パーシージャクソンとオリンポスの神
採点:★★★★★☆☆☆☆☆
2010年2月28日(映画館)
主演:ローガン・ラーマン、ブランドン・T・ジャクソン、アレクサンドラ・ダダリオ
監督:クリス・コロンバス

アメリカでは「ハリー・ポッター」を超えてベストセラーに、日本では「アバター」のV10を阻んだ作品ということで見てきました。

何分間も水にもぐれたり、古代ギリシャ文字が読めたり、不思議な能力を持つパーシー。ある日、彼は翼の生えた魔物に襲われたのをきっかけに、自分が神と人間の子供、海神ポセイドンの息子であるという事実、さらに彼は全能の神ゼウスの武器である雷撃を盗んだ疑いをかけられているという事実を知ることになる。そしてそのせいでパーシーの母親は冥界の神ハデスにさらわれてしまった。
パーシーは自分の疑いを晴らし、母親を助けるべく、親友で半人半獣のグローバー、アテナの娘・アナベスと共にハデスの元へと向かう・・・。

正直、微妙。
何かと比較される「ハリー・ポッター」が徹頭徹尾ファンタジーの世界に属している一方で、この作品は神と人間の子供という設定上、神話=ファンタジーと現実世界が入り混じっており、それをロードムービー形式で見せていく。
それ自体は特に問題ない、というかむしろ新鮮で面白い。ニューヨークからパルテノン神殿の実物大レプリカがあるテネシー、ギャンブルの都ラスベガス、そして映画の都ハリウッド。映画の中でアメリカ横断を体験できるという意味では非常に面白いのだが、例えば、NYの高層ビルの普通は行けないエレベーターの最上階の扉が開くと、そこが神の世界への入り口だったり、高校生のはずの主人公3人がラスベガスでギャンブルに興じたり(年齢制限で21歳以下は法律でギャンブルが禁止されている)、HOLLYWOODサインのすぐ横に冥界への入り口があるという設定は興醒めしてしまう。せめて舞台をヨーロッパにして欲しかった、というのが正直なところだ。せっかくのパルテノン神殿での緊迫感が台無しである。

ただし、通常なら神々しさを前面に押し出すはずの神様が人間臭さ満点に描かれている点は好感が持てる。神々が地上に舞い降りて、人間の女性と子作りに励むというのは、実はギリシア神話に忠実だし、いたずらが好きだったりする点も忠実に描かれている。
中でもギリシア神話でもトップクラスの知名度を誇るゼウス、ポセイドン、ハデスの3神が登場している点も入り込みやすいし、ミノタウロス、ケンタウロス、メドゥーサ、ヒュドラのような敵キャラがいる点も見ている分には面白い。

がしかし、SFの醍醐味ともいうべき、目で見て楽しむはずの映像に目新しさがない。それこそ、「ハリー・ポッター」や「ナルニア国物語」と比べると、映像的には1ランク落ちる。
しかも年末に、「2012」や「アバター」といった映像技術に関しては、歴史的な大作を立て続けに見た後だけにその差が歴然としてしまう。

さらに、肝心のストーリーに深みがない。ストーリーの核とも言うべき、ゼウスの武器、稲妻を盗んだ犯人が、窃盗の神の息子ではなく、ポセイドンの息子という設定にやや無理がある。これが窃盗の神の息子では、当然盛り上がりに欠けるのだが、最初に疑われるのが窃盗の神の息子で、そいつと一緒に旅に出るくらいの設定にするくらいの工夫は欲しかった。
また主人公が駄目男ではなく、最初からある程度強いというのもどうかと思う。こういう物語の場合、駄目な主人公が徐々に成長していく過程で観客が物語に入り込んでいくのが常だと思うのだが、この作品に関しては、それがないため、それがそのまま深みのなさにつながったのかもしれない。

そしてクライマックス。一緒に旅をしてきた3人+救出した母親の計4人のうち1人は帰れないという状況になった後のあまりにもあっけない流れ。最初は主人公が自分が残るから!と言うのだが、すぐに仲間の1人が自分が残ると言った直後、即効で帰ってしまう3人。あまりにもひどい・・・。
ここも敵が現れて4人が道連れになるか?1人が犠牲になるか?くらいの描き方はできなかったのだろうか?

といった感じで設定そのものは非常に面白みがあり、物語の膨らまし方次第では続編も見てみたいという気持ちもあるが、1作目を見る限りでは正直、続編には期待できません。

一口コメント:
この作品=(ハリポタ+ドラゴン・クエスト)x現実÷3、です。

戻る