ディパーティッド/Departed
採点:★★★★★★★★☆☆
2006年10月15日(映画館)
主演:マット・デイモン、レオナルド・ディカプリオ、ジャック・ニコルソン
監督:マーティン・スコセッシ

香港映画「インファナル・アフェア」のハリウッド版リメイク。ブラッド・ピットがリメイク権を購入した当時は、ブラッド・ピットとディカプリオが競演という話もあったが、ブラッド・ピットはプロデューサーになり、マット・デイモンが抜擢された。

ハリウッド版の舞台はボストン。マフィアのボス、カステロは幼少時代から育ててきたサリバンを警察に送り込み、彼から情報を得ようとする。一方の警察は、ビリー・コスティガンをマフィアに送り込み、潜入捜査をさせる。
しかし、次第にカステロも警察も自分たちの組織の中に裏切り者がいることに気づき始める!!

といったメインのストーリーというか、設定は香港版とまったくといって良いほど、同じだが、大きく異なる設定が2つある。
1つ目は主役の2人がお互いに同じ女性を好きになってしまうという設定。そして女性も2人を受け入れてしまうという、なんともハリウッド的な設定である。この設定は、自分的にはOKだ。香港版のように2人が別々の女性を好きになるという設定のほうが自然だが、ハリウッド版の設定のほうが、映画に緊張感を持たせるという意味では、優れているから・・・。要するに、主役の2人が恋人を通して、接近するかもしれないという、オリジナルにはないドキドキ感が加わるのだ。
そして2つ目はクライマックス。これはおそらく、スコセッシ好きな人には面白いかもしれないが、そうでない人にとってはやりすぎかもしれない。オリジナル版のラストはなんともいえない悲壮感に包まれて劇場を後にしたのだが、こちらの場合は、悲壮感はあるにはあるが、それ以上にあきれてしまうかもしれない。実際、劇場では笑いが起こっていたし・・・(衝撃的であることだけは保証します)。
ドラマとしては最後はちょっと行きすぎだが、アメリカ的な軽い感じの作品としては、良いエンディングとも言えるかもしれない。
ラストについて、もう1つ。ラストシーンはあっけなく殺しすぎだと感じた。オリジナル同様にディカプリオが死ぬ時に(しかも同時に3人も・・・)、あんなに簡単に死んでしまうのはどうなんだろう?あんなに軽く死んでしまうと、ディカプリオの死がとても軽くなってしまうし、描写としては違う意味で面白い(劇場はかなり笑っていた)が、主役の1人であるディカプリオの死を軽く流しすぎな感じがぬぐえないのは残念だ。

さて、実際に見てみても、上々の作品と言える。ストーリーが良いのはオリジナルから考えて、そこそこのものに仕上がると思っていた。それ以上に大きかった要素はキャスティングかもしれない。
オープニングから順を追ってみよう。まず最初におぉ!と思ったのは、やはりジャック・ニコルソン。この俳優、悪い男を演じさせたら、最高だ!と言わんばかりに渋い、かつ、コミカルな演技を披露してくれる。
そしてマット・デイモンの子供時代を演じた子役。演技そのものに感心したのではなく、この子役を見つけたキャスティング・ディレクターを誉めたい!映像的に、子供の顔からマット・デイモンの顔へと変化していくのだが、すごく似ているのだ。鼻のラインといい、目の垂れ具合といい、すごく似ている。「世界の中心で、愛をさけぶ」の大沢たかおと森山未來と同じくらい、あるいはそれ以上に素晴らしいキャスティングだ!

そして主役の2人。ディカプリオは良い演技を見せていた。警察官でありながら、マフィアに潜入捜査している都合上、人殺しの片棒を担いだりして、次第に精神的におかしくなっていく過程を丹念に演じている。マフィアとしての悪の顔と警察官としての正義の顔をとてもうまく区別して演じているのがよくわかる。中でも事件が解決し、警察に戻ってきた時に見せる笑顔は精神的苦痛から開放された主人公の心理を一目でわからせるだけの演技だ。
一方のマット・デイモンはといえば、正直いまいちだった。もともとマフィアであるという設定なのだが、顔の作り上の問題のせいなのか、どうしても悪人には見えないのだ。とはいえ、警察官としてキャリアを積んでいく過程の成長振りは見ていて頼もしい。エリート街道をまっすぐに突き進んでいく強者としての様子は、他の映画でも見てみたいと思った。そしてそれとは裏腹にマフィアのボス、カステロには逆らえないという意味での弱者の演技は、もうマットの十八番ともいっていいかもしれないくらいにうまい!一見、成功者なのだが、実は繊細で傷つきやすく、ちょっとおびえた感じの演技をさせたら、ハリウッドでも5本指に入るのではないかと個人的には思っている。

どうやら、スコッセシの次回作もディカプリオ主演で決まったらしい。これで「ギャング・オブ・ニューヨーク」、「アビエーター」、そして今作とあわせて、4作連続の起用となる。4作連続同じ監督&主演というのは前例がないのではないだろうか?
近作はリメイクということで、原作のレベルが高かったこともあり、ある程度評価は高くなると思うが、次回作はいったいどうなるのやら?

一口コメント:
原作のレベルの高さ故に、スコセッシ作品としては久々に、安心して見られる作品に仕上がってます。

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