キング・コング |
1930年代。映画監督カールは、史上最大の冒険映画を撮るため、恐慌下のNYから"スカル・アイランド"ヘ向かう。脚本家のジャックや女優アンらと島に上陸するが、怪しい原住民に捕らえられてしまう。
危機一髪で島から脱出した一行だったが、アンが再び原住民に捕らえられ、彼女を救出するために再び島へと戻る一行。その島で見たのは巨大な恐竜や巨大な昆虫。そして巨大なゴリラ、キング・コング。
キング・コングからアンを無事助け出した一行はニューヨークに戻り、キング・コングを見世物に一儲けしようと企てるのだが・・・。
大きく分けると物語の主軸は3つ。まずはニューヨークから島へと向かうまで。次が島での出来事いろいろ。そして最後が、キングコング in ニューヨーク。
最初の部分は物語の導入部分ということもあり、正直そこまで面白くない。この手の映画の場合、通常、観客を物語りに取り込むために、オープニング直後に何かインパクトのある映像を見せるのだが、それが薄いともいえる。
しかし、第2幕となるスカル・アイランドでは、「インディー・ジョーンズ~魔宮の伝説~」でスピルバーグが見せたグロテスク映像の上を行く、グロテスクな映像が、これでもかというくらいに登場し、徐々に物語りに引き込まれていく。
そして第3幕。舞台をニューヨークに移し、キング・コングとヒロインの刹那的な恋の結末を描き出す。
この手の映画は感情移入も何もないのかもしれないが、感情移入できないからこそ、浮かびあがる欠点が多々あった。その中で大きなものを3つ指摘したい。
1つ目はアンを救いに、一度脱出した島へと戻る一行の決意。正直、アンがこの一行にとって、そこまで重要な人物ではない。はっきり言って、彼女と恋に落ちたジャックのわがままに、他の船乗り達は付き合わされる形(カールだけはカメラ片手にしっかり商売をしていたが・・・)。しかも彼女1人を救うためだけに、何人もの船乗りが殺されるし、ジャックやカール自身も何度も危機的状況に陥った。そして島へと向かう途中の船での様子から考えれば、ジャックとカール以外がアン1人を救うためだけに島に戻るという決断がおかしい。逆に言えば、せっかく導入部分を長い時間を割いて見せているのだから、そこにジャックとカール以外の乗組員がアンを救いに行くのに十分な理由を盛り込めれば、もっと良い作品となっていただろう。
2つ目は島の中で何度も危機的状況に遭遇し、そのたびに、体に傷を負っていったり、服が破れたりしていたのだが、シーンが変わると傷が治っていたり、服が元通りになっていたり、汚れがきれいに落ちていたり・・・といったのが、目立っていた点。こういうことは映画ではよくあることだが、感情移入していればそこまで気にならないのだが、今回はすごく気になってしまった。
そして最後はニューヨーク。エンパイア・ステート・ビルの頂上のシーンなのだが、地上数百メートルという場所なのにも関わらず、細いビルの先端の外部に付いた非常用のはしごを何事もないかのように上っていくアン。そしてそれを追ってくるジャック。この二人は高所恐怖症という言葉を知らないのだろうか?と思わずにはいられない。そしてこれほどの高さであるにも関わらず、まったくもって風が吹いていない点も違和感を覚えた。そして極めつけは、最後の最後アンとジャックが抱き合うシーン。先ほども言ったように地上数客メートルのビルのてっぺんで、柵も何もない状態なのに、立ったままで抱き合ってしまう二人。感情移入していれば、すごくロマンチックなシーンなのだろうが、感情移入できていなかったせいか、とりあえず、座れよ!と心の中で叫んでしまった。
とここまでは非難ばかりしてきたが、ここからは誉めていきます。
まずはなんといっても特殊効果。キング・コングの手の中にいるヒロイン。手に抱えられたまま、森の中を失踪するシーンや3匹の恐竜と戦いながら、一度手から離し、再び空中でキャッチするなど、見ていて非常に楽しい。
そしてキング・コングといえば、顔の表情。中でもアンがキング・コングの巣(なのか?)のような場所でコメディーを演じているシーンにおける喜怒哀楽の表情は素晴らしい。特にそんなの面白くもなんともない、って感じでフンッ!とする表情は最高。劇場内も爆笑でした。
そして特殊効果における一番の見所は狭い谷の間を何十頭の恐竜に追いかけられながら、逃げる人間たち。何十頭もいる大きな草食恐竜に追いかけられるだけでなく、さらにその足の間を抜けてくる小さな(といっても人間よりは大きい)肉食恐竜たちとも戦いながら逃げるというシーン。時に銃を撃ち、時に蹴りを入れ、時に巨大な足に踏み潰され、といった感じで「ジュラシック・パーク」さながらの様相を呈す。圧巻なのはがけっぷちぎりぎりで崩れゆく崖の端をぎりぎりジャンプで交わしていく人間の姿とそこから落ちていく巨大な恐竜たちの図。
今年の冬、最大の期待がかかるブロック・バスターですが、個人的には監督の前作「ロード・オブ・ザ・リング ~王の帰還~」ほどの興行までは行かないものの、「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」と同レベルの興行を望めるのではないかと思います。