トランスフォーマー/リベンジ TRANSFORMERS Revenge of the Fallen |
衝撃のCG革命を見せた前作から2年。アメリカでは水曜公開の初日歴代新記録を大幅に塗り替え、全日としても金曜公開の「ダーク・ナイト」に続く歴代2位の記録を打ちたて、公開5日で2億ドルを超えた作品。そして個人的には今年期待している2大作品の1つということで、見てきました。
オプティマス・プライム率いるオートボットは、ディセプティコンの残党狩りを行う特殊部隊NESTの一員として日々戦っていた。NESTは上海で油圧ショベルに変形していたディセプティコンを倒すが、死の間際に復活を予感させる言葉を残すのだった・・・。
一方、普通の生活を取り戻したサムは、家から遠く離れた東海岸の大学に引越すための準備をしていた。ミカエラと遠距離恋愛に備えて、ライブチャットの話を電話でしていた時に不意にキューブの欠片を発見する―――。
前作ほどの新鮮さはないし、ストーリー的にも前作より穴が多い。もちろん前作もストーリー的には穴が多かったが、それ以上に多い。それでも、それを補って余りあるだけの映像を楽しめることは間違いない。
もちろん前作同様、日本人女性への受けの悪さも間違いないだろうが・・・、ガンダム世代の自分や30代前後の少年の心を忘れない人にとっては、ある程度の満足を得られる作品に仕上がっているし、前作を見て、面白いと思った人は本作の良し(映像)悪し(ストーリー・人物描写)はわかっている。その上でこの作品を見ようと思った人なら、基本的に楽しめる作品に仕上がっている。
ただ正直、前作の方が良かった!というのは否めない。だからといって今作がつまらないわけではない。単純に前作で面識ができてしまった分、新鮮さという部分で驚きが欠けた。「ジュラシック・パーク」で初めて見た恐竜の衝撃度を超える恐竜に出会うのは不可能なのと同じ理屈だ。
映画のオープニングとしては、過去に例を見ないほどのハイレベルなオープニングと言っても過言ではない。
ドリームワークスとパラマウントのロゴにトランスフォームの機械音をかぶせるオープニング。音だけでここまで盛り上がれるものか!?と自分で驚く。そしてすぐに上海でのロボット同士の壮絶な戦いが始まる。新たに増えたオプティマスの仲間たちのロボット同士の戦いに加え、人間軍NESTとの連携も素晴らしい。特にオプティマスが新しい装備であるソードを駆使して、上海の街を破壊しながら、敵を倒していくシーンは他の作品であれば、クライマックスのシーンになってもおかしくないほどの迫力。
その後は前作同様、家族団らんとでも呼ぶべき、コメディー・パートが繰り広げられる。ここの主役は前作同様、お母さん。一人暮らしの準備をしている息子に寂しさのあまり涙を流したかと思えば、大学寮では学生にもらったドラッグを口にしてしまい、他の学生にジャンピング・エルボーを食らわせて大いに笑わせてくれる。
バンブルビーもお母さんよろしく笑わせてくれる。やはり寂しさから涙してみたり、拗ねたりするのだ。人間よりも、人間らしいロボットである。
さらに前作では包帯姿で笑わせてくれたペットの犬が2匹になっており、今回はストレートに下ネタで笑わせてくれる。
そしてさらにマイケル・ベイの自虐ネタも満載。「バッドボーイズ2バッド」のポスターにサムが走り書きするシーンはその際たる例。
そしてこの作品のロボットと並ぶ魅力の1つ。ミーガン・フォックス。前作の影響で世界で最もセクシーな女優を二連覇している彼女も数段レベルアップ。最初の登場シーンはバイクの整備士として、短パンのジーンズで、とてもセクシーな体勢でバイクにまたがっている。前作の名シーン、ボンネットと並び、マイケル・ベイのこのエロイ魅せ方は天才的である。
そして自分が最も可愛いと思ったのは、"遠距離だから逢えない"けど、ライブ・チャットを指定の時間にすることという約束を健気に守ろうとするミカエラ。パソコンの前で待っている彼女の切なくも楽しそうな演技は、男心をわかったマイケル・ベイの演出とあいまって、彼女の魅力を最大限に引き出している。
そして今回、ミーガンと並び、もう1人のセクシーな女性が登場する。大学の中で彼女の方からサムを誘惑してきて、サムの部屋に入り込み、サムをベッドに押し倒し、サムにまたがり、強引に唇を奪う・・・、お前は男か!?と突っ込みたくなるほどの痴女ぶり。しかしこの彼女、実はロボットという設定になっていて、やや冷める。
