ナルニア国物語
第3章:アスラン王と魔法の島
採点:★★★★★☆☆☆☆☆
2014年5月24日(テレビ)
主演:スキャンダー・ケインズ、ジョージー・ヘンリー、ベン・バーンズ、ウィル・ポールター
監督:マイケル・アプテッド

このシリーズ、前2作はディズニー配給だったのに、この作品からはフォックスに変わったというハリウッドでも珍しい作品ということもあり、公開時は記憶の彼方に飛んでおり、TV放映にて前作から5年以上も経って鑑賞することになった

兄ピーターと姉スーザンが渡米し、エドマンドとルーシーの2人は、いとこのユースチスの家に預けられるが、何かと小生意気なユースチスを二人はどうしても好きになれない。
ある日、壁にかかった帆船の浮かぶ海の絵を入り口として3人はナルニアの世界に入り込む。絵の中に描かれていた帆船に救助された3人は、前回の冒険で出会ったカスピアン王子、そしてネズミの騎士リーピチープと再会する。そして3人は成り行きでカスピアンと共に伝説の7つの剣を集める航海に同行することになる。
順調に伝説の剣を集めていく彼らだったが、途中立ち寄ったある島でユースチスがある呪いにかかってしまう―――!!

「アスラン王と魔法の島」というサブタイトルは誰がつけたのだろう?いくつかの島を伝説の剣を求めて航海する物語なので、それっぽいタイトルにしてほしかった。最低でも魔法の"島々"にするくらいは考えてほしかった。

でもって内容はファンタジーの王道ともいうべきものなのだが、いかんせん軽い。
前2作はナルニアを攻めてくる明確な敵が存在していて、その敵からナルニアを守るという物語だったのだが、今作は伝説の剣を探すためにナルニアから冒険の旅に出るということでやや趣が異なる。そのため、戦術的な駆け引きや大群が入り乱れての戦闘シーンといったものは全く存在しない。しかも2時間の尺の中で7本の剣をゼロから探す=1本あたり20分もない・・・のだから当然1つ1つの冒険譚は薄くなる。「ロード・オブ・ザ・リング」が、たった1つの指輪を捨てる旅に3時間x3本の合計9時間も使っているのとは大違い。どうせならすでに6本はそろっている段階で合流して、残りの1本が強大な敵が所持していて、倒すために悪戦苦闘するくらいの展開のほうが良かったのではないか?

また原作を読んでいないので、この先どうなるのかわからないが、シリーズ共通の敵がいないため、ナルニアという名を冠している以外にシリーズらしさが見えない。しかも主人公も作品ごとに変わっていく感じがして、ますますシリーズとしての色が薄れてしまう。
このシリーズが「ハリー・ポッター」や「ロード・オブ・ザ・リング」といった21世紀の始まりに華々しくデビューしたのに先行して公開されていればまだ新鮮味もあり、ファンタジー映画ってすごいなという感想もあったのかもしれないが、ファンタジー映画の両巨頭が公開された後に・・・、ましてやこの3作目に関しては両シリーズが終わった後に公開されているのだから、三番煎じもいいところ・・・。そして内容を比べても謎解きも特になく、大規模な戦闘シーンもないのだから、物足りない・・・というか軽いのだ。

しいて言えばこれといった敵がいない代わりに、エドマンド、ルーシー、ユースチスの3人の成長物語として見ることもできる。しかし乗り越えなければいけない試練がいくつかあるのにも関わらず、割と簡単にそれらの試練を乗り越えていってしまうため、見ている側としてはあっけなさすぎて軽く感じてしまう。
長男のピーターと長女のスーザンが物語から卒業してしまい、今作で主人公となったエドマンドとルーシーの2人だが、次男次女だからか、正直主人公としてのヒーロー・ヒロイン的な魅力がない・・・というかキャラが立ってない。だからといって唯一ヒーロー的魅力を持ったカスピアンは主人公というわけでもなく、あくまでもサブ。しいて言えば最初は生意気なクソガキとして登場したユースチスがナルニアの外から来た3人の中で唯一キャラが立っている。次作では主人公になるのだろうか?

そんな貧疎なキャラばかりの今作における主人公2人の唯一の見どころはそれぞれが心の中で苦悩するシーンだろうか?エドマンドは兄やカスピアンに対する嫉妬に悩み、ルーシーは姉の美貌に対する嫉妬に苦しむ。が、どちらも描写としては薄く、自分の中の闇に苦悩するとか、迫りくる恐怖にもがき苦しむというには程遠い。例えば嫉妬から誰かを傷つけるとか、嫉妬心と自制心の葛藤から自分自身を傷つけるとか、こちらが感情移入しやすい描写というのがなく、やはりどれもこれも軽いのだ。

とはいえ、この作品にも良い点はある。
最も良かったのが、ネズミのリーピチープ。その大きさから主人公にはなれなかったが(大きさのせいでは無論ないが・・・)、ユースチス以上にキャラが立っていて、お笑いを一手に引き受けるいかにもアメリカ映画の登場人物らしいキャラ。ずっと笑いを振りまいておきながら最後の最後に涙を誘うようなセリフをはく当たりも憎めない。
そしてCGにおいて技術的に最も難しいと言われている毛並みの表現力に関しては、この作品は群を抜いている。リーピチープやアスランの毛並みたるや、いったいどれだけの時間を費やしているのだろうか?と思わずにはいられない。だからこそアスランの出番が少ないとも言えなくもないが・・・。

とりあえず、配給会社が変わったり、興行収入が下がっていることもあり、次作が作られるのかどうか、心配なシリーズです。

一口コメント:
次作があるかどうか不安な軽い感じのファンタジー映画です。

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