ジュラシック・ワールド/炎の王国 Jurassic World: Fallen Kingdom |
前作から3年が経ち、公開前に各種番組でこの映画を取り扱っているわけではないものの、恐竜に関する番組が多かったこと、そして何より恐竜大好きなこともあり、見に行った作品。
大人気テーマパーク「ジュラシック・ワールド」で惨劇が起きてから3年。島の火山に、噴火の兆候が見られるようになり、恐竜たちを見殺しにするのか、救うべきなのか?アメリカの議会で議論が展開されるが、最終的には民事不介入の方針を取り、国としては見殺しの結論に至る。
かつてのテーマパークの責任者で、現在は恐竜保護団体の責任者であるクレアは故ジョン・ハモンドの元ビジネスパートナーであったベンジャミン・ロックウッドを訪ね、彼の支援・サポートを取り付ける。
そして元恐竜監視員のオーウェン・グレイディを雇い、彼ら探検隊がイスラ・ヌブラル島に向かうが、遂に火山が噴火してしまう―――!!
いきなりだが、結論。良くも悪くも新シリーズのパート2として正当な続編であり、かつ前シリーズのパート2にあたる「ロスト・ワールド」の正当な続編です。
まず新シリーズの続編という意味で、今作でも前作のインドミナスに続き、遺伝子操作により存在しなかった恐竜を生み出している。それを戦争兵器として活用しようというところまで話は広がっている。
また作品は2部構成になっていて、前半はジュラシック・ワールドのあったイスラ・ヌブラル島から恐竜を救出する話、後半は北カリフォルニアの大富豪の家で行われる恐竜オークションとそこで暴れる恐竜の話、ときっちりと分かれていて、「ロスト・ワールド」で見られたのと同じ構図で描かれている。
これが正直、悪い方に転んだ。いわゆる既視感に襲われてしまった。「どこかで見たことあるなぁ」から始まり、「またこの展開かよ!?」に至る、悪循環にはまったのだ。
もちろん今作ならではの展開として、アメリカという国家を巻き込んで、滅びゆく恐竜を救うかどうか?の一大論争まで広がる展開がある。そして国家としては助けないという結論に至ったものの、一部の富裕層のための恐竜オークションという斬新な展開まで用意されている。しかし、物語の大筋は前後半に分かれて、最後は結局恐竜が暴れて、人間では制御できないという結果が待っている・・・。
また前半の方が盛り上がってしまい、後半の終わり方には物足りなさが残るのも事実。前半の最後、島から離れる船から見る島のシーンが良すぎるだけに、前後半の落差が気になる。特に噴火の影響で煙の中に消えていく首長竜の演出は感動的ですらあった・・・。それが映画の中盤に来てしまったが故に後半のクライマックスがいまいち盛り上がりに欠けてしまったのだ・・・。
とはいえ、3部作の2作目ということでパート3に期待が持てる展開があったのも事実。
終盤に明かされる某登場人物の誕生の秘密は、このシリーズの根幹に関わる鍵となるような設定で、そんな人物が取った最後の行動には賛否両論があると思われる。これでシリーズ完結だとしたら、個人的には否定派だが、パート3につながる設定と考えれば賛成派になる。
そしてその最後の行動の結果、エンドロールの後に描かれたパート3の展開を妄想させるシークエンスが良い。エッフェル塔のてっぺんに翼竜が・・・、舞台はパリか?と思ったら、ラスベガスの方のエッフェル塔という二重の驚きと共に、原題の「Fallen Kingdom」=「堕ちた王国」の二重の意味(恐竜王国の滅亡と人間王国の滅亡)にも気づかされるという秀逸な終わり方になっている。
それを踏まえて考えると邦題の「炎の王国」はトンでも設定なタイトルだ・・・。
そのパート3の展開としては「猿の惑星」のような展開を期待してしまう・・・。
一方で、演出として良いシーンがたくさんあったのも事実。
上述したが、前半の最後は本当に良かった。今までのシリーズの中で一番と言っても過言ではない。また後半のクライマックスとも言える一連の屋根の上の戦い、そしてその結末に至るまでの流れも今までのシリーズにオマージュを捧げる演出となっていて良かった。こういったパニック物の定石ともいえるライトが付いたら目の前に現れる演出だったり、子供に悲鳴を上げさせる演出などはもちろん、ブルーとインドラプトルの最後の最後の結末は前シリーズのパート1の最後、旗が落ちてくる中で佇むティラノサウルスに通じる少しやり過ぎて笑えるもののハリウッド映画ならではの格好良さがあった。
また恐竜同士の輸血という設定は、科学的にどうなのか?はわからないが、あまりにも斬新な設定で、実際に輸血するまでの一連のシーンも含めて、楽しめた。
そしてこのシリーズを語る上で欠かせない"遺伝子操作"については、シリーズの中でも最も深く議論されている。
人間が科学を駆使した結果、自分たちが制御できない問題(恐竜の暴走)に出くわすという、今の森林伐採や砂漠化、そして地球温暖化問題などを暗に揶揄している。遺伝子操作という意味ではクローン牛やクローン羊などが話題になったりもするが、遺伝子操作ではないものの、それに近い例としてダックスフントのように人間の手によって交配された結果生まれた動物もいる。その象徴として恐竜が描かれているのだが、人間が勝手に作り出した生物が行き場を失い、最後には見捨てられてしまうというのが前半のイスラ・ヌブラル島で描かれていて、そのクライマックスとして上述した煙に消える首長竜のシーンになっているわけだ。
そして前シリーズから登場しているマルコム博士がアメリカ議会で語るシーンが最初から最後までずっと描かれいてることが大きい。その中でも最後の最後に「Welcome to Jurrassic World!」というセリフを語り、上述のFallen Kingdomの二重の意味を伝えるあたりの脚本にはしびれました。
明らかにダメだった点を最後に書いておきたい。
まずはこの作品の敵ともいうべきインドラプトルが圧倒的な強さではないところ。前作ではインドミナスが体温調整や変色機能も備えた大型肉食恐竜としてティラノサウルスとガチンコで戦う面白さがあったが、インドラプトルはどちらかというと暗殺者といった感じで、圧倒的なパワーではなく、頭脳を駆使した戦い方をするタイプで、大きさも確かに後半の舞台となるお城で戦うにはちょうど良いサイズではあるものの、このシリーズの看板を背負うにはちょっと役不足だった感は否めない。
何はともあれ、3部作の中間作として次作につながる様々な前振りはしてあるので、最終作を楽しみにしたい。