というのは、この作品の設定として、金属物質に取り付いて、それを変形させるというのが大きな核として存在しているはずなのに、人間に変形できるというのは、反則である。この反則技が使えるのであれば、それこそミカエラやお母さんといった身近な人間に変形すれば、いつでもサムを殺せるし、もっと大きな視点で見れば、大統領に変形すれば、アメリカ軍すら自由自在になってしまうのだから・・・。このルールだけは守ってもらいたかった。
その後、トランスフォーマーの過去の秘密の謎解きへと物語が移っていくのだが、この部分がちょっと長い。長いのは良いのだが、その見せ方がだるい。特にこれといったアクションもないまま、昔話を1体のトランスフォーマーが延々と語るだけなのだ。そしてその話の中にいくつか謎めいたものがあり、その謎を「インディ・ジョーンズ」でインディーの息子を演じたシャイア・ラブーフが解いていく。しかもパート3で登場したペトラがこの作品にも登場するのだから、スピルバーグ恐るべしである。自分の過去の作品(しかも超人気シリーズ)を別の人気シリーズに舞台・俳優共にここまで似通った状態で登場させるとは・・・。ただし、やはり謎解きそのものは全然深くないし、謎ではないと言っても良いくらいのレベルだ。なので、この中だるみ部分を大幅にカットして2時間半の尺を2時間くらいにまとめてくれていれば、もう少し評価も上がっていた。
しかし、この中だるみも最後、エジプトが舞台の超絶バトルで忘れさせてくれる。世界遺産など壊してナンボ!的な感覚で、これでもか!という位に気持ちよく壊してくれる。このCGが地味にすごい!上海の街中での格闘シーンの背景への融合具合もすごかったが、このピラミッドでのCGはさらにすごい。ピラミッドが崩れる時の1つ1つの破片もそうだが、そこに映る影の1つ1つもとても丁寧に描かれていて、驚かずにはいられない。
さらにシーンは変わるが、自作「パール・ハーバー」でも見せた空母。ここでもCGの威力を垣間見ることができる。「パール・ハーバー」では決して沈まなかった空母が沈んでいく描写があるのだ。しかもその映像も細部まですごく丁寧に描かれている。半分に避けた船体の内部や、甲板から落ちていく人間など、本当に細かい部分まですごく描きこまれている。
ただいくらCGがすごいと言っても、前作同様、ロボット同士の戦闘シーンの描写はわかりにくい。しかも今回は敵側に7体の単体が合体した合体ロボットが登場していて、しかもその合体した後のキャラクターはどこからどこまでが、どのロボットなのかが、まったくわからない。なので、この合体ロボットと味方のロボットが組み合ったら、もう何が何だか、めちゃくちゃ見にくい。
一応、目の色を変えて、敵味方の区別はしているのだろうが、ボディーの色をもっとわかりやすくするなど、もっと工夫をしてほしかった。
そして今作から登場する新しいロボット達だが、老傭兵ジェットファイア以外のロボットはキャラクター設定が薄すぎて、全然印象がない。人工衛星に取り付いた奴もいたが、結局最後まで地上には降りてこないまま映画そのものが終わってしまったし・・・。
さらに最後の敵キャラもメチャメチャ弱い。ピラミッドの頂上に登り、色々とやってくれるのだが、パワーアップしたオプティマスに一撃でやられてしまう。
「Dragon Ball Evolution」のピッコロか!お前は?って突っ込みを入れたくなってしまうくらいに弱いのだ。やはり最後の敵は主人公がギリギリ倒せるかどうかくらいのレベルにしてもらわないと盛り上がりに欠ける。
ただし、最後の30分くらいの戦闘を通しで見ると、不思議とそこは気にならない。もっと言えば、エジプトに軍隊を無断で送って、さらにピラミッドも倒壊、国際問題間違いなし!なんて考えも見ている最中はまったく起こらない。
それこそがマイケル・ベイのすごいところでもある。
2011年に三部作完結編の公開が予定されているこの作品。しかし、第2部でここまでしてしまって、最後はどうするんでしょうか?合体もしてしまったし、ピラミッドも壊してしまった。これ以上のネタって何がある?
それでもスピルバーグとマイケル・ベイの2人なら何とかしてくれると期待して、完結編の公開を楽しみにしたいと思う。