トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン Transformers Dark of the Moon |
独立記念日直前の公開が恒例行事となったこのシリーズも早や第3弾。今回はシリーズ初の3D作品ということで期待していた作品。
1969年、アポロ11号によって人類初の月面到達が成功した。その際、アポロ11号よりも先に不時着していた思われる宇宙船の残骸が発見されていたのだが、NASAとアメリカ政府はそれをトップ・シークレットとした。
40年後、トランスフォーマーの存在が公となり、トランスフォーマーの中でも人類に親密なオートボットは人類との同盟関係を結んでいた。しかし、ある時アメリカ政府が長い間隠していた事実をオプティマスが知り、オプティマスは他のオートボットを引きつれ、月へと向かうのだった―――。
ジェームス・キャメロンとスピルバーグの強い勧めで「アバター」と同じ3Dカメラで撮影したということで、ちまたに溢れるエセ3Dとは一線を画す3D映像になっている。2Dで撮影したものを3Dに変換したものと最初から3Dカメラで撮影した作品には、やはり大きな違いがある!ということ再認識させてくれた作品でもある。
更にロボットという人工物のため、「アバター」よりも3Dが効果的で、実写としては歴代最高峰の3D映像と言える。
オープニングが宇宙空間での小型宇宙船と戦闘機の銃撃戦のため、「スター・ウォーズ」シリーズか?と一瞬思ってしまうこともあり、来年から3D化されるこのシリーズもこんな感じになるのだろうという予行演習にもなる。
でもって肝心の本作だが、月面への不時着映像からアポロ計画当時の過去の映像が入れ込まれたり、他の作品のチェース・シーンがこの作品で使われたりと、最新のCG技術と3D映像を使っているのに、なんとも不思議な作品でもある。
過去2作品を見た人は、既にわかっている通り、この作品に何か深いテーマを求めたりするような人はいないと思うが、予想通り批評家からは大不評。
独立記念日直前に公開しているのだから、そんなものを期待する方が間違いで、いかに映画館の中で盛り上がって、その場を楽しめるか?ということが大事だと思うのは自分だけだろうか?
というわけで個人的には大満足の作品でした。
簡単に言えば、前作の焼きまわしと言えば、焼きまわしでストーリーは穴だらけだし、笑いを取りに来るその方法も同じ。
まずヒロインがミーガン・フォックスからビクトリア・シークレットのモデルでもあるロージーに変わっただけで、体をなめ回すような足元からのバストアップまでのカメラアングルは同じだし(それでももちろんエロイが・・・)、無駄にセクシーな衣装も同じ。そこはさすがマイケル・ベイ!である。このロージーもセクシーで綺麗だが、セクシーさという意味ではミーガンに分がある。その一方で話し方とか雰囲気がキャメロン・ディアスに似ている感じもあり、映画公開前から世界で最もセクシーな女優に選ばれていることもあり、第2のキャメロンになる可能性も高い。
前作で登場した小型の2人組ロボットは今作には登場していないが、変わりに別の2人組が登場している。しかも役回りも全く同じで笑いを取りつつ、最後に大きな見せ場もある。なので前作と同じロボットではなく、新しいロボットにしたのか?疑問が残る。
ヒロインはミーガンが生意気で、スピルバーグが交代させた・・・という噂もあるが、ロボットは生意気とかないだろうし、むしろ生意気なロボットの方が愛すべきキャラクターになるのではないだろうか?
そして主人公の両親。こちらもまた前2作同様、スケベな会話で笑わせてくれる。そして主人公自身も就職活動をしているという設定が、これに輪をかける。そして主人公なのに、相変わらずバカな一面も見せてくれる。オバマ大統領からメダルをもらったことを"そこじゃないだろ!"というタイミングで鼻にかけるシーンが不完全で親しみやすい主人公像を膨らませてくれている。
といった感じが今までのシリーズのお約束とも言うべき部分だが、もちろん新しい要素もある。
まずロボットが乗物の状態でも武器を使えるようになっている。前2作では乗物の時は乗物であり、ロボットの形態に変形して初めて武器を使っていたのだが、今作では車の状態でも様々な武器が使えるようになっている。
そして今回はシカゴの摩天楼が舞台ということで、今までの映画では見たことのない斬新な映像が見られる。人間コウモリとでも言うべき、ヘリコプターからの降下。腕と足、足と足の間に大きなカエルの水かきのようなものが付けられ、高層ビル群の間を自由自在に体一つで右に左に抜けていくシーンは3D効果も手伝って、今までに見たことのない映像を作り出していた。名探偵コナンの怪盗キッドのハングライダーによる滑空シーンが実写化されるとこんな感じだろうか?そういえばトグロを巻きながら街を破壊していく敵も、どこかで見たことあるなと思っていたら、日本のアニメーション「ベクシル」に出てきていた。コナンと言い、ベクシルと言い、日本のアニメの影響力にも驚かされる。
またビルの上半分が傾いて倒れそうになるシーンで、窓ガラスを割って外に出て、傾いた側面を滑り下りながら、どうやって助かるのか?と思っていたらガラスを撃ち、それで出来た穴から別のフロアに転げ落ちる。そしてそこでまた反対側の窓ガラスに向かって滑っていき、今度はガラスを割ってしまうとそのまま地面に落下!という人間ピンボールのシーンは、この穴だらけの脚本でも、この部分だけは凄い!と思える今までにない新しい発想に感動すら覚えた。
今までの2作と最も大きく違う点が、人間が活躍する点。小さなアリでも集まれば象よりも強い!というよくある格言を描いている。前作まではオートボットの助けを借りて、人間が敵であるディセプンコンを倒すシーンはあったが、今作では人間単独で倒せるようになっている。
その一方でロボットが非常に人間臭くなっているのも見逃せない。ロボット同士ではあるが、"壊す"のではなく、手や足を引きちぎったり、なぜか赤い血のようなものが殴られたり、切られた部分から出たり・・・。
自分が一番感心したのが、ロボット同士の戦闘シーンの描写が非常にわかりやすくなっていること。これは上述の人間臭くなっていることが影響していると思うのだが、「マトリックス」のように拳が顔面に当たる瞬間がスローモーションになったり、香港映画のように引きの画とUPの画の組み合わせが絶妙だったりして、ロボットの一挙一動が前作、いや今までのハリウッド映画と比べて格段にわかりやすく描かれている。香港映画のアクション監督でも入ったのだろうか?
まとめるとパート2を3Dでヒロインと舞台を変えて作り直した感が拭えないものの、お祭り映画としては、相変わらずの楽しめる作品です。
3部作という話だったが、どうやらこの作品の結果次第では第4弾も作られるらしいが、次はどこが舞台になるのだろうか?今から楽しみです。