ナルニア国物語
第2章:カスピアン王子の角笛
採点:★★★★★★★☆☆☆
2008年5月26日(映画館)
主演:ベン・バーンズ、ウィリアム・モーズリー、アナ・ポップルウェル、スキャンダー・ケインズ、ジョージー・ヘンリー、リーアム・ニーソン、ティルダ・スウィントン
監督:アンドリュー・アダムソン

前作が「ロード・オブ・ザ・リング」や「ハリー・ポッター」を足して3で割った感じだったので、そこまで大きな期待はしていなかったが、やはり気にはなっていた作品。

前作の1年後、子供たち4人が再びナルニア国を訪れるが、戦闘民族テルマール人に征服され、もはやナルニア王国は存在しておらず、ナルニアの民である動物たちの中には言葉を話せないものもいた。
一方、テルマールの王宮では、子供が誕生したばかりの亡き王の弟ミラースが、我が子に王位を継がせるために正統な王位継承者カスピアン王子の暗殺を企てる。辛くも、城から逃亡したカスピアン王子は、"伝説の四人の王"を呼び戻すと言われる魔法の角笛を手にしており、森の奥深くで、ナルニアの民と出会う・・・。

面白い!
前作のようなグダグダ感があまりないし、なにより前作における4人の存在意義のなさという最大の欠点に対して、今作はきちんと明確に存在意義を与えている。
まずは長男のピーター。王としての重圧に苦しみながらも、王としての責任・義務をまっとうしようという心構え、そしてそれに伴う剣技などの王としての能力。それを如実に表しているのが、最初の戦い。王として戦わなければいけないという重圧、しかし情勢を見極めながら、退却のタイミングを見過ごさない王としての責任、そして、それを実行に移す能力。ピーターがいなければ、おそらく第1の戦いにおいて、ナルニア軍は全滅していたはずである。それだけ、今作におけるピーターの役割は大きい。

続いて、サブタイトルにもなっているカスピアン王子。まずは役柄ではなく、役者自身についてだが、"王子"という役柄にふさわしいハンサムな顔と、清涼感のある凛とした雰囲気に、物腰柔らかな物言いで王子然とした要素を兼ね備えており、まさにハマリ役である。そして役どころとしても、様々な抗争に翻弄されていく様子を、時々少々情けない姿を見せる一方で、馬術や剣術といった王族ならではの立ち振る舞いを見せることで、"王"ではなく、"王子"としての存在を見事に示している。
例えば、危ない時には 角笛を!と言いながら すぐに吹いてしまったり・・・。

ナルニア国の英雄王ピーターとカスピアン王子、この二人の微妙な関係の描写もまた素晴らしい。王とは言え、年齢的に若いピーターと年齢的には上だが、王子という肩書きのカスピアン。しかしどちらが主導権を握るか?という、男として、いや王族としてのプライドに関わる2人の内なる戦い。この戦いを通して、精神的に大きく成長する2人の成長物語として、この作品を見るのも面白い。

また善vs悪というありがちな単純な構造の中にも、実はもう1つ・・・。悪の中にも善vs悪という戦いを描いている点が、この作品の上手いところでもある。前作はこの点がなく、本当に単純に善vs悪だけの構図だったのだが、今回は悪の中にも善vs悪を持ってきたことで、より一層、人間ドラマが深くなっている。

むろん、2人共に「多くの敵を普通に殺しているのに、何故ボスにトドメを刺すのを躊躇うのか?」といった突っ込みがなくもないのだが、そこはまぁ、ファンタジー映画だから・・・ってことで、済ませましょう。

そして戦闘シーン。これに関しては、正直「ロード・オブ・ザ・リング ~旅の仲間~」、「ロード・オブ・ザ・リング ~二つの塔~」を混ぜた感が強い。木が出てきたり、水が出てきたり、まさに「ロード・オブ・ザ・リング」である!
とはいえ、空中から城に攻め入る隠密な戦い方はスピード感があって楽しめたし、最後の戦場における驚愕の戦術が見られたり、見ていて飽きるということはまったくない。
また「ロード・オブ・ザ・リング」にはない点として、この作品における笑いの要素は高い。今回それを一手に引き受けたのが、ネズミである。小さな短剣を手に時に勇敢に戦い、時にユーモラスに笑いを取っていく。そしてまた時に礼儀正しく振舞って、感動を誘ったり・・・。この点はこの作品の白眉であるかもしれない。

そしてもう1つの白眉が、次女ルーシーが最後に丸太橋の手前で短剣を抜いて敵兵に構えるシーンである。これはかなりの名シーンである。
というのも今まで純真無垢にアスランの存在を信じ続け、戦いを避けるように振舞っていた(ように見えた・・・)彼女が、決意に満ちた表情で、短剣を手に敵の軍勢の前にたった一人で立ちはだかるのだから・・・。

これで第3作への期待がいやが上にも高まるのだが、果たして次のナルニアは何千年後が舞台になるのだろうか?

一口コメント:
今回は「ロード・オブ・ザ・リング」や「ハリー・ポッター」を足して、"3"ではなく、"1.5"で割ったくらいのレベルに仕上がっています。

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