紀元前1万年/10,000 BC
採点:★★★☆☆☆☆☆☆☆
2008年3月9日(映画館)
主演:スティーヴン・ストレイト、カミーラ・ベル
監督:ローランド・エメリッヒ

スターゲイト」、「インデペンデンス・デイ」、「デイ・アフター・トゥモロー」の監督最新作ということで、昨年末に劇場で予告編を見た時から楽しみにしていた作品。

紀元前1万年。まだマンモスが存在していた時代。ある部族が他の部族に襲われ、仲間を連れ去られてしまう。さらわれた恋人を取り戻すために、一人の若者が救出に向かう。彼は旅の途中でサーベルタイガーに出合ったり、原始の生物たちに襲われながら、いくつかの部族を味方に加え、ついに敵の本拠地に辿り着く―――。

標本の世界でしか見ることのできない絶滅したマンモス。それが群れで、画面の上を所狭しと駆け巡るのだから、映像的にはとても面白い。しかも建設中のピラミッドが出てくることもあり、世界七不思議が好きな自分としてはこの上なく楽しい・・・はずなのだが、いかんせんストーリーが薄い。
一言で言えば、さらわれたヒロインを救うヒーローの物語だ。全く同じ内容の数え切れないほどの作品が今までに存在しているわけだから、ストーリー的には何の新鮮味もない。
この作品が他の作品と異なる点といえば、やはり紀元前1万年を描いている点だろう。この時代を扱ったハリウッド大作としては史上初の映画ではないでしょうか?そういった意味において、この作品は興味をそそられるし、実際の映像もマンモスの大群やサーベルタイガーといったありそうでなかった映像ばかりで面白い。

特にマンモスの毛などはすさまじいCG技術である。立っているマンモスの毛を描くだけでも難しいのに、それが走ったり、倒れたりする時の微妙な揺れ加減など、映画館でなくては感じられない迫力を楽しむという意味では、この作品は正真正銘の"映画"である。
サーベルタイガーについても同様、いやそれ以上に困難だったのではないだろうか?というのも水に濡れてしまうから。フサフサ感を出すよりも、実は濡れた感じをCGで描くほうが難しい(反射など、乾いた状態には必要のない情報が多数入ってくるから・・・らしい)という事実を知った上で見ると、そのすさまじさが一際目立つのだが、そういうことを知らない状態で見ると、「ロード・オブ・ザ・リング~王の帰還~」に出てきたマンモスと比べて、そこまでのCGの進歩を感じることはないかもしれない。逆に言えば「ロード・オブ・ザ・リング~王の帰還~」のCG技術がすさまじいという証明にもなるのだが・・・。

CG技術においてはとても素晴らしい作品ではあるが、上述したようにストーリーが薄すぎて、正直そこまで面白いといった感じもしなければ、通常ハリウッド大作を見た直後に残るはず(あくまでも見た直後だけだが・・・)の爽快感すらない。
例えば最初に青い目をした少女の伝説が語られ、映画の最後にその伝説が生きてくるのだが、内容が薄すぎて、館内失笑が起こってました。これはその伝説が語られるのが、最初と最後だけで、物語の途中では全く絡んでこないからであって、途中でも何度かその伝説に触れるようなシーンを挿入しておけば、もっと内容の濃いストーリーにできたはずだ。

また最後の敵もあまりにも弱すぎて、驚いてしまった。散々、思わせぶりな描写をしていた敵のボスが、「えっ?そんな簡単に死ぬの!?」って位、あまりにもあっけなく死んでしまう。例えるなら、十ターン以上かけてようやく殺せるはずのRPGの最後のボスが、1ターンで死んでしまうくらいに弱い・・・と言えばわかってもらえるだろうか?
しかもその敵の側近の行動も一貫性がなく、ストーリーの薄さを悪い意味で強調してしまっているのだから、残念だ。

紀元前1万年という時代設定を真っ向から描いたハリウッド大作ということで、それを描ききったCG技術はとても素晴らしいが、ストーリーがなさすぎて、そのCGの素晴らしさすら薄めてしまった残念な作品です。

一口コメント:
映像的には非常に面白いが、ストーリーの薄さに逆の意味で驚かされた作品です。

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