすればいいのか困惑してしまう。
一方、ひとつ屋根の下で暮らすうちに見えてきたハリーの意外な内面に、心魅かれていくエリカ。ハリーもまたエリカの魅力に、次第に魅かれていく。互いに魅かれあう二人の想いは、固くひとつに結ばれたかに見えた。
しかし、療養生活を終えたハリーは、再び若い女性と付き合うようになり、その現場を見たエリカは激しいショックを受け、悲しみに暮れる。悲しみに暮れながら、自分の体験を作品として書き上げていく彼女にジュリアンは変わらぬ思いで接してくれる。そして作品が完成し、三角関係にも結論が出される―――。
中年同士の恋愛を描くとなると、この手のコメディ・タッチの作品はなかなか実感がわかないものだが、(シリアス・タッチの典型は「マディソン郡の橋」)中年男性と20代の女性との恋愛から始まり、中年女性と30代の男性との恋愛を描きつつ、最終的には中年同士の恋愛に発展していくというストーリー展開に、脚本の上手さを感じた。
「ハート・オブ・ウーマン」では、女性の心の声が聞こえるという設定に脚本の上手さを感じ、今回のストーリー展開の上手さも加わり、監督ナンシー・メイヤーズは一流の恋愛映画監督ではないかと思わされた。
よくよく考えてみれば、監督(脚本も書いている)自信が女性でありながら、男性の心理描写も丁寧に描いている。それが男性の自分が見ても、共感できてしまうのだから、素晴らしい。次回作以降も期待していきたい。
また、キャスティングも絶妙。主演のジャック・ニコルソンは文句なく、この年代でコミカルな恋愛を演じさせたらNo.1だろう。もう一人の主演、ダイアン・キートンに関してもこの作品を見ている最中に他の女優が演じたら・・・と思い浮かべることはなかったし、ジュリアンを演じたキアヌ・リーブスも「マトリックス」のネオとはまったく違う感じの好青年の役を見事に演じていた。作品を見ている最中にネオの印象が頭をよぎることはなかった。元々キアヌはシリアス路線も演じていたのだから、当たり前といえば、当たり前なのかもしれないが・・・。
最後の最後の終わり方があまりにもあっけなく、ちょっと拍子抜けしてしまった。というのも、この手の映画はハッピー・エンドになるというのは予想できるため、いかにロマンチックな演出、あるいは台詞が最後に用意されているかが重要だと思うのだが、いとも簡単に予想できるエンディングであったし、エリカとジュリアンの関係の描き方がそんな簡単な(軽い!?)描写で終わり?という感じで、最後の最後で、かなり点数が下がってしまった。
途中まではかなり満足度の高いレベルだっただけに、エンディングのレベルとのギャップにやや不満を覚えたが、全体としては恋愛はいくつになっても、変わらない気持ちで体験できるものなんだと、感じさせてくれた作品です。