| コ ー ル |
予告編を見て、久しぶりに「面白そう!」と思えた作品。3人の犯人が3人の家族をそれぞれに誘拐するというストーリー。そして「アイ・アム・サム」のダコタ・ファニング、「スイート・ノベンバー」のシャリーズ・セロン、「ミスティック・リバー」のケビン・ベーコンと見応えありそうなキャスティングも楽しみだった。
カレンは将来を有望視される医者である夫ウィル、娘アビーと共に裕福な生活を送っていた。しかしウィルがシアトルへ出張に出かけた日、ジョーと名乗る男にアビーを誘拐されてしまう。
彼は4回の誘拐を成功させてきた犯罪者一味のボスで、彼の仲間は妻のシェリルと、従兄弟のマーヴィン。マーヴィンが子供の身柄を拘束する間、ジョーが母親に身代金を作らせ、その金を父親経由でシェリルが受け取る。3人の家族をそれぞれ別の場所で監視することで、彼らは完全犯罪に成功してきたのだった。
カレンは銃を取り出し、ジョーの頭につきける。しかし「30分ごとに仲間に連絡しないと娘は殺される。お前が撃てば、二人死ぬ。俺とアビーだ!」というジョーの言葉が、カレンから抵抗する力を奪った。だがアビーには、一度発作が起これば死に至る喘息の持病があることを告げられ、動揺するジョー。
一方、マーヴィンはアビーを連れて、隠れ家に到着。そしてシアトルでは、シェリルがウィルに接近し、彼をホテルの部屋に監禁する。ここまでは何一つ問題なく、計画通りに進行していた。しかし、アビーの持病が、彼らの計画に少しずつ狂いを生じさせていく―――。
サスペンスというジャンルにおいて、重要な要素は何だろう?今までにない斬新な設定と、自分の身にも起こりうるであろうというリアリティ。自分の中ではこの2つの要素が最重要である。
その点において、この作品は3人の犯人が3人の家族をそれぞれに誘拐・監禁してしまうという設定が素晴らしい。確かにこれなら完全犯罪も成功しそうだと思えるし、SF映画のように特別な機械を持っていたり、特殊な技能を持っている必要もなく、普通の一般市民でも可能な完全犯罪である点が、もう一つの要素であるリアリティを持たせている。
また3人の犯人の設定も面白い。非常に頭の切れるジョーと、人懐っこい雰囲気のマーヴィン、そして男を魅了するためにグラマーな体を武器にするシェリル。よくできた3人組だと思う。
それだけでも十分に作品としては面白いのだが、そこにアビーの喘息という設定が入り込むことでサスペンスとしての魅力を更に深くしている。
犯人がそんな簡単に人を殺そうとしない点も、またこの作品のリアリティの一要素である。(最近のサスペンスは簡単に人を殺しすぎて、リアリティが薄い)
だが最後の高速道路にセスナで着陸するシーンは、今までのリアリティをぶち壊しにしていて、せっかく一級サスペンス作品となりえたのにもったいない終わり方だなと感じずにはいられなかった。
キャスティングについて言えば、ケビン・ベーコンは「ミスティック・リバー」のような、渋い善人役もいいが、やはり悪役としての演技のほうが冴えるなと感じたし、シャリーズ・セロンは演技力に関していえば、正直ぐっと来るものがあるわけではないのだが、見ていて何かひきつけられるものがある。マリリン・モンローのような魅力ではなく、かといってオードリー・ヘプバーンのような魅力でもなく、シャリーズ・セロン独自の美学とでも呼ぶべき魅力があると気付かされた作品でした。