プロミス/The Promise
採点:★★★★☆☆☆☆☆☆
2006年5月3日(試写会)
主演:真田 広之、チャン・ドンゴン、セシリア・チャン、ニコラス・ツェー
監督:チェン・カイコー

ゴールデン・グローブ外国語部門にノミネートされた、日中韓のトップ・スター競演の映画ということで以前から見たかった作品が、ついにアメリカでも一般公開されるということで、見てきた作品。

生きる術さえも持たず、空腹に震える幼い少女チンチェンの前に、神が現れた。「この世のすべての男からの愛されることを約束する代わり、決して愛を得ることはできないという約束を交わす。
やがて彼女は王妃となった。その頃、無敵を誇る大将軍グァンミンが、俊足のクンルンを自分の奴隷としていた。そして反乱の企てから王を救おうと、グァンミンとクンルンは城へと向かうのだが、ウーファンの刺客にグァンミンは重度の怪我を負ってしまう。
そこでクンルンに自分の鎧を着させ、王の救出に向かわせるのだが、誤って王を殺してしまう・・・。

まずはオープニング。戦の後の戦場で食料を探る少女、その少女の前に舞い降りてくる天女のような神が現れるシーン、そして舞台が変わり、山頂で軍隊を展開する将軍とその部下たち。ここまでは素晴らしい映像が繰り広げられ、その後の展開に大いに期待を持たせてくれた。
が、その直後、人目でCGとわかる安っぽいCGの牛の群れとそれに追われながらも、四足歩行の状態でその猛烈なスピードの牛の追跡を交わすクンルンの人のそれを超えたスピード。しかもその直後にある意味不明な足のクローズ・アップ。このあたりから、ストーリーというか映像に関しては、コメディーになっていく。
その直後、真田広之演じる大将軍が襲い掛かる敵の兵士数百人を相手に、鎖球一つで一人で戦闘するシーンで見せた衝撃波のような映像は笑わずにはいられなかった。そしてその後の胴上げのシーンもまた爆笑。

その後も、おそらく光速を超えるであろうクンルンのスピード(なんせ、時空を超えてしまうくらいのスピードだから・・・)に人間凧揚げになってしまう姫の映像、すでに巻いている包帯を新しく替えるクンルンだが、その後のストーリーの中でその包帯は一切触れられないというストーリー展開、それとオープニングの崖で戦う大将軍の周りを飛び回るものの、ストーリー上、まったくもって意味不明なハエ、めちゃくちゃ早い足の一族を捕らえ、奴隷にしようとする足の遅い軍隊(逃げれるだろ、お前ら!)、などなど、役者やスタッフはおそらく非常にまじめにやっているのだろうが、監督の意味不明な演出や、安っぽいCGによって、歴史SF大作となりうる作品が、監督のひとりよがりのすごい高価で、豪勢なコメディー映画になりさがってしまっている。
5分に1回はある!ってくらい、突っ込みどころ満載の映画だが、個人的に一番腑に落ちなかった演出は、ラスト・シーン。姫に関わった男3人のうち2人までが瀕死の重症を負い、最後の1人も結局刺されてしまうのだが、最終的にはある手段を使って助かってしまうのだが、個人的には助からずに3人とも死んでしまう、あるいは助かるのであれば、刺されることなく、助かってほしかった。
本編の演出はそれまでのストーリー展開上、どうしても、安っぽさをぬぐえないからだ。それまでのストーリー展開によっては、3人とも死にかけていて、1人だけ復活するというのもありなのかもしれないが、この作品に関してはそれはNGだ。
それとこれだけは言っておきたい!中国映画は空を飛ばないと駄目なのか?しかもいかにもワイヤーで吊ってますって感じの飛び方・・・。飛ぶなら、飛ぶで、もっとドラゴンボールの舞空術のように滑らかに飛ぶか、いっそのこと飛ばないかにしてほしい。心から切に願う。

と非難ばかりしてますが、この映画、キャストが日中韓のトップ・スターを集めただけでなく、スタッフもまたビッグ・ネームが集まってます。
「グリーン・デスティニー」の撮影、美術コンビ。
「キル・ビル Vol.1」「少林サッカー」「カンフーハッスル」のVFXスーパーバイザー。(だからCGが安っぽいのかも?)
パイレーツ・オブ・カリビアン」の音楽。
スパイダーマン2」「マトリックス」三部作のアクション振り付け。
それなのに、この仕上がりは何なんだ!?と言わずにはいられないほど、ひどい仕上がりです。正直ストーリーそのものは多分、面白いはずだし、キャスト・スタッフも問題ない。やはり、問題は監督だ!!監督の演出次第で映画ってものはこうも変わるものか?というのを学べたというのが、今回の作品の良かった点でしょうか?

ま、エンド・ロールの一番最初に主役として真田広之の名前が、アメリカのスクリーンに出てきた時は、同じ日本人としてわけもなく嬉しかったりもしましたが・・・。
そしてヒロインのセシリア・チャン。個人的にはちょっと今後が楽しみな女優さんです。最初のぱっと見はすごく綺麗な印象があったのですが、ストーリーが進むにつれて、そこまで美人でもないかな?(女優というくくりの中では・・・って意味で)と思いつつも、最後の方は、また何かひきつけられてしまっていました。
そしてチャン・ドンゴン。彼ほどの俳優が牛に追われるシーンを必死に撮影していると思うだけで、笑えてしまうのですが、彼の役柄的に、物語が進むにつれて、どんどん感情移入していけるキャラクターです。他の2人の俳優の役柄は悪なのもあるが・・・。生まれてすぐ奴隷になり、大人になるまでずっと這って生きてきた人間が、あまりのスピードで時空を超えてしまうなんて、すごい発想です、ほんと・・・。
そして「香港国際警察」で、見事にジャッキ・チェンの相棒を務めたニコラス・ツェー。映画の中で一番の悪役なのに、単なる冷酷なだけではない、この男の真実もまた時に哀しい。

やっぱりこうやって見るとすごく豪華な役者がそろっている。それなのに・・・。これで真田さんにハリウッドからのオファーが来なくなったら、どう責任取ってくれるんだ、この監督は!?

一口コメント:
監督のひとりよがりで、歴史SF大作となりうる作品が、大金をつぎ込んだコメディー映画になってしまった・・・。

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