ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団
採点:★★★★★★☆☆☆☆
2007年9月11日(映画館)
主演:ダニエル・ラドクリフ、エマ・ワトソン、ルパート・グリント
監督:デヴィッド・イェーツ

このシリーズもいよいよ5作目。ただし、映画公開よりも原作の最終巻発売に話題をさらわれてしまった感が否めなかったが、アメリカでの興業成績は全5作中2位と奮闘している。しかし、日本ではシリーズ最低となることが確実視されている。

ホグワーツの5年生となったハリーは、規則を破り、人間界で魔法を使ってしまい、魔法省に召喚されるものの、ダンブルドア校長のおかげで退学は逃れた。しかし、ホグワーツに魔法省から監視役の女教師が送り込まれる。
その女教師が規則、規則のがんじがらめの人間で、最終的にダンブルドアを追放し、校長の座に居座ってしまう。ハリーは彼女の目を盗みつつ、ロン、ハーマイオニーらと共にヴォルデモート対策として、ダンブルドア軍団を結成し、必要の部屋で訓練することになる。
そして魔法省にヴォルデモートの秘密が隠されていることを知ったハリー達は魔法省へと向かう―――。

なんだか、最初の90分くらいは間延びしてたなぁというのが、見終わった直後の感想。今作に関しては、原作を読んでいないこともあり、映像を見ながら、原作ではここの説明がもう少し詳しくされているのだろう・・・と勝手に推測しながら見ていた。
要するに間延びの原因は、本来あるべきはずの説明がなく、ただひたすら事件だけが、目の前のスクリーンに繰り広げられるからであったと思われる。
例えば、今作のタイトルにもなっている"不死鳥の騎士団"の説明も、一通りわかるのだが、もう少し過去の話を映像で見せても良かったのではないだろうか?
またハリーの彼女とのキス・シーンにいたる過程も説明というか、描写が足りない。映画である以上、もう少しラブ・ストーリーとしての深みを持たせてほしかった。原作では深く掘り下げられているのだろう。
そしてもっとも薄っぺらいと思ったのが、予言の玉とヴォルデモートとの絆について。改めて、というかもったいぶって、予言の玉など登場させなくても、すでに過去の4作を通してわかっていたことだし、この5作目の中でも、わかりやすすぎるくらいにわかりやすく描かれていた。そのため、最後に改めて予言を聞いたところで、えっ?あっそうなん・・・?って感じだった。例えるなら、犯人がわからないのが面白いはずなのに、誰もがコイツが犯人だろ?と思っていた人物が本当に犯人だったサスペンス映画のような後味の悪さだった。

とはいえ、その後の魔法合戦によって、映画が終わった直後の印象はかなり回復される。次作以降に大いに期待を持たせるその戦闘シーンは見ごたえがある。ダンブルドアとヴォルデモートの戦いはその極致と言えるだろう。最後の20分近くを見る限り、6作目、7作目は大いに期待できる。

ただ、前作の時も思ったのだが、ハリー以外の登場人物全てがその名を口に出すのも躊躇する伝説の大魔王ヴォルデモートだが、その怖さが全然伝わってこないのは気のせいだろうか?迫ってくる気配とかでもっと怖さを演出するなり、実際に姿を現したわけもあり、その圧倒的なまでの力を直接見せ付けるなりといった演出はいくらでも考えられるだけに、残念だ。
上述したように魔法合戦には期待を持てるだけに、今後このヴォルデモートの恐怖感をどのように演出していくかが、次作以降の成否の鍵を握っているのではないだろうか?

手放しで上手いと思ったのは、今作から登場した2人の役者。まずは魔法省から派遣されてくる嫌味な女教師。これでもかというくらいに憎たらしい顔つき、それに輪をかけるようなピンクの衣装。映画を見ていて、何度コイツ早く消えろ!と思ったことか?
もう1人はルーナ。ホグワーツではキチガイ扱いを受けている彼女だが、死に直面した人間にしか見えないものを見える力といい、周りから疎まれている境遇といい、ハリーの負の面をまるで鏡のようにハリーに写し返す存在として、出過ぎない演技がまたうまい。
パート1の時から思っていたが、このシリーズのキャスティングだけは、本当に絶妙だ。

個人的には夜景をバックにロンドンの街をホウキと魔法世界の生物に乗って飛び回るシーンは前作までのクイディッチの代わりを見ているようで、気分がスカッとした。
さて、残り2作。どうなることやら?

一口コメント:
ついに蘇った恐怖の大魔王の怖さがまったく伝わってこない、シリーズ5作目です。

戻る