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広告代理店に勤務する佐久間は頭脳明晰、容姿端麗で、仕事、恋愛、人生のあらゆるゲームの勝者。しかしある日、担当していたビックプロジェクトの中止が、たった一人の男につぶされる。その男とは「ミカドビール」の副社長に若くして就任した葛城である。スタッフの前で無能呼ばわりされた佐久間にとっては、人生最大の屈辱だった。
その夜、偶然、葛城の長女樹理と出会う。彼女は愛人の子で、3年前に母が死んで、葛城家に引き取られたが、この家には、父と正妻、そして妹がいて、自分の居場所がなく、家を飛び出すことにしたのだという。
彼女は佐久間に対し、「私のこと誘拐しない?」と話を持ちかける。葛城に敗北感を味わされた佐久間はそれを引き受け、葛城とのゲームが始まる。
その後の展開は書いてしまうとサスペンスの面白さがなくなってしまうので、あえて書かないが、すばらしい頭脳戦が繰り広げられる。最初のうちは佐久間の一人舞台だが、頭脳"戦"なのだ。「交渉人」のような手に汗握る展開だ。
山は3つあり、1つ目の山は、よくできた誘拐劇だが映画でなくて、テレビでもいいんじゃないのか?と思った程度だったが、2つ目の山(個人的には一番好き)は、これぞサスペンスの醍醐味!的なストーリーが進行し、世の中上には上がいるもんだなぁと感心してしまった。そして最後の山だが、これはちょっと展開が予想できてしまい、内容的にはテレビドラマの最後の見せ場と同程度だったので、個人的には2つ目の山と3つ目の山が交換できればより素晴らしい作品になったのではないかと思うが、ストーリー展開上それは無理なので、仕方がないと思いつつも、少し残念だった。
とはいえ、今までの邦画にはないサスペンス作品であり、ハリウッドの一流サスペンス作品にも何ら見劣りすることのない脚本であったと思う。邦画というとどうしても、見た目の派手さや複雑な伏線を張り巡らせたサスペンスではなく、心理面の美しさを追及したような作品が多いという印象が強かったのだが、今年自分が見た邦画に関していえば、心理面の美しさを追求(「13階段」)しながらも、見た目の派手さ(「陰陽師」や「ドラゴン・ヘッド」)や複雑な伏線(「T.R.Y.」や今作品)をも取り込んだ作品が多く、今後の日本映画に期待が持てる1年だったのではないだろうか?
話がずれてしまったが、ストーリー展開以外にも佐久間の高層マンションの部屋から見える東京の夜景や佐久間の運転する外車などは今までの邦画にはない映像であった。おそらくハリウッド映画(特にニューヨークを舞台にした金持ちのラブストーリー)で見られる映像をモチーフとしているのではないかと思うが、そのハリウッド・テイストの映像の中に藤木直人がいるのは正直違和感があった。藤木直人がどうこうという意味ではなく、おそらく日本人、もしくはアジア人ではどうしてもそういったシーンは不釣合いなのだと思う。
そういった意味でハリウッドこの映画がリメイクされれば、3つ目の山も、日本人が不釣合いなシーンもより精度の高い映画として世界的にもヒットするのではないかと思います。
しかし、携帯電話とインターネットのBBS(掲示板)のみを使った誘拐、そして携帯電話のムービーを一般市民が使っているのはハイテク大国日本ならではだと思うので、(SF映画やスパイ映画などであれば当然なのだろうが、現代の一般市民が主人公なわけだから、日本ならではだという意味)この辺りのテイストは消さずにいてほしいとも思う。