フレフレ少女
採点:★★★☆☆☆☆☆☆☆
2008年11月2日(試写会)
主演:新垣 結衣、永山 絢斗
監督:渡辺 謙作

恋空」のヒットを受け、長澤まさみの「タッチ」、「ラフ/ROUGH」に続けとばかりに新垣結衣主演のアイドル映画が完成した。

読書が趣味で、小説の中の恋に恋している女子高生の桃子は、ある日野球部のエース大嶋に出会い、一目惚れしてしまう。彼に少しでも近づくため、桃子は部員が1人しかいない応援団へと入団。なんとか団員を集め、応援団として活動を始めるが、ひょんな事から応援団長に仕立て上げられてしまう。
そして迎えた強豪・不知火高校との練習試合当日、肝心の応援は散々で、大嶋の好投むなしく惨敗してしまう。そして大嶋は不知火高校へと転向してしまう―――。

結論、新垣結衣のアイドル映画以外の何者でもない。この作品の売りはまさに新垣結衣であって、映画は彼女のおまけです。
本来の商品であるお菓子が申し訳ない程度に小さく入っていて、おまけであるはずのものがお菓子以上に大きく我が物で入っているという最近のお菓子業界の映画版のようです。

映画前半は特にひどい。まずこの映画の一番のテーマともいえる応援団入部の理由が説得力に欠ける。応援団に入った後にあれだけ頑張れるなら、応援団の前に入ろうとしていた野球部のマネージャーでも、ソフトーボール部でも頑張れるだろ?という突っ込みを入れたくなってしまう。これがコメディー映画と割り切っていれば、まだ良いが、ドラマがメインとなっており、しかも笑いの部分も、いまいち笑えないが、そこはアイドル映画と割り切って見ましょう。
次は意味不明な登場人物たち。応援団員に関しては、個性的な団員を集めていて、最初はバラバラだった5人が、次第に団結していく姿を描くという意味ではOKなのだが、その他のキャストはどうなのだろう?おかまのチアリーダー、貧弱なアマレスリング部員、どう見ても大勢の演奏者を指揮できるとは思えないブラスバンド部の指揮者。最終的に全員、応援団に協力してくれるのだが、なぜこんな脇役の人たちにまで個性的なキャラクター設定を持ち込んだのだろうか?そこは普通の人間設定にして、あくまでも応援団員にフォーカスさせるべきではないだろうか?

キャスティングという意味で、ほかにも問題がある。まずは主人公が応援団に入るきっかけとなる野球部のエース。どうもエースっぽくないというか、エースとしての風格がないというか・・・。文学少女である主人公が意を決して、男の世界である応援団に入部するくらいの大きな理由付けとなる相手が、線が細く、エースのオーラがまったく漂っていないのでは、もう致命的である。

そして一番のミスキャストはやはり主演のガッキー。新垣がどうこうという問題ではなく、これはもう製作者側のミス。
これが映画じゃなくて、家で無料で見られるTVドラマとしてならまだ成立するのだろうが、あまりにもガッキーの声が細すぎて、応援団の命とも言うべき、腹から出す声に力がない。だから応援のシーンも説得力に欠けるし、映画としても説得力を欠く。
また腹から声が出ない代わりに大きな声を出しているかというと、そうでもない。ブラスバンドや大声援などである程度、補ってはいるが、やはり主演の声が細いのは致命的である。ストーリー中盤までは、メガネっ娘文学少女のひ弱さを目立たせるための演出か?と思ってみたりもしたが、最後までそのまま。しかも他の団員が明らかに成長を見せている中、ガッキーだけがあまり目立った成長をしていないこともあり、さらに輪をかけている。
そして止めが敵チームの応援団。こちらがかなり本格的な応援を見せてくれるため、ただでさえ貧弱なガッキー率いる応援団の応援がさらに貧弱に映ってしまうのだ。これは監督がわざとそういう演出をしたのか?とすら疑いたくなってしまう。

主人公が読書家という設定であり、小説内で使われている言葉から引用した台詞をはじめ、作品内に幾つかの名言が登場するが、上記の理由でいまいち響かない。
「応援する人間は、応援される人間より強くなくてはいけない」
という台詞なんかは、もっと心の深い部分に響いてもいいはずなのに・・・。たとえばこの映画が観客を応援する側の人間だとすれば、この映画は強くなくてはならないのだが、それを感じられない。あくまでも映画ではなく、ガッキーの有料プロモーション・ビデオなのだ。

冒頭からけなしてばかりだったが、この作品にも良い点はもちろんある。それは最後の最後。卒業式当日、学ランを着ていたガッキーがセーラー服になり、副団長の胸に飛び込むシーン。そして、そのまま彼の第二ボタンをちゃっかり奪い取るシーン。今までの学ランからセーラー服に戻ったギャップで彼女の魅力を引き出したところで、第二ボタンを奪った後に見せる笑顔。これを見て、この映画の最後の最後で少し救われた気がした。

一口コメント:
ガッキーの、ガッキーによる、ガッキーのための壮大な有料プロモーション・ビデオです。

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