ミッション:8ミニッツ SOURCE CODE |
韓国出張の帰路、大韓航空ソウル発ロサンゼルス行きの機内で見た作品。アメリカでは随分前に公開され評判も高かったが、見逃していた作品。
ある日、コルターはシカゴに向かう列車の座席で目覚める。目の前の女性が、親しげに話しかけてくるが、彼は自分がなぜここにいて、彼女が誰なのかわからなかった。陸軍大尉のコルターは、アフガニスタンで戦闘ヘリを操縦していたはずだった。
鏡を覗きこんだ彼の眼に映ったのは、見知らぬ別人の顔。所持していた身分証明書には、別人の名前が記されていた。そして突然、車内で大爆発が発生―――。
コルターが意識を取り戻すと、目の前のモニターにグッドウィン大尉が映し出されている。彼女の説明によると、"ソースコード"と呼ばれる特定の人間の過去の意識に8分間だけ入り込むことができるシステムによって、同一犯による次の爆破事件を未然に防ぐための作戦だという。しかし8分間の過去を繰り返すことは何度でも可能だが、既に起きてしまった過去を変えることはできないという。
何度も同じ8分間を繰り返す中で犯人の手がかりを捜すと同時に、アフガニスタンにいるはずの本来の自分・コルター大尉について調べてくれるよう、自分の対面に座る女性クリスティーナに依頼する。果たしてコルターは犯人を探し出し、本来の自分を取り戻ることができるのだろうか?
久しぶりに良質の脚本ドリブンのハリウッド映画を見た。
タイムトラベルと言えば、タイムトラベル作品なのだが、あくまでもそれはこの作品の脇役というか、味付けの1つであり、メインディッシュではない。今までのタイムトラベル作品は過去を変えることで現在、あるいは未来を変えるというのが作品の大きなテーマであった。しかしこの作品のテーマは過去を変えることではない。
そこが今までのタイムトラベル作品とは大きく違う。この作品の主役はタイムトラベルではなく、過去にヒントを得て、未来に起こるであろう爆破テロを防ぐという、あくまでも謎解きであり、それに伴う人間ドラマである。
大前提として、1人の記憶の中に入り込むだけのシステムのはずなのに、その人の記憶以外の部分にも入り込めてしまうという大きな矛盾があるが、そこはその列車に乗っていた人たちの記憶をいくつもつなぎ合わせて「マトリックス」のような仮想空間を作り上げて、そこに送り込まれたんだろう・・・と自己解釈を付け加えて見るという柔軟性を持つことで、この作品の世界観に入り込んでしまえば、あとはスピーディーな展開と謎解きの面白さ、そして後半から入ってくる親子愛・恋愛要素の入った人間ドラマに最後まで飽きることなくのめり込むことができる。
犯人探しにタイムトラベルを1つの要素として足したのが、この脚本の白眉とも言えるのだが、設定としてはSFの設定なのに、SFらしさを排除し、謎解きと人間ドラマに焦点を当てたのがこの作品の成功ポイントかもしれない。
設定が複雑なはずなのに、非常にわかりやすい描写にしてあるのは脚本の力というよりは監督の手腕かもしれないが、これらの要素を90分ちょっとで描ききっている点も評価したい。
また同じ8分間を何度も繰り返しているのに飽きることなく見られる画面構成力も素晴らしい。これは間違いなく監督の手腕。
そして、この手の作品としては極めて短い上映時間でありながら、犯人探しと自分の過去探しという2つの謎解き要素を絡めつつ、最後に感動大作に仕上がっているのだから、素晴らしいの一言に尽きる。
そして犯人探しが一段落してからの展開も、この作品を他の謎解きサスペンスとは一線を画している。
=感動で泣けるサスペンス=
この作品にキャッチ・コピーをつけるなら、こんな感じだろうか?
これはもちろん主人公と父親の電話のシーンと、最後の8分間で列車に同乗していたコメディアンが乗客相手に笑いを取るあたりからの一連のシーンのこと。「ショーシャンクの空に」を見終わった直後のスカッとした感動につながるものがある。
冒頭にも書いたが、久しぶりにハリウッドのハリウッドらしい脚本ドリブンの作品でした。日本でもこういう作品が作られる日がいつか来るのだろうか?