イーグル・アイ/Eagle Eye |
スピルバーグが構想に10年をかけたとかどうとか、秘蔵っ子のシャイア・ラブーフが主演だとかどうとか、プレミアに世界一セクシーな女優となったミーガン・フォックスが来たとかどうとか、話題にはことかかない作品ということで見に行ってきました。
コーヒーショップで働くジェリーに、電話がかかってくる。双子の兄弟で空軍に勤務していたイーサンが交通事故で亡くなったのだった。
シカゴの自宅に戻る途中、ジェリーは残高を確認しにATMに立ち寄る。そこで残高が0ドルのはずの口座に75万ドルもの大金が振り込まれていることを発見する。さらに、何者かから自宅に軍事用の機材が届いていた。そして、謎の女性から電話がかかってくる。40秒以内にそこから逃げなければ、FBIに逮捕されると警告を受けるが、逃げる間もなく逮捕されてしまう。
一方、シングル・マザーのレイチェルは、息子のサムをワシントンDCのケネディ・センターで開催されるコンサートに送り出し、友達とお茶をしている最中に電話が鳴る。知らない女性からの着信で、通りの反対側の街頭モニターに息子の映像が映し出され、自分の指示に従わなければ、サムを殺すと告げられる。
FBIに連行されたジェリーは、エージェントのトーマスに無罪を主張。ひとり部屋に残されたところに、先ほどの女性から再び電話がかかってくる。彼女はジェリーのいる部屋を窓ごと破戒し、そこから飛び降りろと指示する。他にどうして良いかわからないジェリーは彼女の指示に従い、逃亡する。
女性の指示に従って乗り込んだ車には、レイチェルが乗っていた。面識のない2人は、互いに警戒心を抱くが、2人とも謎の女性の声によって自分たちが操作されていたことに気づく。
「逃走用の車に乗れ」、「連邦銀行の金庫室に行け」、「ブリーフケースを奪え」
次々と続く無理難題を何とかクリアしていく二人だったが、そこにFBIの追手が迫る・・・。そして2人は国家機密をも巻き込んだ巨大な渦に巻き込まれていく―――。
一言でいうなら、「アイ・ロボット」と「踊る大捜査線2」のC.A.R.A.S.を足して2で割った作品。要するに湾岸署管轄間内の監視システムがアメリカ全土にまで及び、それが暴走に近い状態になったというストーリーです。
構想に10年ということで10年前、1998年を振り返ってみると、日本に限って言えばまだ携帯とPHSとポケベルが同居していた時代であり、インターネットなんてものも、ようやく広がり始めた時代。そんな時にこんな構想を考えていたとは、いやはやスピルバーグ恐るべしである。
今の時代であれば、この構想を思いつく人は大勢いるかもしれないが、10年前にこの構想を思いついた人間は数えるほどしかいないだろう。ましてや、それを実写映画化しようなんて人が、一体何人いたのだろうか?
しかも数百年後の未来世界というわけではなく、ある程度近い未来というのが、またすごい。現代とはかけ離れた未来世界であれば、自分の想像した絵を描けばいいのだが、ある程度近い近未来ということで、現代の延長上にあるという設定でのある種のリアリティが必要になってくるわけだから・・・。この"現代の延長上にある近未来"というのを描かせたら、それが監督であれ、製作総指揮としてであれ、本当にスピルバーグは素晴らしい力を発揮する。「マイノリティ・リポート」でもこの"延長線上の近未来像"を見せつけられ、スピルバーグの描く世界に感嘆を覚えたものだが、数多い彼のSF作品の中でもその最たるものが「バック・トゥ・ザ・フューチャー」と「ジュラシック・パーク」だろうか?
話がそれてしまったが、今回の作品に関しては"延長線上の未来"というか、いや、むしろ"現代"であるといっても過言ではない。ただ自分たちが生きていく中では意識しない世界を描いている。しかし、これが10年前に公開されていたら、まさに"延長線上の未来"の世界なのである。
そういった意味においては、残念ながら映像的に近未来を楽しむといったことはできない。しかし、この作品はアクションが多く、特に車が激突しまくるカー・チェイス・シーンは迫力がある。とはいえ、今までに見てきた多くのカー・チェイス・シーンと比べるとそこまでの新鮮味はない。
また脚本においても、構想から10年も経ち、携帯電話が1人1台の時代になり、インターネットもここまで社会に浸透してしまった今となっては、新鮮味がないし、他の作品で見たことあるような設定だな・・・という感覚になってしまう。
とはいえ、意味不明なまま物語に引き込んでいった前半部分の"意味不明"を後半で綺麗に謎解きしてくれるストーリー展開はさすがハリウッド。観客を飽きさせない方法を知り尽くしていますね。逆に言えば、ハリウッドのこの手の手法を知っている人からしたらつまらないかもしれない。
何はともあれ、10年前にこの作品を見たかったというのが、自分の本音です。