M I B 3 メン・イン・ブラック3 |
パート1から15年、パート2からも10年という異例の休業期間を経て、地球を救った黒装束の2人組が1スクリーンに戻ってきた。
エイリアンの監視・取締り用の秘密組織MIBのエージェント・JとKの2人はいつもどおり、街で暴れるエイリアンを取り締まっていた。が、ある日突然Kが失踪してしまう。しかも、MIBの本部の人間を含め、J以外は誰もKの存在自体を知らないという異常事態になっていた。調べていく内に、何者かによって歴史が塗り替えられ、40年前にKが死んでいたことを知る。それを知ったJは、歴史を元に戻すために40年前にタイム・トラベルをすることに・・・。
MIBシリーズで感動覚えることになるとは・・・。
見終わった直後に涙の一歩手前まで行っていた。このシリーズは2人の言葉の駆け引きから起こる笑いとテンポを楽しむ作品であり、感動ではなく、笑いこそがこのシリーズの売りだったはずなのに・・・。もちろん感動すること自体は素晴らしいことだし、感動することによって笑いがなくなったわけでもないし、それこそ文字通りの"良い意味での裏切り"だった。
そしてシリーズの売りである"笑い"についても、相変わらずのバカバカしいものから、シュールなものまで幅広く楽しむことができる。バカバカしい笑いの際たるものは頭を切り離すことができるエイリアンの頭を使ってボーリングをするシーン。指を入れる穴の変わりに鼻の穴に指をつっこんでストライクを取るシーンは爆笑。
またクライスラー・ビルから飛び降りるというタイム・トラベルの最中に同じようにタイム・トラベルをしている人が他にもいるのかと思いきや、実は大恐慌時代に投身自殺をしている人間だったというブラック・ユーモアも描かれている。
そして40年前ということでMIBの本部や装備品も最先端のデザインでありながら古臭さを感じさせるデザインになっており、小道具、大道具チームのデザイン力にも別の意味で感動を覚えた。バカでかい携帯電話しかり(当時、携帯電話自体なかったのでは?)、バッテリー・ベルト付きの記憶除去装置しかり、丸みを帯びているもののすこし角張った感の漂うMIB本部の内装しかりである。
さらにヒッピー文化が登場したり、アンディ・ウォホールが登場したり、アポロ計画がクライマックスになっていたり、アメリカ版「ALWAYS」とも言うべき、アメリカ人が見たら昔懐かしさを覚えること間違いなしの映像美でもある。
この3作目、パート3として作られているが、見方を変えるとパート0、あるいは流行の言葉で言えば、"ビギンズ"でもある。ベテランとなったJと新米時代のKというパート1とは逆になった2人の関係を描いているという意味では立場を入れ替えて原点に戻っているし、タイム・トラベルというある種の禁じ手とも言うべき手段を使っているが、その禁じ手をこれ以上ないくらいに絶妙な手法でエンディングに結びつけることによって、禁じ手のはずが最高の一手になっており、パート3=パート0という素晴らしい図式も成り立っている。
そして若き日のKに扮するジョシュ・ブローリン。トミー・リー・ジョーンズ顔負けの仏頂面を習得しており、若きトミー・リー・ジョーンズとして全く違和感がない。そもそもこのキャスティング自体が、「世界の中心で、愛を叫ぶ」の大沢たかおと森山未來と並ぶ素晴らしいキャスティングだった。
マイナス点を挙げるとすれば、悪役の魅力が物足りなかったことだろうか?冒頭の月面刑務所からの脱獄シーンはなかなか良かったのだが、それ以降の存在感はそれほどでもなかった。だからといって、あまりにも強敵にしすぎるとMIBではなくなってしまうので、そのさじ加減が難しいところだったということか?
何はともあれ、この3作目をきっかえにパート4、パート5と続いていくのか、それともこれで終わりなのか、気になる終わり方でもあった。